登山口でおにぎりをパクリ!は危険かも? 登山当日の朝食を考える

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登山の成否を決めると言っても過言ではないエネルギー補給。ヤマケイ新書『院長が教える 一生登れる体をつくる食事術』から、著者の齋藤繁さん(群馬大学医学部附属病院病院長)のアドバイスを紹介しよう。

文=齋藤 繁、写真=PIXTA

飲み物やゼリー飲料を朝食代わりにしても

とはいえ、移動中に食べることができないマイカー登山の場合など、どうしても登山口で朝食にせざるを得ないこともあると思います。登山口の近くにお住まいの人も、またしかりです。

そんなときは、じんわりと血糖値が上がってゆっくり吸収されるものを摂るようにすればいいのですが、このエネルギー源を食べ物に限定する必要はありません。飲み物からでも、登山に必要なエネルギーを充分に得ることができます。

たとえば野菜ジュース。これには意外に砂糖が入っていますので、大ぶりのコップで1杯飲めば120~130kcalは摂れます。さらに牛乳や豆乳を飲めばプラス100~200kcal。ヤクルトなどの乳酸菌飲料も加えれば、おにぎり2個分に相当する約300kcalを液体だけで摂取することができるのです。

ゼリー飲料(森永製菓の「inゼリー」など)もおすすめ。かくいう私も、群馬県前橋市の自宅から榛名(はるな)山系の水沢山(1194m、登山口の水沢観音と山頂の標高差は約600m)や、赤城山系の鍋割山(標高1332.9m、姫百合駐車場と山頂の標高差は約400m)にササッと登るときなどは、固形物は食べずに、出がけにゼリー飲料を飲むだけで済ませています。登山口までの所要時間は車で30分ほど。到着するころにはちょうど体に栄養が回っている状態になり、胃腸に負担がかからないのもなによりです。この程度ならインスリンの分泌過剰も起こりません。固形物を食べるとすれば、食後30分~1時間半ほど経ってから出発しなくてはなりませんが、この待ち時間を省略できるのも利点といえます。

登山前にはなにか固形物を食べておかなくてはいけないという固定観念をお持ちの人が多いことと思います。たしかに、ゆっくり吸収される食べ物を、吸収される時間がとれるときに食べるのは極めて合理的なことですが、そこは臨機応変に。自宅から登山口までの所要時間に応じて個体か液体かを使い分けるのも、登山における大切な食事術ではないでしょうか。

ゼリー飲料の成分比較(1パックあたり)

ゼリー飲料の成分比較(1パックあたり)

ヤマケイ新書『院長が教える 一生登れる体をつくる食事術』

ヤマケイ新書『院長が教える 一生登れる体をつくる食事術』

あなたの食事が、あなたの登山を変える!
本書の著者は群馬大学医学部付属病院の院長にしてヒマラヤ登山の経験もある登山家。「何歳になっても元気に登りたい」という思いを抱いている人へ、医学的に正しい食事術を紹介します。

齋藤 繁
発行 山と溪谷社
価格 1,100円(税込)
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プロフィール

齋藤 繁(さいとう・しげる)

1961年、群馬県高崎市生まれ。群馬大学医学部附属病院病院長、群馬大学大学院医学系研究科麻酔神経科学分野教授、医学博士。大学生時代にワンダーフォーゲル部に所属し、国内各地で登山に励む。1992年、日本ヒマラヤ協会クラウン峰登山隊に参加し、高所登山に関する医学研究に取り組む。その後、山岳イベントの医療支援活動や一般登山者の健康管理に関する啓蒙活動などを行なっている。所属山岳団体は、群馬県山岳連盟、日本山岳会、日本ヒマラヤ協会、日本登山医学会など。

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