子どもといつかは○○山に登りたい! 親子登山にはどんなトレーニングが必要?
はじめての親子登山に疑問はつきもの。子どもの野外体験や野外教育を手がけるアウトドアプロデューサーの長谷部雅一さんが、子どもと山に登る楽しみや成功のヒントを紹介します。

子どもにとっての“山トレ”は日々の自然の中での活動が大切
「子どもと一緒に○○山に登りたい!」そんな目標を持つ山好きの保護者の方は多いですよね? 講習会などでも、「目指す山に向けてどんなトレーニングが必要なのか?」といった質問をよく受けます。
技術的な山に登る場合は、当然技術トレーニングが必要ですが、大人が子どもと一緒に登りたい山の多くは、技術よりも、長距離や高低差の大きさがポイントになる場合が多いです。そのような山に登れるようになるためには、「とにかくたくさん山に登る」といった方向になりがちですが、前にお伝えしたとおり、子どもにとって決して楽しい時間というわけではない場合があります。
この連載でも紹介をした「登頂しない山登り」「子どもの好きな動作や行動」「子どもと山で遊ぶ秘密兵器」といった方法を実践しながら山で遊ぶ事で、子どもと一緒に山に登るために必要なトレーニングをいつのまにか積み重ねることができます。
でも、「うちの子はまだ○○山に入るのはとっても不安」「まだ山を好きになってもらえていない」という方もいるはず。そんな方達にとって大切なトレーニング方法は、「自然の中で長時間遊ぶ」ことと「いろいろな自然、内容で遊ぶ」ことです。これがいつかの山への基礎になってくれます。今回はそのようなトレーニング方法を紹介します。
自然の中で長時間遊ぶ

大人も子どもも、慣れていない方は自然の中で過ごすだけでとても疲れてしまいます。そういった方達にとって、継続的に自然の中を歩く、登るというのは体力的にも大変です…。でも安心してください!
僕の経験上、例えば幼児でも1日の中で自然の中で過ごす時間が長ければ長いほど山登りをする身体ができてくる傾向があります。
とあるこども園では、春から少しずつ自然の中で遊ぶ時間をつくっていき、最終的にはお弁当の時間を挟んで帰るギリギリまで活動をします。その後、秋に筑波山に挑戦するとどんな性格やタイプの子どもでも無事に登頂することができます。
つまり、自然の中でたくさん遊べば遊ぶほどそれが山のトレーニングになるわけです。
色々な自然、内容で遊ぶ

遊ぶ時間の長さの他に、いろいろな自然、内容で遊ぶことも大切です。単純に標高が低く難易度が低い山から少しずつ標高や難易度を上げて登山を続けるのもひとつの方法ですが、子どもによってはこんなに辛い“修行”はありません。また、それだけだと、気付かないうちに「山を登るのは楽しくない」ということになってしまうことも…。
重要なのは、色々な自然の中でたくさん遊ぶことです。内容はどんな事でも構いません。子どもと一緒に楽しめる遊びをたくさんしていきましょう。そうすることで、いろいろな経験を積み重ねることで山に必要な体力やボディーバランス、そして何よりも“自然の中に行くことは楽しい”と子どもに思ってもらうことができます。また、山好きな大人も違った視点で山を楽しめる様になるのでおすすめです。
特に僕が効果があり、そしておすすめの楽しい自然遊びを紹介しますので参考にしてみてください。
1:公園遊び


30分から終日など、時間の調整がしやすいご近所の公園遊びです。特に幼児期の子どもには最適で、子どもが思うがままに、生き物探しや木登り、水辺遊びを楽しみましょう。公園遊びになれてきたら、時にはお弁当を持っていってランチをするなど、少しずつ時間を延ばしていくのがおすすめです。この遊びの積み重ねがいつの間にか山を楽しめる、そして登れるトレーニングになってくれます。
2:キャンプ

体力があっても無くても、自然の中でたくさんの時間を過ごせるのがキャンプです。テント泊が心配な方は、ロッジなどに宿泊しても構いません。キャンプ場内の散歩、食事、焚火など、寝る直前まで自然の中で過ごせるので、最高のトレーニングになります。また、キャンプは目的もやることも自由なので、家族で自然の中で過ごす事の楽しさを実感できると思います。
3:水遊び


山、山、山、山・・・と、陸上ばかり大人に連れて行かれても子どもによっては飽きてしまうかもしれません。そんな時は、水遊びがおすすめです。水生生物を探すのも面白いですが、特に最近人気のSUP(スタンドアップパドル)や、ライフジャケットを着て川に流されてみるのも面白いです。永遠に遊びたくなるシチュエーションは、いつの間にか子どもも大人も山登りのトレーニングができてしまいます。
4:ロッククライミング・ボルダリング

同じ山でも趣向が違うロッククライミングやボルダリングは、時間を忘れて楽しめる自然遊びのひとつです。見た目や想像からだとどうしてもやろうとは思えないジャンルでもありますが、挑戦感や、冒険感、ちょっと怖い感覚は、山遊びの中でこれほど時間を忘れて楽しめる自然遊びはありません。いつもはなんでもできる大人よりも子どもの方がすいすいと登っていってしまうシーンもあったりと、きっと「自然の中で遊ぶのは楽しい!」と思ってもらえると思います。自然の中で遊ぶのが楽しい=きっと山登りも楽しい!に繋がってくれるでしょう。
紹介したのはあくまでも個人的におすすめの自然遊びです。子どもの性格や好みに合わせていろいろなアプローチを考えてみてください。
色々な自然の中で遊ぶことの注意点
遊びの中には、知識や技術が必要なものもあると思います。大人が正しい知識や技術を持っていれば完璧ですが、その辺は気にしなくても大丈夫です。キャンプもキャンプ場によってはやさしく指導してくれるところがありますし、水遊びもクライミングも体験教室がたくさんあります。これらを活用していろいろな体験を通して自然の中で過ごす時間を増やしていきましょう。
自然の中で遊ぶだけでトレーニングになるって素敵だと思いませんか? 山好きの大人も他ジャンルの体験をして、より山が好きになれると思います。是非チャレンジしてみてください。
「夏休みは子どもと山に行こう!」オンライン講習会のアーカイブを公開中!
プロフィール
長谷部雅一
アウトドア・プロデューサー。アウトドア系プロジェクトの企画・コーディネート・運営のほか、幼稚園や保育園のコンサルタント業務も行なう。『アウトドアファブリック大全』(グラフィック社)、『自然あそびで子どもの非認知能力が育つ』(東洋館出版社)、『ネイチャーエデュケーション』(みくに出版)など著書多数。
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はじめての親子登山のヒント
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