身体機能を効率よく強化。登山に特化したエクササイズ「Exhike」(エクスハイク)とは

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登山には一定の体力が必要。これは登山者なら誰でも知っている事実で、日々ウォーキングやジョギングなどの運動を習慣にしている人も多いだろう。しかし、荷物を背負い、急勾配を登り下りする登山では、普段使わない筋肉を酷使し、複雑な動きが要求される。そうした登山の動作を取り込んだエクササイズを紹介しよう。

 

登山は、中高年登山者が多いことからも年齢を超えて楽しめるレジャーだ。しかしその反面、重い荷物を背負って何時間も歩き続ける、ハードなスポーツでもある。日常生活では使わないような筋力を長時間酷使するため、膝が痛くなったり、下りで踏ん張りが効かずに転倒してしまったりと、体力不足に起因するトラブルは珍しくない。そうした体力不足を解消しようと、鹿屋体育大学教授の山本正嘉さんが中心となったチームが鹿児島放送(KKB)と連携して考案したのが、登山に必要な体力や身体能力をアップできるエクササイズ「Exhike」(エクスハイク)だ。


「登山では体力不足に起因するトラブルがとにかく多い。これまで週1回の低山登山を提唱してきましたが、それを補完するような、日常生活でできるエクササイズを考えました」と山本さんは狙いについて話す。山本さんが行なってきた調査によれば、標高差の小さい低山であっても、毎週山に登ることで生活習慣病や運動機能の低下を防げるほか、日本アルプスなどの大きな山に登った場合でも、膝痛やバテといった体のトラブルが起きにくくなるという。しかし、毎週登山を実践するのが難しい人も多いほか、低山登山やウォーキングなどでは身につかない体力もある。それを補ってくれるのがエクスハイクなのだという。

エクスハイクは、4分間の登山者向けのダンス風エクササイズで、「エクササイズ」と「ハイク(ハイキング)」とを組み合わせて名付けられた。音楽に合わせて歩く、くぐる、またぐ、体をねじる、片足に体重をかけるなど、登山に必要な能力を向上させる動きが組み合わされた振り付けをなぞることで、筋力、柔軟性、バランス能力、コーディネーション能力など、登山に必要な身体能力を身につけることができる。子どもから高齢者、エキスパートまでが実践できるよう、運動強度の異なる「イージー」「ベーシック」「ハード」の3バージョンがある。いずれも4分間だが、イージーは体力に自信のない人や高齢者向け、ベーシックは普通の人向け、ハードは若くて体力のある人や山岳部員、トレイルランナー向けとなっている。ExhikeはYouTubeに3バージョンの動画がアップされている。

 

■イージーはゆったりペースでできる。一つ先の動きを動画で確認しながらできるので、戸惑わずに追っていける

 

■イージーがたやすく感じたらベーシックを。これをしっかりこなせれば健脚コースも歩ける

 

■若い人や山岳部員、トレイルランナーなど体力に自信があるならハードを。かなり激しい運動になる

 


3種類のうち、まずはゆっくりペースでできる「イージー」から挑戦し、自分に合ったバージョンを見つけよう。週1回の低山登山、それが難しければウォーキングやランニングを実践しながら、週2〜3回のエクスハイクを続けてみるといい。

「運動習慣がなく、山に行くといつもバテてしまうような人なら、『イージー』から始めてみてください。きつい、やりにくいと感じる動きがあれば、そこは軽めにしても構いません。3週間も継続すれば苦手な動作もこなせるようになり、効果を実感できるでしょう。イージーができるようになったら『ベーシック』にステップアップしましょう。このバージョンで、テンポに合わせて各動作がしっかりできれば、健脚コースといわれる登山コースを歩ける体力が身についていると思います」(山本さん)とのこと。ゴールデンウィークの登山で体力不足を実感した人でも、今エクササイズを始めれば、夏山シーズンまでに体力アップができそうだ。

■Exhike

運動監修:山本正嘉(鹿屋体育大学スポーツ生命科学系教授)
運動制作:栫 ちか子(同スポーツ人文・応用社会科学系准教授)
制作協力:髙井 洋平(同スポーツ生命科学系 准教授)
音楽: Yoko*(作詞、歌)、Issy(作曲・編曲)
ウェブサイト:http://www.kkb.co.jp/exhike/

 

プロフィール

山本正嘉(やまもと・まさよし)

鹿屋体育大学教授。長年にわたり、登山の運動生理学とトレーニング学を研究し、自身もシブリン北稜初登攀、アコンカグア南壁アルパインスタイル登攀、チョ・オユー無酸素登頂などの登山を実践。その研究と啓発活動に対し、2001年に秩父宮記念山岳賞が贈られた。著書に『登山の運動生理学とトレーニング学』(東京新聞)、『アスリート・コーチ・トレーナーのためのトレーニング科学』(市村出版)などがある。

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