「下腿三頭筋・前脛骨筋」〜山道を歩く動作に欠かせない存在|やさしい筋トレ for登山(5)/登山力レベルアップ講座
『登山力レベルアップ講座』は、豪華講師陣から知識や技術を教わって、登山に役立つさまざまな力を「レベルアップ」できる4講座です。『やさしい筋トレfor登山』では、登山で重要な役目を果たしている筋肉の仕組みを解説し、おうちで簡単にできる筋トレやストレッチを紹介します。今回は、すねとふくらはぎの筋肉群に注目。
文=芳須 勲、写真=中村英史
イラスト=平のゆきこ
今回は、すねとふくらはぎの筋肉をピックアップ。山道を歩く動作に欠かせない存在です。
下腿三頭筋・前脛骨筋の構造とはたらき
足首(足関節)を動かす下腿の主動筋
ふくらはぎを形成する下腿三頭筋のうち、表層の腓腹筋は膝関節と足関節をまたぐ二関節筋。膝を伸ばした状態でのつま先立ちや、飛び跳ねる動作に貢献する。持久力が低く、酷使するとこむら返りを起こす原因となる。下層のヒラメ筋は足関節を使って重心を安定させる働きを持つ持久力の高い筋肉だ。すねを形成する前脛骨筋は足関節を背屈させる働きをもち、つま先を上げる動作に貢献している。
下腿三頭筋・前脛骨筋の山でのはたらき
登りでの重心移動やバランスをとる役割
登山の基本は、つま先とかかとを同時に接地させるフラットフッティングであるため、つま先やかかとを高く上げることはない。そのため、理想的なフォームであれば下腿の筋肉は主に重心移動やバランス維持に使われる。しかし、登山靴は運動靴に比べて硬く重いので、気づかぬうちに前脛骨筋が疲労してつま先が下がってしまい、木の根などにつまずく原因となる。
登山中のストレッチでつまずきを予防
かかとを上げる下腿三頭筋とつま先を上げる前脛骨筋は、拮抗する働きをもつが、下腿三頭筋のほうが約7倍の体積をもち、両者の筋力の差は大きい。このため、ふくらはぎがこわばってしまうと前脛骨筋に強い抵抗がかかり、つま先が上がらなくなる。ストレッチで、ふくらはぎの柔軟性を保とう。
下腿三頭筋・前脛骨筋を鍛える、
カーフレイズ&トゥアップ
今回は椅子に座った状態で行なうトレーニングを紹介する。椅子に浅く腰をかけ背筋を伸ばす。膝を90°に曲げ、かかとをつけた状態から始めよう。
3秒かけてゆっくりかかとを持ち上げたらいったん停止し、3秒かけてゆっくりかかとを下ろす。膝を曲げて行なうことで、持久力の強いヒラメ筋をターゲットに鍛えることができる。
次につま先を3秒かけてゆっくり持ち上げたらいったん停止し、3秒かけてゆっくりと下ろす。かかと上げとつま先上げを交互に20回ずつ、3セット行なう。
下腿三頭筋・前脛骨筋をほぐす、
ふくらはぎ&すねのストレッチ
①腓腹筋ストレッチ
足を前後に開き、後ろの膝を伸ばす。かかとをゆっくり床につけ20秒キープする。膝を伸ばすことで腓腹筋が強く伸ばされる。足がつったときなどは②の状態から膝を伸ばしていくとよいだろう。
②ヒラメ筋ストレッチ
膝を伸ばした状態では二関節筋である腓腹筋が先に緊張してしまう。ヒラメ筋を効率よくストレッチするためには、膝を曲げた状態で深く足首を倒すとよい。
③前脛骨筋ストレッチ
前側の足に重心を移動させ、後ろ側の足の甲を下にして、ゆっくりと地面に押し付けていくようなイメージですねを伸ばす。20秒キープする。マッサージでもみほぐすのも効果的。
パワーアップコラム
ふくらはぎは「第二の心臓」
心臓によって末梢に運ばれた血液を再び心臓に戻すシステムが、筋肉の収縮&弛緩によって血液を心臓方向に押し戻す「筋ポンプ」という機能だ。血液は重力によって下肢にたまりやすいので、ふくらはぎの筋ポンプ機能は特に重要である。ふくらはぎを鍛えることによって、全身に血液を循環させ、栄養や酸素を送ることができるのだ。登山に必要な心肺機能を向上させるためにも、ふくらはぎの強化は必須といえる。
(山と溪谷2022年8月号より転載)
- 第5回「下腿三頭筋・前脛骨筋」〜山道を歩く動作に欠かせない存在
- 第4回「インナーユニット」〜ブレない体の軸を生む筋肉群
- 第3回「大腿四頭筋」〜下りで本領発揮するブレーキ
- 第2回「足底内在筋」〜地面を感じ取るセンサー
- 第1回「大臀筋」〜登りのメインエンジン
プロフィール
芳須 勲さん(登山ガイド、健康運動指導士)
よしず・いさお/いきいき登山ガイド・ヤッホー!!さん。として活動。管理栄養士の資格も持つ。「登山で健康づくり」をモットーに運動・食事指導・山の安全管理を柱とした登山プログラムを提案している。
登山力レベルアップ講座
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