数多くの山岳写真から選び抜かれた写真の凄さを萩原編集長が解説!【カレンダー2023 美しき日本の山】

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2023年のカレンダーはもう購入しましたか? 山岳カレンダーの定番「美しき日本の山」より、数多くの山岳写真から選び抜かれた写真の凄さを萩原編集長が解説します!

※本記事は山と溪谷ch.の動画を編集したものです

 

ヤーマン 

山の日応援キャラクター。そんな肩書にも関わらず、山のことにはあまり詳しくない。

萩原浩司

通称「山の編集長」。大学卒業後、山と溪谷社に入社し、『山と溪谷』『ROCK&SNOW』の編集長を歴任。ネパール・ヒマラヤの未踏峰への初登頂記録も持つ。NHKの山番組に解説者としても出演中。

 

ヤーマン そろそろ来年のカレンダーを選ぶ季節になったなあ。今年はどんなカレンダーを部屋に飾ろうかな。

萩原 ヤッホー、ヤーマン。久しぶり。

ヤーマン あ、萩原さんだ。お久しぶりです。萩原さんはたしか「山のカレンダー」を編集しているんだよね。来年のカレンダーの見どころを教えてくれないかな?

萩原 ああ、いいよ。ちょうど、見本が出来上がったばかりなんだ。それじゃあ、来年の山のカレンダーについて説明させてもらおうかな。

ヤーマン ぜひぜひ、お願いします。

 

萩原 これが来年の山のカレンダーだよ。大小合わせて5タイトル、このほかにも富士山や風景写真としての山のカレンダーもたくさん出しているんだ。

ヤーマン ずいぶんたくさん作っているんだね。

萩原 そうだね。これらのカレンダーを作るために、プロ、アマチュア、合わせて100人の写真家から写真を公募して、おおよそ1500枚の写真のなかから厳選して使う写真を決めているんだ。

ヤーマン それ、ぜんぶ編集長の仕事なんですか?

萩原 そうだよ。だから毎年、ちょうどゴールデンウイークのなかの3日間くらいは、会社の会議室にひとりきりでこもって、目を真っ赤にしながら写真を選んでいるんだよ。

ヤーマン 写真を選ぶのって大変なんだな

萩原 なにしろ1500枚だからね。めちゃめちゃ時間がかかるし、パズルのように頭も使うのでそれなりに大変なんだ。

でもね、本当にきれいな山の写真をひとりで眺めることができて、それはけっこう幸せな時間だったりもするんだよね。

ヤーマン ふーん。そうなんだ。それじゃあ、苦労して決めた来年のカレンダー、どんな写真が選ばれたのか、教えてください。

萩原 オッケー。それじゃあ山岳カレンダーの代表作、「美しき日本の山」のために選んだ13枚の写真について解説しようかな。このカレンダーは今から24年前、1998年に私の企画で始まった大判カレンダーなんだ。写真はもちろん、印刷の美しさにも定評をいただいているロングセラー商品なんだよ。では、来年1年を飾る写真を紹介していきましょう。

ヤーマン わーい。たのしみ~

 

表紙写真:白馬岳

ヤーマン えーと、最初は表紙写真かな。

萩原 そうだよ。場所はどこか、わかるかな?

ヤーマン 白馬岳でしょ。以前、見たことあるから。

萩原 大正解。よくわかったね。これは白馬山荘から杓子岳と白馬槍ヶ岳を撮影した一枚なんだ。撮影者は中西俊明さん。ガイドブックも書いちゃうくらい、このエリアに詳しくて、どこからどんな時間にベストの写真が撮れるかをよく知っているんだよね。

ヤーマン 手前のお花畑と後ろの山との対比がキレイだね。

萩原 午後の光がキレイに当たる時間を狙っての撮影だったようだね。手前の斜面には花が一面に咲いていて、奥の山には雪渓が残り、まさに盛夏の白馬岳を代表する1枚、といえるでしょう。

ヤーマン 夏山、行ってみたい! と思わせる写真でした。きれいだな~。

萩原 いやほんと、雲の上の楽園というイメージがぴったりだよね。

 

1月:宝剣岳

萩原 さあ、それでは1月から12月まで、2023年を飾る12枚の写真を紹介していくね。

まずはこちら、1月の写真です。

ヤーマン うわー、めちゃくちゃキレイ!!

萩原 でしょ? 年の初めということで、明るく金色に輝く写真を選びました。場所は中央アルプスの「賽の河原」付近で、写っているのは宝剣岳。撮影者は地元・長野県上伊那郡在住の伊原明弘さんです。

ヤーマン いかにも新年を迎える! という感じだよね。

萩原 うん。でも実はこれ、朝日ではなくて午後の写真なんだ。

ヤーマン えー、初日の出の写真かと思っていた。

萩原 伊原さんは何日も悪天候が続いたあとのやっと晴れた日に、「これはもう行くしかない」と、朝いちばんのロープウェーで稜線まで上がり、そのまま日没まで粘ってようやくこの1枚を撮ることができたんだって。

ヤーマン ふーん、そうなんだ。

萩原 午後の、斜めに傾いた光だからこそ、山々の立体感が出ているんだよね。

ヤーマン ほんとだ。だから奥行きも深く感じられるんだね。

萩原 青い空と金色の山肌、そして、赤く染まり始めた遠くの山なみ。いい写真でしょ?。

ヤーマン 普通の人は見ることのできない光景を部屋に飾ることができる。山のカレンダーの楽しみだね。

 

2月:八甲田山

萩原 さあ、2月はこの写真です。

ヤーマン あ、樹氷の写真だね。樹氷といえば蔵王かな?

萩原 残念。同じ東北だけど、これは八甲田山の樹氷、見事なスノーモンスターです。

ヤーマン 青空で気持ちのいい写真だなあ。

萩原 そう。2月は晴れる日が本当に少なくて、撮影するのも大変なんだよね。これだけ立派な樹氷ができるっていうことは、それだけ天気が悪くて風雪の日が長く続く、ってことだからね。

ヤーマン 粘りに粘って撮った一枚なんだね。

萩原 撮影したのは大ベテランの写真家・花香勇さん。実はこの写真、リンホフという大型カメラで撮影されたカラーポジの写真なんだ。

ヤーマン そりゃすごい。フィルムを1枚ずつ交換するやつでしょ? 大変だったろうね。

萩原 山岳写真家のなかには今でも、フィルムで撮り続ける方が多くいらっしゃるんだよ。フィルムならではの色調の再現性にこだわりをもっているんだよね。

ヤーマン 風景写真ならではのこだわりなんだろうね。

萩原 ただ、印刷する側としても、じつはフィルム写真のほうが大変なんだ。つまり表現の幅を広くとることができるがゆえ、色調の再現の主軸をどこにもっていくかが難しいんだよね。

この写真で言えば雪の白さと輝きなんだけど、雪や雲の白さをうまく印刷することは簡単そうに見えて、じつは大変なんだよ。

ヤーマン そうか。写真がどんなに良くても、印刷でその良さが出なければ意味ないもんね。編集者はそこで仕事しているんだね。

萩原 うん。 まあ、そんなところかな。

 

3月:鹿島槍ヶ岳

萩原 次は3月の写真。鈴木克洋さんの「銀嶺 鹿島槍ヶ岳」です。

ヤーマン かっこいい写真だなぁ。僕、好きだな、この写真。

萩原 わかるよね、この写真の素晴らしさ。まず、鹿島槍ヶ岳が双耳峰、つまりネコの耳のように、北峰と南峰が仲良く並んでいるのがはっきりとわかるよね。そして北壁のヒマラヤ襞が立体的に迫ってくる感じ。 いや~、美しいよね~。

ヤーマン ほんとだ。ふたつのピークがきれいに並んでいる。

萩原 この写真の素晴らしいところはじつは光線状態にあるんだ。これと同じような写真は多くの写真家が撮っているんだけど、そのほとんどが南峰、つまり西側にある右の峰が黒く日陰に沈んでしまっているんだよね。朝の斜めの光線で北壁のヒマラヤ襞の立体感を浮き上がらせながら、なおかつ、南峰の表情もとらえるためには 太陽の位置が高くなる3月を待たなければならない。それを計算した上で通い詰めて、3月に撮影された写真なんだ。

ヤーマン いや、それはまったく気づきませんでした。深いねー。

萩原 八方尾根は冬でも撮影しやすいということで人気の写真スポットなんだけど、何度も通って光線状態を見極めた上で撮られた渾身の一枚。さすがですよね。

ヤーマン 第一印象でカッコいいと思ったのには、それなりの理由がちゃんとあったんだね。

萩原 まあ、理屈よりも最初の印象に訴えてくれるのが、本当にいい写真なんだと思うよ。

ヤーマン 次の写真が楽しみになってきたぞー。

 

4月:鳥海山

萩原 4月の写真は武内進さんの「菜の花と鳥海山」です。

ヤーマン すごい色。黄色と青で、ウクライナの国旗カラーだね。

萩原 お、きづいたかな? じつは選ぶときにちょっと意識したんだよね。ウクライナにものすごく強いクライマーがいてね、ちょうどメールで原稿のやりとりをしていたんだけど、彼らを応援する気持ちで選んだんだ。彼等は、本来であれば今年、世界中を驚かすようなヒマラヤでのビッグプランを練っていたんだよね。

ヤーマン そうか。それは本当に気の毒だよね。

萩原 ウクライナの国旗の黄色は麦畑を意味するそうだけど、この写真は菜の花が画面の半分を占めている。色もあざやかでしょ?

ヤーマン すごくキレイ!

萩原 そして雪をまとった鳥海山が美しいでしょ。やさしい姿をしているよね。

ヤーマン ほんと、なだらかな稜線がやさしさを感じさせるね。でも、4月で菜の花が咲く季節なのにどうしてこんなに雪が多いのかな?

萩原 海の近くにそびえる独立峰だから、冬の積雪量も多いんだ。そしてこの季節は山スキーが楽しめるんだよ。

ヤーマン うわー、行ってみたいな。

萩原 5月の大型連休ごろなら、日本海に向かってスキーで滑り降りる楽しさが味わえるんだ。

ヤーマン 白い雪山に青い空。そして麓はお花畑で春らんまん。いい季節なんだなー。

 

***

 

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