新緑と春の花木を求めて天覧山へ。とっておきの下山スイーツはフルーツたっぷりのパフェ

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山麓のサクラ、登山道沿いのヤマツツジが美しい春の天覧山(てんらんざん)。大好きな下山スイーツで心地よい山歩きを締めくくった。

写真・文=西野淑子

4月下旬、ツツジのお花見で奥武蔵・天覧山へ

登山口から天覧山へ向かう道中、4月中旬〜下旬はヤマツツジが路の両側を彩る。登山口や山頂近くの広場にはミツバツツジも多く見られ、こちらは少し開花が早い。4月上旬は登山口近くの飯能中央公園のサクラ(ソメイヨシノ)も見どころ。管理された花園ではないから、すべての花が一斉に咲くわけではない。時季をずらしながら花木が山を彩るのが、天覧山のすてきなところだと思う。

ヤマツツジのトンネル
天覧山へ向かう道中、ヤマツツジのトンネルになっていた

花木の開花はその年の天候により時季がずれる。今年はどうだろうと思いながら歩き始める。今回はヤマツツジがちょうど見頃になっていた。ツツジの朱色に新緑の緑が映えて美しい。薄曇りの日で山頂からは奥多摩の山々は見渡せたものの、丹沢や富士山は雲の中だった。心地よい雑木林を歩いて多峯主山(とうのすやま)へと足を延ばした。

天覧山山頂から望む大岳山や御前山
天覧山山頂から奥多摩方面を望む。大岳山や御前山が見えた

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム:3時間
行程:飯能駅・・・天覧山登山口・・・天覧山・・・多峯主山・・・吾妻峡(ドレミファ橋)・・・飯能駅
総歩行距離:約7,900m
累積標高差:上り 約384m 下り 約384m
コース定数:12

旬のフルーツが盛りだくさん、見た目も華やかなフルーツパフェ

永田大杉バス停からさらに吾妻峡(あづまきょう)の遊歩道を歩き、飯能駅へ。そういえば、あの店、今日は開いているだろうか。

西武線と秩父鉄道沿線の山歩きのルート集『秩父ハイク』の取材で訪れた、蔵カフェ草風庵が、帰り道にあるのだ。新鮮な旬のフルーツを使ったスイーツが味わえる店だ。いつも多くのファンでにぎわう店、満席だったら諦めようと思いながら、店に向かう。

ドキドキしながら扉をあける。運よく、カウンター席がひとつあいていた。よかった。少し大きいザックを気にしつつ、ニヤニヤしながらカウンター席に腰掛ける。メニューを手にするが、食べたいものはもう決まっている。

「季節のフルーツパフェをください」

果物店の店主が営むカフェ、フルーツの質の良さはお墨付きだ。フルーツを使ったメニューのなかでも人気が高いのが「季節のフルーツパフェ」。『秩父ハイク』の取材で撮影をさせていただき、いつか「登山の帰りに立ち寄ってパフェを食べたい」と思い続けていたのだ。

納屋蔵を改装して造られたお店はレトロな雰囲気だ。1階はカウンター席とテーブル席、2階にも客席がある。1階席は満席、ぎっしりとお客さんが入っている。うれしそうにタルトを味わっている人たち、コーヒーや紅茶を飲みながらおしゃべりを楽しんでいる人たち……、ゆったりとした時間が流れている。

蔵カフェ草風庵2階
2階は古民家の雰囲気が楽しめる座敷席(写真=高橋郁子)

周りの人たちの食べているものをちらちらと眺めつつ待っていると、パフェが登場。今どきの細いスタイリッシュなグラスではなく、ラッパ型のパフェグラスに、大量のフルーツが盛りつけられている。みずみずしく、つやつやと輝いているフルーツに心が踊る。

蔵カフェ草風庵の季節のフルーツパフェ
季節のフルーツパフェ。山盛りのフルーツにテンションが上がる

常時10〜12種類のフルーツを使っていて、今日のフルーツの内訳が添えられている。このお店の「季節のフルーツパフェ」は、その時季に一番おいしい産地のフルーツをそろえている。今日のパフェはマスクメロン、いちご、青森のサンふじりんご、キウイフルーツは2種類。せとかやデコポン、文旦など柑橘類の種類が多い。取材で訪れたときは秋だったので、シャインマスカットや梨、柿などだった。当時の写真を見返すと、ラインナップがだいぶ違ったね。

フルーツパフェのフルーツのリスト
フルーツのリストは産地まで書かれている

崩さないようにそっと手前の柑橘類(せとかかな)を取り出して、一口。……ジューシーで甘みが強い。一番よい状態のフルーツ、というのもうなずけるよ。次々にフルーツを味わうが、どれもみずみずしいし、そのフルーツの酸味や甘みが強く感じられる。食べやすく、かつ果物のよさを損なわない大きさにカットされているのも、フルーツを知りつくしているお店ならではなのだね。

大量のトッピングのフルーツの下はバニラアイス、中にはごろごろとカットされたパイナップルやバナナが隠れていた。コーンフレークではなくてフルーツ、いいじゃないか!本当に最後まで楽しませてくれる、幸せな気持ちにさせてくれるパフェだ。

最後にコーヒーをいただいて一息。ごちそうさまでした。 心地よい山行を、念願の下山スイーツで締めくくることができてよかったな。今度はタルトに挑戦しよう……と言いつつ、きっとまたパフェをオーダーするに違いない。

蔵カフェ草風庵のコーヒー
コーヒーカップもしゃれている

蔵カフェ草風庵

蔵カフェ草風庵
明治時代末期築の納屋蔵を使った建物

明治時代末期の納屋蔵を改装したカフェ。心地よい雰囲気の店内で、旬のフルーツをふんだんに使ったパフェやタルトなどのスイーツが味わえる。

住所 埼玉県飯能市山手町4-1
TEL 070-3230-2385
『秩父ハイク 西武池袋線&秩父線・秩父鉄道沿線の山歩きと秩父三十四札所巡り』

秩父ハイク
西武池袋線&秩父線・秩父鉄道沿線の
山歩きと秩父三十四札所巡り

山と溪谷社編
発行 山と溪谷社
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この記事に登場する山

埼玉県 /

天覧山 標高 197m

飯能市の背後に盛り上がるようにそびえる山で、登山口から20分で登れることから人気の高い山。山頂には展望台が設けられ、飯能市街をはじめ、天候が良ければ奥多摩の山々や富士山なども望める。 山名はこれまで、何度か変わっており、古くは愛宕神社があったことから「愛宕山」。江戸時代の徳川綱吉将軍の時代は、十六羅漢を寄進されたことから「羅漢山」。そして明治時代に天皇陛下が登ったことから「天覧山」となった。

プロフィール

西野 淑子(登山ガイド・フリーライター)

初心者向け登山ガイドブックや山岳雑誌などで取材・執筆を行なうフリーライターで、登山ガイドの資格を持つ。関東近郊を中心に低山歩きから沢登り、雪山登山まで楽しむオールラウンダー。気の合う仲間と山を歩き、下山後においしいものでお腹と心を満たすことに無上の喜びを感じている。

下山メシのよろこび

登山後、すなわち下山後の楽しみの一つが、山麓にあるグルメ。ご当地の名物料理もあれば、鄙びた駅前に立つ小さな食堂で出す普通の料理まで、その楽しみは幅広い。 登山ガイド・フリーライターの西野淑子が下山後に味わった数々のとっておきのお楽しみを紹介する。

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