雪山登山をお勧めしないタイプの人っているの!? 山岳ガイドに教わる“雪山登山 入門のススメ”(4)

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向き不向きを気にすることはありますか? 普段は気にしていなくても、それが危険のともなうアクティビティ“雪山登山”であれば考えてみてもいいかもしれません。そこからみえる安全雪山登山とは?

雪山登山をお勧めしないタイプの人っているの!?

質問:
夏にはテン泊で縦走などを楽しんでいます。一緒に登山をしている友達を雪山に誘ったら「夏山はいいけど、雪山は別だよ。キミはボンヤリしていて危険だから、絶対に雪山はやめた方が良いよ!」と言われました。雪山に行くべきではない人・・・僕はそのタイプですか?

 

「雪山も行ってみたい!」という気持ちを行動に移そうとした矢先に身近な友人からのダメ出し、それはショックですよね。ボンヤリしていると言われたあなたは雪山に行くべきでない人でしょうか? その結論を出す前に“雪山ならではの危険を引き起こす要因”とは何か考えましょう。

 

 

まず厳しい寒さ。日中に陽が出ていれば気温が高い日もありますが、積雪があるので指先・足先からの冷え、冷気による寒さで体感温度は気温よりグッと低くなります。また内陸部でも標高の高い山では年に数回は気温がマイナス20度を下まわる日があり、長時間の山行となれば、それは寒いものです。

ふたつ目はルートファインディングの難しさ。日本の山、特に日本海側の標高の高い山は世界屈指の豪雪地帯です。ドカ雪が降れば一晩にして山の様相を一変させます。登山道が雪にすっぽり覆われる程の積雪量のときは地形や雪質を読み、安全なルートを見つけなくてはいけません。

危険を引き起こす主な要因はこのふたつ。他にもサポートの少なさ、雪崩の可能性、歩行の困難さなどあります。

雪山に向かない人がいるとしたら、例に挙げたような困難に対する想像力が欠けている人ではないでしょうか。「まさか、こんなに寒いとは思わなかった!」では遅いのです。美しい樹氷の森の写真を見て「行きたいなぁ」と思ったら、樹氷が形成される程の寒さ(-5℃以下の気温のとき風のあたるほうに大きく成長すると言われている)を想像し、その寒さへの対策について考える事が大切です。“不向き”と言われたあなたは大丈夫ですか?

また、僕が実際に会った人で雪山に連れていくには心配だと思ったタイプは、「凍結した斜面が続くけど大丈夫?」と聞いたときに「はい。アイゼンとピッケルを買ってきました。」と即答した人。冬山装備はもちろん必要ですが、それらは使いこなせなければ意味がありません。お金を出しても手に入らない、技術と経験こそが大切です。

とは言ってみたものの、絶対に必要なことは雪山を楽しむための“体力”“精神力”、それと“雪山へ行きたいという気持ち”。夏山を縦走して楽しむだけの体力があるのであれば、起こり得る状況を想定した準備をしっかりして、余裕をもった計画を立てることで、あなたも「雪山登山者」になれると思います。

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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