富良野岳でお花畑を満喫

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読者レポーターより登山レポをお届けします。みやびさんは北海道十勝(とかち)連峰の富良野岳(ふらのだけ、1912m)へ。

文・写真=みやび


十勝連峰の富良野岳は、荒涼とした火山礫の十勝岳とは対照的で、花の百名山にも選ばれている花の山です。標高1270mの十勝岳温泉登山口から出発し、1912mの山頂まで、往復5~6時間、約9kmの山行です。

富良野岳分岐からはコマクサ、メアカンキンバイなど高山植物が増え、山頂手前のお花畑は必見。三峰山~上富良野岳や上ホロカメットク山、十勝岳への縦走など、体力に合わせコースを選べるのも魅力です。

雨予報の中、早めに出発

天気予報では午前小雨、午後から雨ですが、お花畑の見頃に合わせて富良野岳へ。日の出は3時55分、前泊した登山口駐車場は雨予報のため4時で10台ほどと登山者は非常に少なかったです。

十勝岳温泉登山口は凌雲閣(りょううんかく)の横から始まります。雨が降りだす前にお花畑の到着をめざし5時前出発。前夜の雨がやみ、一部青空も見えていました。

花が多い登山道を進む

序盤は平坦な道で、ノビネチドリ、アカモノ、エゾイソツツジ、マルバシモツケが目を楽しませてくれます。

安政火口方面の景色が広がると、ハシゴを下り、ヌッカクシ富良野川の徒渉。水量の少ない徒渉ですが大雨後の鉄砲水には注意が必要です。

たくさんのノビネチドリ
たくさんのノビネチドリに見送られ出発
安政火口方面
迫力の安政火口方面が見ながらヌッカクシ富良野川を渡ります

徒渉を終えると小さな岩場から、時折、ナキウサギの鳴き声が聞こえます。

昨夜の雨で濡れた透明なサンカヨウが見られました。滑る大岩の道を慎重に進むと上ホロ分岐に到着。直進は上富良野岳へ、富良野岳は右に進みます

サンカヨウ
雨の日の楽しみ、透けたサンカヨウが美しい
上ホロ分岐
上ホロ分岐は岩のペイントが目印、富良野岳は右に進みます

三峰山沢の簡単な徒渉の後、木製階段が始まります。傾斜はゆるめですが所々砂利がのっていて特に下りでは注意が必要です。

木製階段とガスに包まれる富良野岳
木製階段を登って行く。正面に見える富良野岳はガスの中

二つ目の沢には今回唯一の残雪がありますが、10mほどで容易に渡れます。

すぐ先の通称「お花畑」には8月18日まで携帯トイレブースが設置されています。携帯トイレ回収ボックスは登山口にあり、紙は持ち帰りです。

携帯トイレブース
携帯トイレブースは8月18日まで設置。まだ晴れ間も見え奥には十勝岳の噴煙

満開のウラジロナナカマドとウコンウツギ回廊のトラバースの道からは見渡す限りの雲海と小さく登山口の凌雲閣も見えました。

雲海と登山口の白い凌雲閣
どこまでも続く雲海と登山口の白い凌雲閣が見ました

ガスの中、幻想的な楽園

富良野岳分岐に到着するとガスに覆われ始めました。三峰山~上富良野岳や十勝岳への縦走路との分岐です。富良野岳に向けゆるい階段を登って行きます。ここからはコマクサ、メアカンキンバイなど高山植物が次々に現われ、楽しい道です。

富良野岳分岐からの階段
富良野岳分岐から階段を登ると高山植物が増えます。行く先はガスで白い
コマクサ
高山植物の女王コマクサが見頃を迎えていた

階段を登り切るとチングルマのお花畑が一面に広がります。いつも花見登山のみなさんの歓声が上がる場所です。霧の中に広がる幻想的なお花畑を楽しんでいると、今度はエゾノハクサンイチゲの見渡す限りのお花畑。トラバースの登山道の左下も右上も満開で、まるで楽園のような景色です。

チングルマの花畑
数日ピークは過ぎてますが一面のチングルマのお花畑が広がっていました
エゾノハクサンイチゲの花畑
登山道の両側が満開、すばらしいエゾノハクサンイチゲのお花畑

エゾコザクラ、コイワカガミ、エゾノツガザクラ、ヨツバシオガマのピンク系にメアカンキンバイ、チシマノキンバイソウの黄色が白いお花畑に彩りを添え、美しい景色が広がります。お花畑観賞で足が止まること必至です。霧の中、歩いてきた甲斐がありました。

エゾコザクラ
可憐なエゾコザクラ、小さなお花畑も見られました
コイワカガミ
水滴をまとうコイワカガミがかわいい

コケモモ、ミヤマアズマギク、キバナシャクナゲを楽しんで最後の登りで富良野岳の山頂に到着しました。山頂は真っ白で景色が見えませんが、すばらしいお花畑に会えて満足です。

富良野岳山頂
富良野岳山頂に到着、濃いガスで景色は見えなかった

濃いガスのため下山を開始すると、予報通りの小雨に。三峰山~上富良野岳への縦走をあきらめ、小雨に打たれ下りていくと麓は雨が降っておらず暖かかったです。

下山後は登山口すぐ横の十勝岳温泉凌雲閣へ。露天風呂から十勝連峰を眺め温まりました。

(山行日程=2025年7月2日)

立ち寄り情報
十勝岳温泉 凌雲閣

十勝岳温泉 凌雲閣
十勝岳温泉登山口の駐車場向かい、北海道でいちばん高い1280mにある温泉です。露天風呂からは十勝連峰が望め、紅葉時期は特にすばらしい景色が見られます。食事もでき、山バッジや十勝連峰Tシャツも置いています。
https://www.ryounkaku.jp/

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数: 日帰り
コースタイム: 5時間30分
行程:十勝岳温泉・・・上ホロ分岐・・・縦走路分岐・・・富良野岳・・・縦走路分岐・・・上ホロ分岐・・・十勝岳温泉
総歩行距離:約9,700m
累積標高差:上り 約913m下り 約913m
コース定数:22
アドバイス:

十勝岳温泉登山口は50台駐車可能で水洗トイレがあります。週末はもちろん花、紅葉時期は平日でも朝6時ごろには満車になることが多いので、早めの到着がいいでしょう。

今回は雨のため行きませんでしたが、富良野岳分岐からの三峰山~上富良野岳への縦走ルートも花が多く、晴れた日の上富良野岳からは三段山の火山礫の迫力ある景色や十勝岳も眺望できます。距離12km、標準タイム7時間10分で富良野岳往復5時間30分にプラス2時間弱で楽しめます。

さらに往復1時間のカミホロカメットク山も行く人が多く、健脚であれば十勝岳往復や勝岳経由で望岳台分岐を通り、吹上温泉白銀荘へ下山後にバスで十勝岳温泉登山口へ戻ることも可能です。

また稜線には無人の上ホロ避難小屋があり、避難小屋泊、テント泊で山をより深く楽しむ事ができます。

みやび(読者レポーター)

みやび(読者レポーター)

北海道在住。大雪・十勝連峰を中心に北海道の山を日帰りで歩いています。花と景色と下山後の温泉が楽しみ。

この記事に登場する山

北海道 / 石狩山地

富良野岳 標高 1,912m

 十勝連峰最南端の山。北に険しい尾根を引いた姿が魅力的だ。十勝連峰中では最も花の多い山であり、人気は高い。  フラヌとは匂いのあるという意味で、ヌッカクシフラヌイ川を指しているのだろう。本来のアイヌ名はオッチシパンサイウシベ「下の峠山」であった。松浦武四郎は安政5年(1858)に「上の峠山」前富良野岳(1625m)との間のコルを越えて新得へと向かったと『十勝日誌』に書いている。冬の登頂は、大正14年(1925)に北大山岳部が西尾根からなしとげた。  登山の出発点は十勝岳温泉。安政火口手前で沢を渡り、長い斜めの登りで尾根へ出ると、もう富良野岳は目前だ。頂上まで3時間30分。さらに三峰山(1886m)を経て、上ホロカメットク山、十勝岳へ足を延ばすのもいい。南方に広がる湿原「原始ガ原」からの道も興味深いが、登山口から5時間30分の長めのコースだ。

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