登山初心者でも分かる! 服装選びの基本 3 -山での必須&便利アイテム-

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初めての人でも登山にチャレンジしやすい春から秋。気候が比較的に安定しているシーズンとはいえ、いざ山に行くときに、単に「動きやすい服装で!」という考え方はNGだ。天気は変わりやすいし、平地では考えられないほどの風が吹くことも・・・そんな山の自然環境によるリスクを軽減するためにも、登山に適した服装を選びたい。そこで、服装選びの基本の3回目は「山での必須&便利アイテム」について、さかいやスポーツ 高橋さんに聞いた。

 

 

登山の必須アイテム、レインウェア

ライターT:「服装選びの基本1」ではレイヤリングの基本とこまめな脱ぎ着の重要性について、「服装選びの基本2」ではシーン別のおすすめレイヤリングについてうかがいました。知識が増えるにつれ、登山を始めるにはたくさんのアイテムを買わなくてはいけない・・・というプレッシャーがあると思いますが、最初に揃えておきたい衣服の優先順位を教えてください!

高橋さん:登山用の服装として必ず揃えてほしいのが、汗をかいても乾きやすいアンダーウェアと、急な雨に対応するためのレインウェア。大切なことなのでしつこく言いますが、山の中では体が冷えないために「濡らさない」ことが重要だから、「汗で濡らさないためのアンダーウェア」と「雨で濡らさないためのレインウェア」が必需品なのです。

 

登山用レインウェアの定番といえるモンベルの「ストームクルーザー」


ライターT:まずは、その2つを手に入れるといいですね。すでにスポーツ用のものなどを持っている場合は、それを着てもよいのでしょうか?

高橋さん:必ずしもダメとは言えませんが、アンダーウェアとレインウェアは、できれば登山用の商品を選んでほしいです。登山用は、登山中の体の動きを考えて生地選びやデザインがされていますし、山での使用に対応できる製品テストが行われていることが多いから。平地で行うスポーツ用とは異なる考え方で作られているのです。

ライターT:登山用のレインウェアは、ジャケットとパンツの上下セットで必要ですか?

高橋さん:日本の山は雨がよく降るので、不意の雨に備えて、必ずセットで持ち歩いて。たとえはっ水性や速乾性を備えたパンツをはいていたとしても、雨が降ったら必ず濡れるし、降っている間は濡れ続けるので、レインパンツを持っていないというのは危険です。

また、レインウェアは雨天時以外に、予想外の強風などで寒いときにも重宝します。行動中に着ている服装で寒く感じ、持っているのはダウンウェアしかない・・・という場合、行動着に適さないダウンを着るのではなくレインウェアを重ねてください。

ミズノの「ベルグテックEX ストームセイバーVレインスーツ」など、オリジナルの防水透湿素材を使ったレインウェアも増えている


ライターT:寒さ対策という意味でも、レインウェアは上下セットで! ということですね。

高橋さん:レインウェアは、たとえるなら「家の壁」ですから。対して、ウインドブレーカーは「お布団」みたいなもの。壁のない家でも好天なら、お布団だけでなんとかなることもあるけれど、いざ悪天になったら壁が大事。壁がないと、家中ずぶ濡れで困るでしょう? それくらい、なくてはならないものです!

軽くてしなやかなティートンブロスのレインウェア「ツルギ ライトジャケット」。ネオシェル素材のメリット・デメリットを把握したうえで使うことが大事

 

山での活躍度が高いウインドブレーカー

ライターT:「ウインドブレーカーはお布団」という話が出ましたが、高橋さんは登山の基本的なレイヤリングでもウインドブレーカーを着用することをおすすめされていますよね。

高橋さん:春や秋の登山では特に、とても有効なアイテムだと思っています。気温が低すぎない季節なら、肌寒いときに薄いウインドブレーカーを羽織って、それを脱ぎ着すると体温調整がしやすいです。最近の主流になってきている薄手のウインドブレーカーだと、重量が100~200gくらいのものが多く、小さくまとめればとてもコンパクトになるので、ザックに入れておいて肌寒くなったらすぐ羽織るというのがおすすめです。

 

高橋さん愛用のウインドブレーカー、パタゴニアの「フーディニ・ジャケット」は重量102gの軽量タイプ

ライターT:レインウェアだと、行動中に着ていると暑くなりすぎることが多いし、そもそもずっと着て歩くように作られていませんからね。

高橋さん:レインウェアの基本は、雨天時に備えての携行。ウインドブレーカーは着て歩くことを想定して作られているので、行動中に着ていてムレるということは少ないです。

ライターT:最近のウインドブレーカーは、本当にペラペラの薄いものが多いですが、それでも風を防ぐだけで防寒にはなるのでしょうか。

高橋さん:風って本当に寒く感じるから、薄い生地でも1枚あるだけで安心感が違います! 体や衣服が濡れた状態で風を受けると体の熱が奪われてしまうので、風の直接的なあたりを防ぐだけで防寒に。ちなみに、「レインウェアだと防風性もあるのでウインドブレーカー代わりにできる」という人がいるけれど、レインウェアの場合は防水性を確保するため多層構造になっているから、いくら透湿性が高いといっても限度があって、その限度を超すとムレて衣服内がサウナ状態になることも・・・。その点、ウインドブレーカーは透湿性に優れているため、汗をかきすぎずに体を風から守ってくれます。

ブラックダイヤモンドの「アルパインスタートフーディー」は、ストレッチ性やはっ水性を備えたソフトシェル。軽量コンパクトなので、ウインドブレーカー感覚で使える

 

基本にプラス! あると重宝するアイテム

ライターT:ウインドブレーカーは1枚あると本当に便利ですね。その他に、あったら重宝するアイテムは何ですか?

高橋さん:ここからは、人それぞれの好みになってくれるけど・・・。たとえば「山シャツ」と呼ばれる襟付きでフロントがボタン仕様のシャツが、昔から登山服として使われています。これは、肌寒くなれば襟を立てて着られるし、暑さに合わせて前ボタンの開け方を変えながら換気できる。長袖なら、袖のまくり上げで体感温度を調整しやすく、意外と・・・といっては何ですが、機能的なアイテムなので重宝します。

マウンテンハードウェアの「キャニオンソリッドロングスリーブシャツ」は、タウンユースもしやすい雰囲気の山シャツ


高橋さん:あとは、長袖シャツを着る代わりに半袖シャツ+アームカバーをつける人も。腕部分だけなので、まくり上げたり伸ばしたりで、コンディションに応じて手軽に調整しやすいのが魅力です。アームカバーにはコンプレッション機能のあるものや、高いUVカット機能を備えたもの、防虫対策ができるものなどいろいろあるので、好みに合わせて選ぶといいでしょう。

着圧設計で、UVカット機能もあるC3fitの「インスピレーションアームカバー」

 

登山の服装におけるNGと普段着でできるもの

ライターT:登山の服装についていろいろうかがってきましたが、「これだけはNG!」ということはありますか?

高橋さん:綿100%のものは避けること! 綿のチノパンやジーンズは、アウトドアスタイルのイメージがあるかもしれませんが、それはあくまで平地で楽しむアウトドアなので、登山の服装ではNGです。なぜなら、綿は汗をたっぷり吸ってくれるけど、吸った汗は乾きにくく、そして水を吸うと生地が硬くなるから動きづらくなるからです。雨で濡れたジーンズを思い出してみてください・・・あれが山の上で起きると、いいことなんてひとつもありません!

ライターT:綿素材以外で、気をつけることは?

高橋さん:ダメだなと思うことは結局、綿素材のデメリットに行きつきます。とにかく、服だけでなく靴下も下着も、綿100%もしくは綿の混率が多いものは避けてくださいね。

ライターT:普段着で代用できる登山の服装があれば知りたいです!

高橋さん:寒いときに着るミッドレイヤー(中間着)に関しては、フリースの代わりにウール(羊毛)のセーターでも代用できます。アンダーウェア以外の行動着なら、スポーツ用のジャージを持っているならそれでもOK。ジーンズやチノパンを穿いて山に登るよりジャージのほうが、断然いいですよ!

ファッションアイテムとしても人気のディボルドのウール100%セーターは、山でも活躍


ライターT:山に向かうなら、まずは登山用のアンダーウェアとレインウェアを。手持ちアイテムで代用できるものは上手に活用しつつ、経験を積むにつれ、自分にとって必要で、あると快適性が増しそうなアイテムを少しずつ揃えていくといいですね。

登山における正しい服装選びができていると、天候や体調によるトラブルが軽減できるもの。山を楽しむためにも、基本のレイヤリングや必須アイテムをしっかりと押さえておこう。

 

プロフィール

高橋 典孝(さかいやスポーツ ウェア館)

山の世界で働いて20年のベテラン。ウェアに関する知識はオタク級だが山道具も大好き!!
ゆったりオートキャンプからガッツリ登山まで何でもこなすが特に最近は、トレイルランニング、テンカラ釣りに没頭中。

さかいやスポーツ

創業以来、約60年にわたり神田神保町で全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店。ウェア、シューズ、ギアなど品目別の専門館を6店舗展開。ウェアや道具に詳しいスタッフが丁寧に解説してくれるので、ビギナーでも安心。

住所/東京都千代田区神田神保町2-48
TEL/03-3262-0432
営業時間/11:00~20:00
アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分

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