山へ行けない間に、私が実践していたこと

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好日山荘の女性スタッフ有志「おとな女子登山部」によるリレー連載。今回は、銀座 好日山荘に勤務のるんちゃんさんに、「山に行けないときに私が実践していたこと」について教えてもらいました。

 

 

これまでの登山スタイルを振り返る。登山者自身が今のうちに身につけておきたいこととは?

みなさん、こんにちは。おとな女子登山部のるんちゃんです。

山登りをするには絶好の季節にもかかわらず、4、5月は「STAY HOME」の宣言の下、山へ出掛けられずに自宅で過ごした登山愛好家の方が大勢いたのではないでしょうか。私もその1人で、2ヶ月近く登山を自粛し、山に想いを馳せる日々を過ごしていました。しかしこの停滞していた時間は決して無駄ではなかったと思っています。

というのは、自分の登山スタイルの反省と、体力の向上、そして山に対する心構えを、改めて組み立てる良い機会となったからです。今回は、「山に行けないときに私が実践していたこと」についてご紹介したいと思います。

これまでは、忙しい日々の中で十分な登山計画も立てずに、思い付きで、とにかくがむしゃらに山へ向かっていた時期もありました。寝不足のまま、疲れが溜まったまま登って風邪をこじらせたり、大事な地図を忘れたり・・・。今まで事故に遭わなかったのは、単に運が良かっただけだと感じることがあります。

今、コロナ禍によって、頼もしい山小屋の存在が大きく変わろうとしています。マスクや手指の消毒液の持参はもちろん、水や食料、場合によっては寝袋など小屋をあてにして軽量化できていた部分も、自分たちで担ぎ上げなくてはいけなくなるかもしれません。今までは山小屋があったからこそ楽ができたし、安全に登れていた部分も大きいと思います。本当に山小屋の有難さが身に染みます。

小屋を宿泊で利用する際は、スタッフの方の余計な心配を減らす意味で、到着時間に大幅に遅れることが無いようにしたいものです。そうなると必要とされるのが、重い荷物を背負いながら一定のスピードで登れる体力です。エマージェンシースキルもたくさん持っていた方が安心です。難度の高い山であればあるほど、自己責任が一層問われるようになっていく気がします。

過去の山行中の失敗は自身の大きな経験になります。しかし、登山を取り巻く世界が変化し、フィールドに出て実体験を積むのは難しくなっていくかもしれません。それならば下界でやれることは出来るだけやっておいて、いざ山に行った時にリスクを最小限にできるよう行動するのが望ましいのではないかと考え、私なりにトレーニングを実践してみました。

 

体力向上のためにランニングを始めてみたら・・・

体力作りといって最初に思い浮かぶのはランニングですが、私は大の苦手です。しかし、往復14kmの通勤を毎日走って頑張っているおとな女子登山部メンバーに触発され、私も一念発起、走ってみることにしました。始めてみると案外楽しいことにも気付きました。

普通に歩くよりも負荷をかけられることと、時間を決めて集中的に取り組めることがランニングのいいところです。近頃のランニングブームで、整備されている場所が多く、車を気にせず走れるのも安心です。あくまで続けることを念頭に置いて、疲れた時は休み、無理せずに取り組んでいます。

もし走るのが苦手な方は、早歩きをしたり、電車通勤の一駅分を歩いたり、肩掛けバッグをザックに変えて重りを入れて歩いてみたりと、日々の生活に少し負荷をかけてみるのも効果的ではないでしょうか。

ランニングでは、登山で使用しているウェアが大いに役立ちました。速乾性のTシャツや、汗冷え防止のアンダーウエアなどです。

山の中ではないので、基本的には好きなウェアを着れば良いのですが、女性にとって大事なブラだけはしっかりした機能性のあるものを選びたいです。速乾はもちろん、胸の揺れを少なくするものがおすすめです。抑えがゆる過ぎると胸に痛みが出ることもあるので気を付けましょう。

例えばファイントラックなら、フィット感が高く、涼しい「クールシリーズ」。ワコール(CW-X)であればテーピングで揺れを抑えてくれる、その名も「RUNシリーズ」が快適な走りをサポートしてくれます。

他にも、ゴールドウィン(C3fit)のタイツは、軽くて通気性のある「インパクトエアシリーズ」などがおすすめです。

ランニングにおすすめのブラ


山にもランにも使えるサポートタイツ。足あげが格段に楽になります

 

自宅ではヨガとストレッチを。呼吸を意識できるようになり、体幹を鍛えられた

自宅では、朝ヨガや就寝前のストレッチなどにも取り組んでいます。眠くてだるい朝でも集中してヨガのポーズをとることで、気持ちが清々しくなります。ヨガは自分の呼吸に集中し、体幹を鍛えるスポーツなので、登山のトレーニングに最適だと思って昨年始めました。

ヨガを始めてから、次第に山の歩き方が丁寧になり、バテずに長く歩くことができるようになったと感じます。普段の生活では、呼吸に集中するということはあまりないと思います。登山においては、急登が連続する場所では息切れを起こし、危険な岩場では集中するあまり息をするのを忘れていたなんてこともありました。ヨガで意識的に呼吸を行う習慣をつけることで、登る力が格段に上がると思います。

おとな女子登山部では山ヨガツアーも人気です。自然との一体感を味わえるこちらのツアー、今年は新型コロナウイルスの影響で次回の開催は未定ですが、催行の暁にはぜひ多くの方に体験していただきたいです。

2019年、弘法山で開催した山ヨガツアー

 

天気の勉強、地図読み、ロープワーク、ツエルト立て・・・。登山のスキルアップのために!

自宅でできることは他にもあります。例えば天気の勉強です。

ネットの天気予報が手軽ですから、私もそればかりに頼ってしまうことがありました。予報がA(晴れ)だからではなく、天気図などを見て、根拠のある予想を立てるようになりたいものです。

山の天気と言えば気象予報士の猪熊隆之さんの『山岳気象大全』が有名です。本棚に「飾ってあった」のを今回改めて読み直してみました。カラー写真が付いていて親しみやすい上に、山域ごとの地形の特徴なども記されています。例えば『軽井沢から佐久平へ抜けると劇的に天気が変化し青空が…』などと書いてあれば、「確かにそうだ」と納得しながら読み進めることができます。

天気と同様、登山で重要になってくるのが地図読みです。

便利なスマホアプリで済ませてしまい、コンパスを使わずに登ってしまうということもありました。山に行けないのに読図なんて無理!? そんなことはないと思います。

地上にいてもコンパスの使い方のおさらいはできます。ただ家の中にいてはイメージしにくいので、許される範囲内で外へ出て、ビルが乱立していない、できれば公園など見通しのある程度きく場所へ出れば、コンパスを使ったトレーニングも十分可能です。

磁北線入りの地形図をプリントアウトし、コンパスを持ったらいざ屋外へ。例えば公園から最寄りの神社などを目的地とします。実際に山の中にいるようにコンパスをあてがい、進むべき方向を導き出します。

時間はどれくらいかかるかということも地形図があれば判断できます。ここで大事になのは“自分は今、山の中にいる”と意識すること。「迷い人」と勘違いされても気にしないことです。

山の中では地図にない道が出てきたり、視界が悪かったり・・・。想定通りに進まないことが多くあります。それ以前に、登山口で進むべき方向がわからず、地図を見ながらオロオロしている登山者もよく見かけます。私もそんな登山者のひとりでした。しかしさきほど書いたような小さな訓練を日ごろから経験しておけば、このような失敗を回避することもできるでしょう。それだけでも大きな成果だと思います。

その他にも、豊富な動画を参考に、ロープワークを練習したり、ツエルトを立ててみたり、なんてこともできます。実際自宅にベランダや庭がある人は、そのまま一晩過ごしてみるなんてことも面白いと思います。

私も初めてテントやツエルトを購入した時は自宅の庭で一晩明かしました(もしかしたら近所の人に白い目で見られていたかもしれません)。この自粛期間中に、実際にベランダにツエルトを張って寝たスタッフもいました(集合住宅の場合は近隣の住民の方のへの配慮もお忘れなく)。

家で事前練習をしておけば心に余裕が生まれ、余計な心配事が減って登山に集中することができます。これは立派なリスク回避といえるのではないでしょうか。

初めてのツエルト泊。寝心地は思ったより良かったです

 

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今後、登山がどのような形態に変わっていくのかわかりません。焦りや不安で挫けそうな時もありますが、安全に楽しく登山できる日がいつやってきても良いように、私は、今、自分ができることを前向きに取り組んでいきたいと思っています。

プロフィール

るんちゃんさん(好日山荘おとな女子登山部)

新潟の自然豊かな田舎で育つ。20代後半の時、観光ポスターを見て秋の千畳敷に出かけ、山と出会う。以後、アルプスの山々に憧れて、山登りを始める。標高を問わず、長距離を歩く縦走登山が好き。最近のお気に入りは飯豊、朝日など渋めの山域。転勤してからは奥多摩に興味津々。現在、銀座店勤務。
⇒おとな女子登山部メンバーはこちら

銀座 好日山荘

日帰りハイキングから長期縦走、クライミング、雪山登山、沢登りまでさまざまな登山スタイルに対応する品揃えを誇る登山用品店。同じビルにはクライミングジム「グラビティリサーチ」が併設されており、ロープワーク講習や岩稜帯の歩き方など、さらなるステップアップを目指す登山者に向けてさまざまな講習会を開催中。

所在地/東京都中央区銀座6-6-1 銀座風月堂ビルB1・B2
TEL/ 03-6228-5018アクセス/銀座駅B7、B9出口より徒歩2分。有楽町駅南口より徒歩5分。
営業時間/月~金 12:00~21:00 土日祝 11:00~20:00
※コロナ禍で営業時間が変更になる場合があります
http://www.kojitusanso.jp/shop/kanto/ginza/

好日山荘おとな女子登山部 リレー連載

登山用品専門店の好日山荘で、2013年より女性スタッフ有志により立ち上がった「おとな女子登山部」。 「自分たちが山を真剣に楽しみ、次の山に挑戦すること」「お客様にもっと山を好きになってもらうこと」を目標に、ブログでの発信や登山イベントなどを行っている。 その活動の様子と女子目線での登山感を伝えていく。

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