なぜ、夜の山に魅かれるのか?ヤマケイ新書『ナイトハイクのススメ』著者インタビュー①

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異世界のような夜の山に魅了され、約30年にわたってナイトハイクに親しんできた中野純さん。ヤマケイ新書『ナイトハイクのススメ 夜山に遊び、闇を楽しむ』では、ナイトハイクの極意を紹介している。夜の山歩きの魅力とはいったいなんなのか、中野さんに聞いた。

写真=中野 純

すべては時刻表の見間違いから始まった

――中野さんはおよそ30年にわたって夜山歩きを楽しんできた、とお聞きしていますが、ナイトハイクにはまったきっかけはなんだったのでしょう? 「ナイトハイクに行くぞ」と計画をたてて行ったのですか?

もともと山登りは好きで、毎週のようにあちこちの山を歩いていました。夜の山を歩くという意味では、1993年8月に、流星群を見るために丹沢の主脈に登ったということもあります。でも、決定的なきっかけになったのは1994年5月のことです。夜行列車に乗って、南アルプス前衛だったか、どこか遠くの山に登ろうと計画しました。新宿発23時50分の列車に立川駅から乗車しようと考え、0時過ぎに立川駅で列車を待っていました。ところが、列車が来ない。時刻表の、運行される曜日の見方を間違えていました(笑)。

――なんと、時刻表の見間違いがきっかけだったのですね!?

はい(笑)。そして、せっかく山に行く準備をして、深夜の立川駅まで来たのに、このまま帰るのはもったいないと思い、高尾まで行ってみたのです。高尾の里をぶらぶら歩いていると、高尾山の東にある草戸山の登り口を見つけました。もともと日の出前から登る装備でしたし、老人でも子どもでも登れる低山なので大丈夫だろう、と登り始めたのです。でも思いのほか暗くてびっくりしました。先ほども言ったとおり、丹沢で流星群を見たり、夜の山歩きの経験はあったのですが、「夜の山を歩く」ことだけを目的に歩き始めたところ、そこには闇の世界が果てしなく続いているように感じられました。これは強烈でした。こんなとんでもない世界が、日常とかけ離れた世界が、自分が住んでいるところのすぐそばで、毎晩出現しているのか、と。このときの体験がナイトハイクにハマるようになったきっかけですね。

京都東山、西野山の近くで
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プロフィール

中野 純(なかの・じゅん)

1961年、東京都生まれ。「闇」に関する著作を数多く発表しつつ、ナイトハイクや夜散歩など闇歩きガイドとしても活躍。主な著書に『闇で味わう日本文学 失われた闇と月を求めて』(笠間書院)、『「闇学」入門』(集英社新書)、『闇と暮らす。』(誠文堂新光社)、『庶民に愛された地獄信仰の謎』(講談社+α新書)、『東京「夜」散歩』(講談社)、『闇を歩く』(光文社 知恵の森文庫)、『月で遊ぶ』(アスペクト)、など。東京造形大学非常勤講師。

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