「うす雲（巻層雲）」〜空を白く薄く覆う雲｜雲から知る山の天気（2）／登山力レベルアップ講座

『登山力レベルアップ講座』は、豪華講師陣から知識や技術を教わって、登山に役立つさまざまな力を「レベルアップ」できる4講座です。山の天気の変化を知る手掛かりとなるのが「雲」。『雲から知る山の天気』では、その種類と、天気との関係を山岳気象の専門家が解説します。第2回は、空をぼんやりと覆う「うす雲」です。

文・写真＝窪田純、猪熊隆之
イラスト＝平のゆきこ

ヤマテン本社近くから見た、
南アルプス方面に広がるうす雲

うす雲は、その名のとおり、空を白く薄く覆う雲。第1回で解説したすじ雲が、このうす雲に変化すると、やがてどんよりとした曇り空になる可能性があります。雲の変化と天気図の変化を、セットで覚えておきましょう。

うす雲の特徴

空を覆うベール状の雲

うす雲は白いベール状で霞がかったように見え、空の広い範囲を覆うことが多く、薄く滑らかな姿が特徴だ。別名を「巻層雲」といい、上層雲と呼ばれる地上から約5～13㎞の高さに現われる雲の一つで、すべて氷の粒からできている。雲自体は薄いため、うす雲が広がっても地面にはっきりとした影ができ、太陽や月を覆うと暈がかかることがある。これを日暈（英名：ハロ）、月暈と呼ぶ。太陽や月の周りに虹色の輪ができる現象で、空に手をかざし、太陽から手のひら1つ分ぐらいの位置にできるものが多い。

うす雲が発生しやすい場所

温暖前線の前面や低気圧の北側

うす雲は温暖前線接近時や低気圧の北側によく現われる。右や下の図のとおり、温暖前線の前面や低気圧の北側に発生する雲の特徴で、うす雲→おぼろ雲→雨雲・雪雲へと変化するなかで見られるためだ。低気圧の北側となるのは、春先に本州南岸を通過することが多い「南岸低気圧」が代表的なパターンだ。

雲の変化から今後の天気を見てみよう

天気が崩れていくときのうす雲の変化

夏を除き、日本の上空には偏西風という西風が吹いている。低気圧や高気圧はこの風に流されて西から東に進むため、天気は西から東へと変化していく。つまり、西の空を見ることが天気変化を知る上で基本だ。西の空からうす雲が広がってきて全天を覆っていくようなときは、半日から1日後に天気が崩れることがある。また、天気図で見るときも同じことがいえる。例えば、中国大陸の東岸や東シナ海などに低気圧や前線が現われているときも半日から1日後に雨や雪が降り出すことが多い。

西の空に筋のように伸びたすじ雲

すじ雲は、やがてうす雲に

おぼろ雲が全天を覆い、やがて雨雲となる

観測地点から見て高気圧の中心は東へ離れ、代わって東シナ海の低気圧や前線が観測地点に接近。夜遅くには雨が降り出した。このように天気図を併せて見ることで、雲の変化を天気に結びつけることができる。

天気に無関係なときの、うす雲の変化

うす雲が南の空に広がるだけで北には広がってこないとき、または空の一部にしか出ていないときは天気の崩れは小さい。写真は南の空に広がるうす雲で、写真下部の隙間がない層状の雲がそれだ。

豆雲知識

「日暈（ハロ）」は天気が下り坂のサイン？

おぼろ雲に変化したら雨が近い

天気のことわざの一つに「太陽が暈をかぶると雨」というものがある。太陽が暈をかぶる、というのは太陽の周りに暈がかかっている状態のことで、つまり日暈（ハロ）が出ることを指している。暈はうす雲を作る氷の粒により、太陽の光が屈折することで発生し、うす雲が出ているということは、低気圧や前線の接近前に発生している雲の可能性がある。今後、うす雲がおぼろ雲へと変化していくと雨が近いため、天気が下り坂に向かっている一つのサインといえる。