中学生5人で結成から15年、「命を守りたい」。機動パトロール隊

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

豊かな自然や文化を有する山岳エリアを認定する日本山岳遺産。それぞれの認定地では美しい山を次世代へつなげる活動が行なわれている。今回は、栃木県の岩山を中心に安全登山啓発や救助協力などを行なう「機動パトロール隊」を紹介する。

■日本山岳遺産候補地を募集中!

機動パトロール隊(2018年度認定)

Area:岩山
Main activity:安全登山啓発
Group profile:
2008年、当時中学1年の5人で結成。現在は中学1年から20代後半の69人が隊員。護身術教室の開催、防犯パトロール、山岳救助など「人命を守る」活動を栃木県内を中心に行なう。

「今度、山で訓練やってみるか?」。機動パトロール隊の結成から数年後、消防署員からかけられたこの言葉には信頼がにじんでいた。グループは10年以上にわたって栃木県鹿沼市の岩山などで行政と連携した山岳救助や遭難防止の巡回などを行なっている。だが、彼らの活動が地域に認められるまでには時間を要した。

「当初は子どもの遊びだと思われてまったく相手にされませんでした。みんなで集まって不良行為とかしてるんじゃないの?とまで言われたり。認められるために、まずは絶対10年は続けよう、と」

岩山でロープワーク訓練を行なう機動パトロール隊のメンバー
岩山でロープワーク訓練を行なう機動パトロール隊のメンバー

代表の茂木和樹さんは振り返る。「子どもの遊び」というのは、機動パトロール隊は中学生5人で発足した団体だからだ。きっかけは、2005年に県内で発生した女児殺害事件。事件後、各地で住民による防犯パトロールが行なわれるようになったが、茂木さんはもどかしさを感じ、そして行動に出た。

「身近で起こったひどい事件のニュースを見て、大人に守ってもらうだけじゃなくて、自分たちで自分自身を守れるようになる必要があると思ったんです」

2008年、当時中学1年の茂木さんは同級生を誘って隊を結成。学校や保護者は関係のない任意団体で、放課後に護身術を練習したり、街中をパトロールしながらゴミ拾いを行なったりするところからスタート。2011年の東日本大震災後には、避難所の運営ボランティアに参加し、2015年の関東豪雨では氾濫した小籔川の周辺住民の人命救助を行なった。

当時中学1年だった茂木和樹さん(中央)ら設立メンバー
当時中学1年だった茂木和樹さん(中央)ら設立メンバー

結成メンバーが高校生になるころには、山岳遭難や水難のレスキューに活動の幅を広げていった。日頃からロープワークや潜水などの技術を磨き、岩山だけでなく、茶臼岳や日光白根山、男体山などにも巡回の足を延ばした。山も街も、地域全体を見守っているというわけだ。

発足から15年、メンバーは中高生を含む69人まで増えた。28歳になった茂木さんは「人命を守りたいという思いはずっと変わらない」と力強く言う。

登山道の補修も行なう
登山道の補修も行なう

★日本山岳遺産認定地 詳細:鹿沼市 岩山 [ 栃木県 ]機動パトロール隊(2018年)

日本山岳遺産候補地を募集中! みなさまの活動を支援します

日本山岳遺産基金では、今年度の日本山岳遺産の候補地と支援団体を募集しています。認定された支援団体には、活動費を助成します。

支援団体の条件

  • 法人格を有する団体。または、同程度に社会的な信頼を得ている任意団体
  • 山岳環境保全などの活動を、特定の山岳エリアで3年以上行なっている団体
  • 支援対象事業の実施状況、予算、決算などの財政状況について、当基金の求めに応じ適正な報告ができる団体

助成対象となる活動費の主な用途

  • 資材・物品の購入など。またはこれらの修繕などの経費
  • 旅費・交通費、宿泊費、食費、通信連絡費、現地事務所の光熱費などの経費
  • 資料の翻訳、印刷、出版などに係る経費

助成金総額 250万円(予定)

詳細は日本山岳遺産基金のウェブサイトをご覧ください。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/isan-kikin/entry.html

山と溪谷2023年10月号より転載)

プロフィール

日本山岳遺産基金

日本の山々がもつ豊かな自然・文化を次世代に継承していくために2010年に設立。「山岳環境保全」「次世代育成」「安全啓発登山」を目的とし、日本山岳遺産の認定と活動団体への助成金拠出、上記目的に合致した各種イベントやキャンペーン、山と溪谷社の各種媒体を使った広報活動などを行なう。
https://sangakuisan.yamakei.co.jp/

日本山岳遺産の横顔

日本山岳遺産基金は、豊かな自然や文化を有する山岳エリアを「日本山岳遺産」として認定し、その地域で山岳環境保全や登山道整備などの活動を行なう団体に助成金の拠出および広報による支援を行なっています。ここでは、これまでに日本山岳遺産に認定された山岳エリアと活動団体について紹介していきます!

編集部おすすめ記事