「インナーユニット」〜ブレない体の軸を生む筋肉群｜やさしい筋トレ for登山（4）／登山力レベルアップ講座

『登山力レベルアップ講座』は、豪華講師陣から知識や技術を教わって、登山に役立つさまざまな力を「レベルアップ」できる4講座です。『やさしい筋トレfor登山』では、登山で重要な役目を果たしている筋肉の仕組みを解説し、おうちで簡単にできる筋トレやストレッチを紹介します。今回はブレない体の軸を生む筋肉群・インナーユニットです。

文＝芳須 勲、写真＝中村英史
イラスト＝平のゆきこ

「登山には体幹が大事」。そんな言葉をよく耳にします。今回は、その体幹を支えている筋肉について学びましょう。

インナーユニットの構造とはたらき

体幹を内側から支えるコルセットのような存在

インナーユニットとは腹腔を包み込む4つの筋肉。①横隔膜は、腹腔の上部をフタのように覆うドーム形をした薄い筋肉。腹式呼吸で息を吸うときに使われる。②腹横筋は腹腔側部～前部の深層にある筋肉で、腹腔圧を高めたり、意識的に息を吐いたりするときに働く。③多裂筋は腹腔の背中側、脊柱起立筋の深層に位置する筋肉で脊柱をつなぎ合わせて安定させる働きを持つ。④骨盤底筋は腹腔の底部にあり、骨盤内の臓器をハンモックのように支えている。

インナーユニットの山でのはたらき

重いザックを持ってもフラフラしない体をつくる

インナーユニットは胸郭、脊柱、骨盤をつなぎ合わせ、体幹のスタビリティ（安定性）に貢献している。これが一般に「体の軸」や「体の芯」といわれる。重いザックを背負った状態で、起伏の激しい登山道を歩いたときに体の軸がブレてしまうと、安定した重心移動ができなくなるので転倒・滑落などを起こしやすい。また、フォームが乱れてしまうため、疲労しやすく、膝などの関節を痛める原因にもなる。

深い呼吸をしてもブレない体幹に

日常的に行なわれている無意識の呼吸は、胸郭にある外肋間筋や横隔膜の収縮によって息を吸い、弛緩することで受動的に吐いているため、息を吐くときに筋肉は使われていない。しかし、登山など、大量に酸素が必要な運動では、肺の中の空気を入れ替えるために意識的に息を吐きだす必要があり、腹横筋が活躍する。

インナーユニットを鍛えるプランク

体幹周辺の筋肉を刺激するエクササイズ。姿勢をしっかりと維持することがポイント。慣れてきたら、徐々に時間を伸ばし、5分間キープできるようにしよう。

インナーユニットを鍛えるドローイン

腹横筋を活性化するエクササイズ。おへその下の外側を触り、腹横筋が収縮しているか確認しよう。お腹をへこませたまま呼吸するのが難しい人は、息を吸うときにお腹を膨らませる「腹式呼吸」から行なおう。

（山と溪谷2022年7月号より転載）