値段や重量もやっぱり気になる! レインウェアの選び方を深堀り解説
安い商品は登山で使える? 重量は軽いほうがいい? 素材はやっぱりゴアテックス? 3層構造ってなに? など、今回は少々細かい内容まで踏み込んでレインウェアの選び方を考えます。
文=吉澤英晃、写真=福田 諭

目次
- やっぱり気になる3つのポイント
- 1.値段――金額よりも耐水圧を気にしよう
- 2.重量――軽いモデルを選ぶときは、生地の厚さを気にしよう
- 3.素材――種類よりもレイヤー構造に着目しよう
- 山に登るときはレインウェアを持つ!これがいちばん重要です
やっぱり気になる3つのポイント
前回の記事では、基本さえ押さえればデザインやシルエット、ポケットの数などでレインウェアを選んでOKと紹介しました。とはいえ、市場にはたくさんの商品があり、それ以外のポイントも比較検討したいですよね。そこで今回は「値段」「重量」「素材」に注目。少し突っ込んだ見極め方を紹介します。
1.値段――金額よりも耐水圧を気にしよう
近頃は、アウトドアブランド以外のレインウェアでも、防水透湿性を持つ高機能ウェアを選べるようになりました。しかも、新規参入ブランドの高機能レインウェアは驚くほど値段が安い。これは嬉しい反面、ちょっと不安になることも。
結論から言うと、 値段が安い=登山では使えない、とは一概に言えません。重要なのは値段よりも充分な性能が備わっているかどうか。レインウェアの性能として表記されることの多い 「耐水圧」の目安を紹介しましょう。
耐水圧の目安
- 300mm……小雨に耐えられる
- 2,000mm……中雨に耐えられる
- 10,000mm…大雨に耐えられる
- 20,000mm…嵐に耐えられる
嵐も想定されるアウトドアフィールドでは、 20,000mm以上の耐水圧があることが望ましいといわれています。特に、泊りがけで人里離れた山深いエリアに向かう場合は、もしもに備えて数値の高い商品を選んだ方が安心です。
ちなみに、 透湿性には「g/㎡・24h」という単位が用いられ、登山用のレインウェアでは10,000g/㎡・24hもあれば充分といわれています。
2.重量――軽いモデルを選ぶときは、生地の厚さを気にしよう
レインウェアはバックパックの中に入っている時間が長くなるので、どうしても重量が気になります。市場にある主要なレインウェア(ジャケットは35点、パンツは30点 ※2021年調査)から重量の平均値を算出してみたところ、ジャケット=282g、パンツ=221gという結果になりました。この数値が、重さで商品を選ぶときのひとつの目安になりそうです。
重量の目安(ジャケット/パンツ)
- 200g/100g以下・・・超軽量
- 250g/150g以下・・・軽量
- 300g/250g前後・・・平均的
ただし、軽いモデルを選ぶ場合は、生地が薄い可能性があることも考慮しましょう。薄い生地は寒さを感じやすく、簡単に破けてしまう場合もあるからです。
とはいえ、商品の生地の厚さを正確に知る術はありません。そのため、とくに超軽量モデルを選ぶときは、専門店のスタッフに扱い方や注意点について確認することをおすすめします。逆に平均的な重さのモデルを検討すれば、外気温の感じ方や耐久性を極端に心配する必要はないといえるでしょう。
余談ですが、生地の厚さについて話すとき、「デニール」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは糸の太さを表す単位で、数字が大きくなるほど糸が太くなり、結果として生地の厚さに影響します。重量と同じく、公表されている範囲で表地の糸の太さの平均値を調べてみたところ、19.4デニールという結果になりました。表地に使われている糸の太さは20デニールが平均的といえそうです。
3.素材――種類よりもレイヤー構造に着目しよう
レインウェアに欠かせない “防水性”と“透湿性”。水分(雨)は通さないが湿気(蒸れ)は逃がすという、一見矛盾するような機能を併せ持つのが、防水透湿素材です。
有名な「ゴアテックス(GORE-TEX)」のほか、「イーベント(eVent)」や「パーテックス・シールド(PARTEX SHIELD)」など、各社からさまざまな素材が出ています。それぞれ細かい性能は異なるものの、水の侵入を防ぎ湿気は逃がすという、核となる機能に大きな差はありません。
レインウェアを選ぶときは、防水透湿素材の種類を気にするより、着心地を左右する素材の構造に着目したほうがいいでしょう。防水透湿素材は、 メンブレンと呼ばれる防水透湿性を持った素材を中心に、表地や裏地を貼り合わせることで、ひとつの生地として完成します。
もっとも一般的なものが「表地=メンブレン=裏地」からなる3層構造(3レイヤー)です。3層構造は汗をかいてもベタつきにくいというメリットがあり、汗や皮脂でメンブレンが汚れにくいので、透湿性が低下しづらいともいわれています。
3層構造から裏地を省くと「表地=メンブレン」だけの2層構造(2レイヤー)になります。肌触りは3層構造に劣るものの、軽量コンパクトなウェアが作れるというメリットがあります。肌触りを改善するために、メッシュの裏地が付くウェアもあります。
2層構造に汗によるベタつきを軽減するプリントを加えたものが「表地=メンブレン=プリント」からなる2.5層構造(2.5レイヤー)です。軽量コンパクト性が特長でしたが、最近は3層や2層構造が主流になり、見かける機会は減ってきたように感じます。
軽さを求めなければ、肌触りがよく、透湿性も低下しづらい3層構造がおすすめといえるでしょう。
ちなみに、近年は3層構造から表地をなくした「メンブレン=裏地」という、新しい2層構造も登場しています。
メンブレン自体が高い疎水性(水を寄せ付けにくい性質)を持っているため、持続的な撥水性が生まれ、優れた透湿性を備える点が特長です。ただ、メンブレンが傷付くと防水透湿性が損なわれるという弱点があるため、扱いには注意が必要と言われています。
山に登るときはレインウェアを持つ!これがいちばん重要です
レインウェアは高価な買い物なので、細かいポイントまで気になるところ。そんなとき、以下の4つが参考になります。
- 耐水圧は20,000mm以上が望ましい
- 透湿性は10,000g/㎡/24hもあれば充分
- 重さは、ジャケット=300g前後、パンツ=250g前後が平均的
- 軽さを求めなければ素材は3層構造がおすすめ
なにはともあれ、レインウェアは登山の必須装備。防水性と透湿性がある高機能モデルを準備して、安全に山登りを楽しみましょう!
※本記事は2021年10月12日に公開した記事を更新したものです
プロフィール
吉澤 英晃
1986年生まれ。群馬県出身。大学の探検サークルで登山と出合い、卒業後、山道具を扱う企業の営業マンとして約7年勤めた後、ライターとして独立。道具にまつわる記事を中心に登山系メディアで活動する。
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