「大臀筋」〜登りのメインエンジン|やさしい筋トレ for登山(1)/登山力レベルアップ講座

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『登山力レベルアップ講座』は、豪華講師陣から知識や技術を教わって、登山に役立つさまざまな力を「レベルアップ」できる4講座です。『やさしい筋トレfor登山』では、登山で重要な役目を果たしている筋肉の仕組みを解説し、おうちで簡単にできる筋トレやストレッチを紹介します。初回は人体で最も体積が大きいお尻の筋肉・大臀筋です。

文=芳須 勲、写真=中村英史
イラスト=平のゆきこ

 

登山中に、お尻の筋肉を意識したことがある人は少ないのでは?実はとても重要な役割を果たしているのです。

 

大臀筋の構造とはたらき

姿勢保持や歩行に欠かせないお尻の筋肉

骨盤(腸骨稜の後ろ側と仙腸関節の周辺)からはじまり、上部は腸脛靭帯へとつながる。下部は太ももの骨(大腿骨上部)の後ろ側へとつながり、骨盤の安定、姿勢の維持にも大きく貢献している。

主に片足立ちの状態で太ももを後ろに向かって振る動作(股関節の伸展)において筋力を発揮するため、歩行やランニングの推進力として働く。単一の筋肉としては人体で最も体積が大きく、強い筋力と持久力を兼ね備えている。

 

大臀筋の山でのはたらき

力強い登りの推進力を生む大きな筋肉

股関節の伸展は、登山において体を上に押し上げる力となり、登りの推進力を生み出している。登りで太ももの筋肉が疲れやすい人は、膝の関節を伸ばすことに意識が向いている場合が多いので、股関節を伸ばすことを意識し、大臀筋をしっかりと稼働させることが重要となる。

また、大臀筋の柔軟性が低下すると、太ももを上げるときに抵抗になってしまい、登山中に脚が上がらない原因となる。

膝の関節を安定させ、痛みを予防

大臀筋は股関節の外旋(太ももを外側に回す動き)にも関与している。これによって、ニーイン・トゥーアウト(登りで膝を伸ばすときに、膝の向きがつま先に対して内側に向いてしまうこと)や内股を防ぎ、膝の関節を安定させる。大臀筋を使って山に登ることは、膝の関節痛予防につながるのだ。

 

大臀筋を鍛えるヒップエクステンション

このエクササイズの目的は、筋力アップではなく筋肉を意識すること。お尻の筋肉を意識して使うことができれば、太ももの疲労を防げる。

片手で椅子などにつかまりながら、やや前傾に立ち、つかまっている手と反対側のかかとを上げ、膝を軽く曲げる。

お尻の筋肉を触りながら、ゆっくりと脚を後ろに引いて戻す。お尻の筋肉が収縮し、硬くなることを意識しながら、片足10回、左右2~3セットずつ、毎日行なう。

 

大臀筋をほぐす、お尻のストレッチ

こわばった大臀筋をほぐすとともに、柔軟性を高めるエクササイズ。スムーズに膝が上げられるようになるので、疲労軽減につながる。

両脚を伸ばして仰向けに寝た状態から片方の膝を曲げて胸に近づけ、両手で抱える。呼吸を楽にしながら20秒間この姿勢をキープ。左右2~3回ずつ、毎日行なう。

パワーアップコラム

登山と筋肉

筋肉は単にエンジンとして働くだけではなく、ブレーキやサスペンションといったさまざまな体の動きを担っている。また、関節を安定させて姿勢を維持する役割、寒冷地で体温を上昇させる役割、血液を心臓に押し戻すポンプの役割、水分やエネルギー源となるグリコーゲンを蓄える役割など、登山のさまざまな状況で筋肉が貢献している。筋肉について知れば、疲労を軽減させ、ケガを予防することができるだろう。

山と溪谷2022年4月号より転載)

 

 

プロフィール

芳須 勲さん(登山ガイド、健康運動指導士)

よしず・いさお/いきいき登山ガイド・ヤッホー!!さん。として活動。管理栄養士の資格も持つ。「登山で健康づくり」をモットーに運動・食事指導・山の安全管理を柱とした登山プログラムを提案している。

登山力レベルアップ講座

『登山力レベルアップ講座』は、豪華講師陣から知識や技術を教わって、登山に役立つさまざまな力を「レベルアップ」できる4講座です。 興味がある講座を選んでも、まとめて全部受講してもOK。さあ、楽しく学んでいきましょう!

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