「足底内在筋」〜地面を感じ取るセンサー|やさしい筋トレ for登山(2)/登山力レベルアップ講座

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『登山力レベルアップ講座』は、豪華講師陣から知識や技術を教わって、登山に役立つさまざまな力を「レベルアップ」できる4講座です。『やさしい筋トレfor登山』では、登山で重要な役目を果たしている筋肉の仕組みを解説し、おうちで簡単にできる筋トレやストレッチを紹介します。今回は足裏の筋肉群・足底内在筋です。

文=芳須 勲、写真=中村英史
イラスト=平のゆきこ

 

足の裏の筋肉群は、小さいけれどとても重要な存在。しくみを知り、鍛えることで安定した歩行が実現しますよ。

 

足底内在筋の構造とはたらき

片足28個の骨をつなぐ「縁の下の力持ち」

足首から下の足部には両足合わせて56個、全身の約1/4の骨が存在する。それらをつなぐ短母趾屈筋、短小趾屈筋、母趾内転筋、母趾外転筋、小趾外転筋、小趾対立筋、虫様筋、足底方形筋、底側骨間筋などの足部に存在する筋肉をまとめて足底内在筋(足部内在筋)と呼び、足部のアライメント(正常な骨の配置)に大きく貢献している。また、腱によって足部とつながる外在筋(ふくらはぎやすねの筋肉)とともに、足の指を複雑に動かす。

 

足底内在筋の山でのはたらき

片足立ちでもしっかり“三点支持”

足底内在筋により足部のアライメントが整うことで、母趾球、小趾球、かかとの3点をつなぐアーチ構造(下図参照)が保たれる。これによって、片足立ちでも足裏で「三点支持」している状態になり、バランス感覚の向上につながる。また、外反母趾や内反小趾の予防、土ふまずがつぶれる偏平足や、足の横幅が広がる開帳足の改善にも効果があるので、登山中の疲労や痛みを防ぐことが期待できる。

「メカノレセプター」のはたらきとは?

足裏の皮膚には、地面の凹凸や傾斜を瞬時に判断する感覚受容体(メカノレセプター)が存在する。足底内在筋が弱くアーチ構造が崩れていると、足裏の皮膚に偏った圧力がかかり、角質硬化でタコやウオノメができてしまう。これは足裏感覚を鈍らせ、転倒リスクを高める。

 

足底内在筋を鍛える足指ジャンケン

足底内在筋をまんべんなく動かすことで筋力の偏りをなくし、アーチ構造をつくる。足指が上手に動かせない人は、下の足裏マッサージから始めてみよう。

①グー

足指をすべて足裏側に曲げて、グーの形にする。指先だけでなく、指の付け根の関節からしっかり曲げることを意識しよう。

②チョキ

親指以外はグーの状態を保ったまま、親指だけを足の甲側に持ち上げる。ほかの指はできるだけ足裏側へ曲げた状態をキープしよう。

③逆チョキ

チョキとは逆に、親指以外の4本の指を持ち上げ、親指だけを足裏側へ曲げたのが逆チョキ。親指とほかの指をできるだけ離す。

④パー

すべての指の間を大きく開き、パーをつくる。指は足の甲側や裏側へ前後に動かすのではなく、扇を開くように左右に広げる。

 

足底内在筋をほぐす、足裏マッサージ

角質硬化の予防には保湿が有効。足部を清潔に保ちオイルマッサージをすれば、足底内在筋をほぐすとともに、保湿してメカノレセプターを活性化させる効果もある。

足裏全体にマッサージオイルをつけ、心地よい力加減でもみほぐす。土踏まず周辺には足底腱膜という強靭な腱の膜が存在し、地面からの衝撃を減らすバネの役割を果たす。ここを刺激して痛みを感じる場合は休息が必要だ。

足の指と手の指を交互に組み、足首を回す。足の指が開かず、足と手の指の付け根までしっかりと組めない場合、すでに足関節のアライメントが崩れている可能性が高いので、毎日少しずつほぐして広げていこう。

パワーアップコラム

骨と筋肉

人体は骨によって支えられているが、その骨は筋肉によって支えられ、アライメントを保っている。筋肉のこわばりや筋力低下によってアライメントが崩れ、姿勢が悪くなっている状態では、正しいフォームで歩いているつもりでも体に大きな負担がかかる。定期的に筋トレやストレッチを行ない、筋肉を整えることで姿勢を矯正し、安定したフォームを身につければ、疲労を軽減させてケガを予防することができるだろう。

山と溪谷2022年5月号より転載)

 

 

プロフィール

芳須 勲さん(登山ガイド、健康運動指導士)

よしず・いさお/いきいき登山ガイド・ヤッホー!!さん。として活動。管理栄養士の資格も持つ。「登山で健康づくり」をモットーに運動・食事指導・山の安全管理を柱とした登山プログラムを提案している。

登山力レベルアップ講座

『登山力レベルアップ講座』は、豪華講師陣から知識や技術を教わって、登山に役立つさまざまな力を「レベルアップ」できる4講座です。 興味がある講座を選んでも、まとめて全部受講してもOK。さあ、楽しく学んでいきましょう!

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