まだ間に合う! 紅葉と温泉の名低山5選
晩秋、冬の足音が迫る季節。
高山は次第に白く染まりつつありますが、都市近郊の低山ではまだ紅葉が見られる山がある。
今回は晩秋でも紅葉が見られる山と下山後の温泉が楽しめる東京近郊の山を紹介しよう。
まだ間に合う! 紅葉が見られる名低山への誘い
推薦人:木元康晴
1966年、秋田県出身。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージⅢ)。『山と溪谷』『岳人』などで数多くの記事を執筆。ヤマケイ登山学校『山のリスクマネジメント』では監修を担当。著書に『IT時代の山岳遭難』、『山のABC 山の安全管理術』、『関東百名山』(共著)など。編書に『山岳ドクターがアドバイス 登山のダメージ&体のトラブル解決法』がある。
紅葉が見られるのは、秋の終わりのわずかな期間。樹々の葉が赤や黄色に染まっていく様子には、美しさと同時にはかなさも感じる。その様子を目に焼き付けたいと思い、晩秋にはできるだけ山を登ろうと考えている。日当たりや夜の冷え込みで、年によって色合いが変わることも、その年の紅葉を見たいという気持ちを後押しする。
そしてこの時期は、行動中は汗をかいても、日が陰ると一気に寒くなる。冷えた体を暖めるのに、最適なのは温泉だ。下山後に、温泉の温かさをしみじみと味わえるのも、紅葉の季節ならではだ。
ここで紹介する5山は、11月下旬でも(一部12月中旬まで)紅葉を楽しめる。午後になると駆け足のように日没が迫ってくる時期なので、短めの行動時間でコース設定した。
鎖場を登って紅葉と岩壁の絶景を見渡す
妙義山(みょうぎさん)・石門めぐり
群馬県/925m(最高点)
中之嶽神社駐車場~石門入口~第四石門~見晴台〜轟岩~中之嶽神社駐車場/日帰り 1時間30分
落石の影響で通行止めが続いていた妙義山の石門めぐりコースは、整備が完了し、10月15日から歩けるようになった。
石門入口から登り始めると、中央にモミジの木が立つ第一石門。鎖を伝って第二石門を越え、左の第三石門に立ち寄った先が、最も大きな第四石門。周囲には色づいた木が多くて美しい。また、第四石門の横から見下ろす景色は「日暮らしの景」と呼ばれる絶景スポット。中之嶽神社へ向かう途中の見晴台からも、岩塔群を見下ろせる。
技術と体力に余裕がある人は、中之嶽神社を左から回り込んで、轟岩にも登ってみよう。急峻なハシゴと鎖をたどった先には360度の絶景が広がる。
温泉は、紅葉の時期にこそ訪ねたい「もみじの湯へ」。表妙義の岩山を眺める露天風呂が爽快だ。
奥に見えるのは大砲岩
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おすすめ紅葉スポット
第一石門や第四石門付近にはモミジがあって、岩肌との対比がみごと。また日暮らしの景や見晴台から見下ろす岩峰群の合間にも、紅葉で色づいた木々が点々とあって美しい。さらに轟岩から見上げる、紅葉した森の上にそびえる金洞山の岩壁は圧倒的な迫力だ。
温泉地情報
中之嶽神社駐車場から車で約15分の「妙義温泉 もみじの湯」(電話:0274-60-7600、520円、10~19時、月曜休)で入浴できる。食事処「御山亭」があり、食事も可。
紅葉を訪ねて人気の山の静かなコースを歩く
御岳山・奥の院(みたけさん おくのいん)
東京都/1084m(鍋割山)
御嶽駅(西東京バス)ケーブル下~滝本(御岳登山鉄道)御岳山駅~御岳山~長尾平~奥の院~鍋割山分岐~高岩山~大岳鍾乳洞入口バス停/日帰り 4時間5分
ケーブルカーを使って、手軽に登ることができる御岳山。山頂となる武蔵御嶽神社へ向かう道の途中にも、モミジなどが多くて紅葉を楽しみながら歩ける。特におすすめしたいのは、御岳山駅のお土産物屋の右手から登る、産安社を経由するコース。あずまやの先に色づきが見事な一角があり、思わず声が上がる。
また、武蔵御嶽神社の奥宮遙拝所から望む奥の院は、中腹が紅葉で彩られて美しい。
その奥の院の登り口は、長尾平の先の天狗の腰掛け杉から。鎖場を過ぎ、赤い社を左から回り込めば山頂に着く。
そこからは、鍋割山から芥場峠に向かい、サルギ尾根へ。山慣れた人向けの道だが、静かな山歩きを楽しめる。
下山後のバスが立ち寄る秋川渓谷 瀬音の湯は、登山の疲れを癒やすのに最適だ。
MAP
おすすめ紅葉スポット
産安社のあずまやの先をはじめ、武蔵御嶽神社の境内や長尾平など、紅葉が美しい場所は点々とある。下山時にたどるサルギ尾根は、植林された人工林が長く続くが、林床には黄色く色づいたコアジサイなども多い。下山場所となる養沢神社の境内にも、モミジがあって色鮮やか。
温泉地情報
大岳鍾乳洞入口から武蔵五日市駅へ向かうバスが停車する、「秋川渓谷 瀬音の湯」(電話:042-595-2614、900円、10~22時、年4回<3月、6月、9月、12月>第2水曜日休)で入浴できる。紅葉を見ながら食事ができる、レストラン「和食だいにんぐ川霧」もある。
荘厳な滝からめざす紅葉に囲まれた明るい頂上
月居山(つきおれさん)
茨城県/404m
町営第一駐車場~袋田の滝 観瀑台~生瀬滝展望台~後ろ山(月居山)~町営第一駐車場/日帰り 2時間30分
袋田の滝は高さ120m、幅73mと巨大で、日本三名瀑に数えられる。上流にある生瀬滝、南側にそびえる月居山とともに、大子町の紅葉スポット8選にも選ばれている。
袋田の滝には観瀑台が設置されていて、入場料300円を支払えばエレベーターに乗って滝を正面から見渡せる。第1観瀑第の横から外に出て、吊り橋を渡ると月居山の登山口だ。急な階段を登った先の左手には、生瀬滝を望む展望台がある。標識のない前山を過ぎて月居観音堂前を下り、光明寺跡から登り返せば月居山の後ろ山に着く。江戸時代の初めまで、月居城があったという頂上部は平坦で、秋は周囲を取り囲むモミジが色づいて美しい。
下山後は、マイカーで移動して「月居温泉 滝見の湯 白木荘」へ。地元の人たちが運営する素朴な温泉だ。
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おすすめ紅葉スポット
袋田の滝と、生瀬滝の紅葉のピークは11月中旬だが、下旬頃までは滝を取り囲むモミジやカエデの赤い色づきが残る。いっぽうその頃に紅葉が見頃を迎えるのは、月居山の後ろ山。山頂部一帯がモミジに覆わていて、日が差し込む午後には真っ赤な彩りに囲まれる。古い鐘が残る光明寺跡も、紅葉が美しい。
温泉地情報
町営駐車場から車で約6分の「月居温泉 滝見の湯 白木荘」(電話:0295-76-0373、500円、8~18時30分(露天風呂は9時~)、火曜休。食事も可能で、大子町特産のそばがおいしい。
真っ赤に色づいた紅葉の谷を下って
海を眺める温泉へ
鎌倉アルプス・大平山(おおひらやま)
神奈川県/159m(鎌倉アルプス最高点)
JR横須賀線北鎌倉駅~建長寺入口~勝上嶽~大平山~獅子舞分岐~鎌倉宮~JR横須賀線鎌倉駅/日帰り 2時間25分
勝上嶽から見た富士山
関東圏で海に近い標高の低い山は、12月に入るとに紅葉の見頃を迎える。そのような山で人気が高いのが、鎌倉アルプスだ。
JR横須賀線北鎌倉駅から建長寺へ向かい、拝観料500円を支払って境内へ。奥に進んで半僧坊に向かう登りに差し掛かると、道の左右には紅葉した木が現われて目を楽しませてくれる。その先の、展望スポットである勝上嶽から、紅葉越しに望む富士山も見事だ。
このコースのハイライトは、大平山の先で右へと下る、獅子舞の谷。周囲はモミジの真っ赤な紅葉に包まれて、息をのむほどだ。
車道に出てから鎌倉駅に向かう途中で立ち寄る鶴岡八幡宮でも、色とりどりの紅葉が楽しめる。
鎌倉駅からは、江ノ島電鉄に乗って稲村ヶ崎へ移動し稲村ヶ崎温泉へ。目の前に広がる、海を見ながらの入浴は格別だ。
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おすすめ紅葉スポット
下山時にたどるモミジが多い獅子舞の谷筋は、鎌倉の中でも最も紅葉が見事なスポットと言われるほど真っ赤に色づく。鶴岡八幡宮の境内も、モミジやイチョウの紅葉が楽しめる。鎌倉宮から徒歩約8分の覚園寺も、モミジが多い人気の紅葉スポット。時間に余裕があれば、立ち寄ってみよう。
温泉地情報
鎌倉駅から江ノ島電鉄線10分で、稲村ヶ崎駅に着く。そこから徒歩約3分の「稲村ヶ崎温泉」(電話:0467-22-7199、1,500円、9~21時、無休)で入浴できる。隣にはレストラン「Main」(電話:0467-24-0235、11~21時、木曜休)が併設されていて、海を見ながら食事ができる。
紅葉と富士山の展望スポットから
古風な佇まいの温泉へ
新倉山(あらくらやま)
山梨県/1184m(御殿)
富士急行線下吉田駅~新倉山浅間公園「展望デッキ」~新倉山~御殿~新倉山~富士見孝徳公園~富士急行線葭池(よしいけ)温泉前駅/日帰り 2時間50分
忠霊塔と富士山
新倉山浅間公園は、山梨県内でも人気が高い富士山展望スポットだ。特に有名なのは、展望デッキからの、五重の忠霊塔と富士山、そして紅葉したモミジを同時に見るアングル。その手前の新倉富士浅間神社の境内前や、咲くや姫階段でも富士山と紅葉を同時に見渡せる。
公園上端の急登の先の新倉山頂上は展望絶無だが、一段上の御殿からは富士山だけでなく、道志山塊の山並みも見渡せる。また二本杉を経て葭池温泉前駅に下るコースでも、富士見孝徳公園など紅葉が楽しめるポイントが点在する。
葭池温泉前駅の手前には、江戸時代創業の葭之池温泉がある。脱衣所と一体となった浴室や、掲示された広告の、レトロな雰囲気も楽しめる。
ゴンゴン音が鳴る「ゴンゴン石」
紅葉越しに富士山を見られる
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おすすめ紅葉スポット
新倉富士浅間神社の境内に始まり、398段の咲くや姫階段(特に上部)、忠霊塔の立つ新倉山浅間公園では、雪をかぶった富士山をバックにした赤いイロハモミジが艶やか。また新倉山からの下山路でも、オレンジ色のミネカエデが点々と続く。富士見孝徳公園や國福大神社の一帯にもカエデ類の赤く染まった木が多い。
温泉地情報
葭池温泉前駅の手前約2分のところにある「葭之池温泉」(電話:0555-22-3362、600円(夜間800円)、9~17時、18~21時30分(夜間営業は金・土・日・月のみ)、毎月1、14、31日休(土日祝の場合は営業))で入浴できる。食事も可能で、うどんがおいしい。
惜しくも選考から漏れた名山たち
幅広いエリアから山を選び、温泉のタイプにも変化をつけたいと考えた。そのため、定番の高尾山と極楽湯(東京都)や、大山と七沢温泉(神奈川県)は割愛した。どちらも紅葉は見事で、温泉も快適だ。また古賀志山と鹿沼温泉(栃木県)も検討したが、残念ながら紅葉が見事な赤沢ダムが現在工事中のため、今回の選考から外れた。
登山の達人が教える関東近郊名低山
都市圏から、日帰りで楽しめる低山は数多く存在する。登山ガイドや山岳ライターなど、山を歩き尽くしている登山の達人が、関東近郊の名低山を紹介する。