三ツ峠だけにとどまらない大きなビジョンを掲げて希少植物の保護などに取り組む。三ツ峠ネットワーク

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豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行なわれている。今回は、山梨県の河口湖北東の三ツ峠で希少植物の保護などに取り組んでいる「三ツ峠ネットワーク」を紹介する。

取材・文=一ノ瀬伸、写真=三ツ峠ネットワーク

■日本山岳遺産候補地を募集中!

三ツ峠ネットワーク

三ツ峠ネットワーク(2017年度認定)

Area:三ツ峠
Main activity:希少植物の保護
Group profile:
開運山と御巣鷹山、木無山からなる三ツ峠で主にアツモリソウなどの希少植物の保護活動を行なう。三ツ峠山荘主人を中心に2010年に結成。今年の活動や日程については三ツ峠山荘に確認を。TEL 0555-76-7473
http://oohito.com/mitsutouge/

三ツ峠から発信する、山の自然保護の大切さ

「私たちの活動によって、山の自然保護や環境問題への理解が広まっていったらうれしいですね」

三ツ峠ネットワーク事務局の山本義人さんの言葉だ。この団体は山梨県の三ツ峠で、環境省レッドリストで絶滅危惧種に指定される希少植物・アツモリソウの保護活動などをしている。

山本さんが三ツ峠だけにとどまらない大きなビジョンを語るのは、その可能性を感じているからだ。三ツ峠は、山頂からの富士山の大展望が登山者を惹きつけ、山梨百名山の中でも特に人気のある山。都心からのアクセスのよさに加え、登山レベルはやさしく、多くの老若男女が訪れる。地元の子どもたちは学校行事として登る、地域に根ざした存在でもある。三ツ峠での活動は登山者を介して各地へ広まっていく期待がもてる。

伊吹山を守る自然再生協議会

三ツ峠山頂付近から望む富士山。多くの写真愛好家が訪れる

事実、団体はもともと三ツ峠に通って写真撮影や花を楽しんでいた人々で構成され、県外在住者も多い。長年、植物保護に取り組んでいた三ツ峠山荘主人で団体代表の中村光吉さんの思いに共感した登山者たちが集った格好だ。メンバーの多くは、おのおのの地元でも自然保護に関わっている。

団体が結成されたきっかけは、2009年に三ツ峠で開かれた研修会。シカの食害や盗掘によって減少していたアツモリソウの保護活動に関心を寄せる登山者らが参加し、課題を共有し保全作業を体験。翌2010年に35人で組織化した。

設立後、アツモリソウをシカから守る防護柵を設置したり自生地に繁茂する雑草を伐採したりと、活動を続ける。結果、2000年に約300株だったアツモリソウが、2017年には約500株まで増えた。

また、カモメランやウチョウランといった他の希少植物を盗掘や踏み荒らしから守るべく、ロープや注意看板を設置。保護活動の継承をめざし、地元の中高生らを募って行なう体験学習にも注力する。「全国的に自然保護団体の次世代へのバトンタッチが大きな課題となっています。各地で活動している人同士がつながりを持ちながら、解決策を見出したいです」

自生しているラン科のアツモリソウ

アツモリソウをニホンジカの食害から守る防護柵を設置するメンバーたち

★日本山岳遺産認定地 詳細: 三ツ峠[山梨県]三ツ峠ネットワーク(2017年)

日本山岳遺産候補地を募集中! みなさまの活動を支援します

日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。

支援団体の条件

  • 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体
  • 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行っている団体
  • 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体

助成対象となる活動費の主な用途

  • 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費
  • 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費
  • 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費

助成金総額 250万円(予定)

詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html

山と溪谷2022年5月号より転載)

プロフィール

日本山岳遺産基金

日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/

日本山岳遺産の横顔

日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!

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