ルポ・尾瀬ヶ原。夏休みは親子で山に出かけよう

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夏休みは旅行のハイシーズン。子どもをどこかに連れていってあげたいけど、今さら宿泊予約なんて取れっこない・・・。そんなときこそ親子登山に出かけよう。日帰りが可能な山なら、思い立ったらすぐに行ける。道のりは非日常の発見に満ち、山上には涼しい風が吹いている。

文・写真=西村 健(山と溪谷オンライン)

下界の暑さから逃れて尾瀬へ

7月中旬の海の日の3連休は、プレ・夏休みとでもいうべきレジャーのハイシーズンだ。今年(2023年)は、関東地方に梅雨明け宣言こそ出なかったものの、真夏日が続いて、完全に真夏の様相だった。連休の予定などまったく考えていなかった我が家でも、どこかに出かけないともったいないような気分になっていた。小学校の夏休みは目前だが、大人も子どもも休める3連休を酷暑の自宅(埼玉)で過ごすのは惜しい。とはいえ、直前に宿泊施設を予約することなどできっこない。小学5年生(10歳)の息子と直前にあれこれ考えた上で、何度も訪れて勝手知ったる尾瀬に日帰りで行くことにした。

ルポ・尾瀬ヶ原。夏休みは親子で山に出かけよう
尾瀬ヶ原から至仏山を見上げる

連休の尾瀬は大にぎわいだった

名曲『夏の思い出』で知られる尾瀬は、福島県と群馬県、新潟県の県境に位置し、首都圏からならさほど遠くない。埼玉県の我が家から群馬県側の玄関口となる片品村へは、関越道経由で2時間余り。「遙かな尾瀬〜」はいうものの、移動時間的には通勤時間よりすこしだけ長い程度なのだ。しかし、標高は鳩待峠で1600mほどあり、そこそこ涼しいだろうと期待していた。

ところが、さほど遠くないという油断があったせいか、寝起きのわるい息子を着替えさせたり、車中で食べる握り飯を握ったりしているうちに自宅を出るのが遅くなってしまった。途中のサービスエリアでトイレ休憩をして軽食をとったりして、シャトルバスが発着する片品村の戸倉に到着したのは10時近くだった。これが自分だけだったら、早朝のバスに乗れるよう家を出るところなのだが・・・。子連れはなにかにつけ時間がかかる。

この日は連休最終日。戸倉の第1駐車場は満車で、第2駐車場も9割は埋まっている。当初は「鳩待峠から山ノ鼻まで下り、至仏山に登る」Aプランと、「尾瀬ヶ原散策」のBプランの2案を考えていたが、もはや子連れで至仏山に登る時間はない。迷わずBプランを選択し、シャトルバスに乗り込む。バス乗り場の係員の男性は夏の央に目を細めながら「コロナ後どころか、令和に入って以来いちばんの人出じゃないですかね」と言っていた。新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、自粛ムードが解けたうえ、この晴天続き。最近登山者や観光客の数が伸び悩んでいると聞いたが、この連休はどの山小屋も満室だったろう。

時刻が遅かったせいか、シャトルバスにはスムーズに乗ることができた。鳩待峠でバスを降りると、これから入山する人よりも、下山してきた人のほうが多いくらいだ。みな山小屋やテントで泊まったのだろう。すこし疲れて、それでも充実した笑顔を見せている。こんな時間にスタートするのがすこし恥ずかしくて、そそくさと山ノ鼻への登山道に入る。

ルポ・尾瀬ヶ原。夏休みは親子で山に出かけよう
尾瀬ヶ原への登山口・鳩待峠

インバウンドの波にもまれて山ノ鼻へ

鳩待峠から山ノ鼻への登山道は木道がきれいに整備され、登山靴よりスニーカーのほうが歩きやすいくらいだ。息子は久しぶりの登山靴が歩きにくいらしく、足元を気にしている。一方、こちらは尾瀬ヶ原の日帰りだからとトレランシューズを履いており、息子にもいつものスニーカーを履かせてやればよかったとこっそり後悔する。

ゆっくり歩いているうちに、団体ツアーの間に挟まれてしまったようだ。数十人のグループが3つほどの班に分かれ、おそろしくゆっくりしたペースで進んでいく。対向の登山者がいないことを確認しながら、10人ほどの先行者を追い抜き、ようやく人混みから離脱することができた。山ノ鼻の手前、川上川のほとりで大休止していると、南アジア出身らしい風貌の一団がどやどややってきた。デイパックを背負っているのは1人だけで、あとはせいぜいペットボトルを握りしめている程度で、ほぼ手ぶらだ。登山という感覚ではないのだろう、服装もジーンズにポロシャツ、足元は革靴だったりして、完全に観光のスタイルだった。そのうちの1人と目が合ったので、「どこから来たんですか?」と訪ねると、「バングラデシュ。でも、日本に住んでます」と、食パンに練乳をかけたおやつを頬張りながら答えてくれた。

この日は中国語、韓国語も聞こえてきたし、英語もフランス語も耳にした。インバウンドの波は再び尾瀬にもやってきたようだ。でも、手ぶらで尾瀬に来る観光客を見ると、天候が急変したらどうするんだろう、などと心配になってしまう。富士山にも外国人が押し寄せて大変なことになっているようだが、尾瀬も観光気分でやってくる準備不足の外国人が多い印象を受けた。

息子たちの世代は小学校から英語を学んでいるが、こうして大勢の外国人を目の当たりにすると、やはり現代の日本人に語学力や異文化理解が不可欠だなと思う。

ルポ・尾瀬ヶ原。夏休みは親子で山に出かけよう
どこまでも続く登山者の列
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