コケと紅葉の北八ヶ岳・白駒池へ【紅葉レポート】
読者レポーターより登山レポをお届けします。東武さんは北八ヶ岳へ。コケの森、白駒池(しらこまいけ)は紅葉シーズンも人気です。
文・写真=東 武
1日目:白駒池登山口~高見石~黒百合ヒュッテ
八ヶ岳北部にある白駒池は、例年なら9月下旬から10月上旬が紅葉の見頃。そろそろ紅葉が楽しめるころだろうかと期待して、白駒池に行く計画を立てました。
茅野駅から9時35分発、麦草峠(むぎくさとうげ)線のバスで白駒池に向かいます。紅葉の時期ということもありバス停は長蛇の列で、この日は臨時の増発バスも出ていました。
白駒池は紅葉の名所であり、コケの名所でもあります。北八ヶ岳の土壌や気候がコケの生育に向いているらしく、白駒池周辺の森では美しいコケの密生が見られます。
この日も紅葉よりも先にコケがお出迎えしてくれました。
白駒池は北八ヶ岳の登山ルートではありますが、白駒池の周辺は整備された木道が続いています。登山道のように険しい道ではなく、白駒池バス停からすぐに森に入れるので普段着とスニーカーで散策している人たちも多く見かけました。
目当ての紅葉ですが、どうやら今年は進み方が遅いらしく、まだまだ色づき始めといったところです。色づいた木々は多くありましたが、例年に比べて見頃まではもう少しかかりそうでした。
白駒池をぐるりと周回してから、高見石(たかみいし)へと向かいます。
高見石までは30~40分程度の登りで、土や石がむき出しの無骨な道に変わりようやく登山道らしくなります。
登山道は雨の影響でところどころ水没していたりドロドロにぬかるんでいます。ゲイターを履いて正解でした。登山靴とゲイターを泥だらけにしながら高見石小屋に向かいます。
大勢の人でにぎわう高見石小屋で昼食をいただきます。高見石小屋の名物、あげパンです。
左奥からココア、抹茶、チーズ、きなこ、黒ゴマの5種類があります。温かくおいしいパンを食べて小休止し、小屋の名前の由来でもある高見石に登りました。
高見石は、頂上から白駒池や遠方の山を一望できる岩場で、北八ヶ岳で随一ともいわれる展望台です。
この日の空は雲で隠されていましたが、辛うじて白駒池までは見えました。
高見石を下りて、今度は黒百合ヒュッテをめざして進みます。このあたりから雨足が強くなり、レインウェアなしでは進めないほどの雨になりました。
この日は黒百合ヒュッテでテント泊をして、翌日早朝に天狗岳(てんぐだけ)から根石岳(ねいしだけ)を縦走する予定を立てていました。雨が弱くなるのを期待しましたが、よりによって黒百合ヒュッテでテントを設営しているときに雨が土砂降りに。
いったんテントの設営を中断し、黒百合ヒュッテの軒先に避難します。しばらく待って小雨になったタイミングで再びテントを設営し、この日はテントから出ることなく、湿った冷たい寝袋で就寝しました。
2日目:黒百合ヒュッテ~渋の湯登山口
翌朝4時に目を覚ますと、まだ雨が降っています。行動開始を予定していた5時まで待っても雨はやむ気配がありません。6時を過ぎてもまだ雨だったので、諦めてこの日は下山することに決めました。
2週間ほど前に登った北八ヶ岳の蓼科山(たてしなやま)で、雨と強風で怖い目に遭ったので安全策を取りました。しかし、この安全策がみごとに裏目に出ました。
下山を開始してすぐに雨は止み、1時間もするころには空に晴れ間が見えます。「天狗岳までなら行けたかなぁ」と思いましたが、後の祭りです。
空が晴れて視線が上に向いているせいか紅葉した木々が多く目につきました。
下山せずに登っておけば頂上からの絶景が見られたかも・・・と後ろ髪を引かれながら下っていきます。登山口まであと少しのところで、ふと足元を見ると、小さな枝が雨露をしたたらせて光っているのが見えました。
渋の湯の登山口周辺も、コケの密生する美しい森が広がっています。頂上の景色の代わりに、足元に広がるコケの緑を堪能してから下山しました。
残念ながら頂上からの絶景は見られない日でしたが、頂上から見る景観だけが景色じゃないな、とあらためて認識した日でした。
(山行日程=2024年10月5~6日)
MAP&DATA

東 武(読者レポーター)
晴れた日は山に出没し雨の日には本を読む、そんな暮らしにあこがれる文系山男。文学サークル・ペンシルビバップを主催している。山と文学と相模原市を愛してやまない。
この記事に登場する山
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