全国的・網羅的な救助ヘリ有料化には賛成が多数。 埼玉県の防災ヘリ一部有料化に関するアンケートVol.2

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2018年1月より施行されている「埼玉県防災航空隊の緊急運航業務に関する条例」の趣旨について、ヤマケイオンラインではアンケート調査を実施。その結果発表の第2回では、本条例が全国に推進されるべきかどうかなどについてのアンケート結果を公表する。

 

前回は条例の趣旨への賛否についての結果を中心に紹介したが、続く今回は条例が自分自身に与える影響や、遭難救助費用の有料化の全国的な広がりへの賛否についての結果を紹介する。

★前回記事:登山者の多くは概ね有料化を支持。埼玉県の防災ヘリコプターの一部有料化に関するアンケート

 

登山愛好者にとって「有料化」の心理的な影響は少ない?

4つ目の質問は、「今回の有料化で、あなた自身の登山に対する意識・心構えは変わりましたか?」というものだ。その結果は以下の通りで、88%が「変わらない」と回答している。

ヤマケイオンライン利用者は、もともと安全登山に対する意識が高い人が多いと考えられるので、定期的に登山をしている層には有料化へのインパクトは限定的となっている。

なお、埼玉県周辺の都道府県にお住まいの人(埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、群馬県、長野県、茨城県、山梨県)のみに絞って集計しても、その数値に変動はなかったことも付け加えておきたい。

次の質問の「5分5千円の費用は妥当かどうか」については、最も多かった「妥当(38%)」に続いたのは、「安いと思う(31%)」で、高額だと考えている人は少なかった。

なお、この費用の根拠は「ヘリの燃料代実費相当額」としている。ちなみに、埼玉県の発表によるとヘリによる山岳遭難の救助に要する平均時間は1時間程度、つまり平均的な費用は6万円となる。

費用については“高い・安い”という考えとは別に、様々な意見が集まった。以下にその一部を紹介しよう。

例えば、請求料金を時間で一律ということへの意見には以下のようなものがあった。

  • 基本は反対だが、費用計算の方法としては公的機関なので一回の出動でいくらの請求が妥当と思う。時間計算の内容にいろいろな疑義があると思う。
  • 遭難(命の危機、自力下山の困難度)の程度の評価制度・機関を設け、1.燃費のみ、2.運行実費、3.民間ヘリ同等額、の三段階程度の費用請求を設定することで安易な救助要請を抑制するのも一案。
  • 最短時間での救助であれば妥当だと思うが、時間を要した時に上限がないと高いと思ってしまう。

また、“安い”と考えている人の意見としては

  • 最初高いと思ったが、民営のヘリ遊覧などを考えるとそれでも格安な気がしてきた。
  • 本当に救助が必要な方にとっては高いと感じるし、タクシー代わりと考える人にとっては安いと思います。
  • ヘリの認可料金から見ると非常に安い。ただし設問では、救助の為の実飛行時間なのか、現地への移動飛行時間・現地での待機時間を含むのか不明で正確な判断は不可。

また、そもそもの有料化への反対や、わからないという人の意見として

  • 有料化が5万円で、「救助にはお金がかかるんだ・・・」と思うより、「5万円でヘリが来るんだ、俺は金はらったんだから・・・」と思うだけ。本当に「安易な救助要請」がどの程度あったのか、検討したのかな?
  • 高い安いの問題ではなく、その県の行政区域における行政責任を果たす義務を何と心得ているかの問題である。
  • 公的機関が救助に金銭を要求すること自体が、おかしい。微々たる費用ではないか。命を守るライフラインなのだから、お金を取るなどと損得勘定をするのでなく、救助の基本から考え直して欲しい。
  • 命を助けて貰るなら安いかもしれないが、救助する側からすればかなりの危険を伴うので、判断は難しい。

などが挙がった。

なお、新聞報道などによると、2018年1月19日の埼玉県・二子山の山岳遭難事故で初の救助費請求が行われており、58分間航行して5万5000円を請求したと、埼玉県は発表している。

 

遭難救助費用の有料化の全国的な広がりは「歓迎」が大多数

6問目の質問は「他の自治体でも導入を検討していることへの賛否」だが、実に73%が推進すべきを選択した。

実際、多くの人気山岳地を抱える長野県でも、埼玉県と同様に防災ヘリの墜落事故もあり、何度か議論されているが、現時点の結論としては有料化は見送られている。また、南アルプスや富士山などを抱える山梨県でも積極的に議論されている。今回の埼玉県の条例による効果の検証が進めば、他の自治体でも改めて議論されることになることも考えられる。

 

続くアンケートの回答は第3回へ。

 

ヤマケイオンライン みんなの登山白書

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