花好き登山者に聞く!好きな山の花1位は? 憧れの花の山は? 花を楽しむヒントも紹介

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山と溪谷オンラインでは2023年4月に、山に咲く花、「花の百名山」に関するアンケートを実施した。この記事では、アンケートの回答から、花好きの登山者たちによる花を楽しむヒントや、エピソード、人気の花の山を紹介する。

メイン写真=写真投稿企画2023春「山の花」投稿作品

花の百名山に関する質問

花の百名山については、知っていると答えた人が84%、中でも本を読んだことがある人は39%だった。一方で、意識して登っていると答えた人は24%だった。実際に登った数は30山程度という人が多かったが、なかにはあと一歩で100山という人も。

花の季節が限定される花の百名山、加えて刊行当時と花事情も異なる、となると、なかなか百名山のようにコンプリートしようという猛者は多くないのかもしれない…

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印象に残っている花の百名山はどこですか?

1位 白山……18票     
2位 白馬岳……16票     
3位 至仏山……14票     
4位 早池峰山……12票

5位以下 
鳥海山……9票  
高尾山……8票  
大雪山……8票  
利尻山……7票

お花畑で有名な山、固有種が有名な山が上位に。

花の山のエピソード

「印象に残った花の百名山や、花に関する山行のエピソードからピックアップ。お花畑に感動した話や、大切な人との思い出、どうしても見たい花を見に行ったど根性エピソードなどさまざまなエピソードが寄せられた。

白山

「初めて登ったときから、花の多さに驚く。  6月から10月の間に何度も登ると、その度咲いている花が変わってきて、季節の移り変わりを感じる。  また、別山や三ノ峰方面から登るとまた違った植生に出会えて楽しい」(ナンシーさん/50代)

「観光新道は最初は急登で頑張って登るが、その後開けたところが本当にお花畑で、いろんなお花が咲いていて、ザ花の百名山!というのを感じる素敵な山だと再認識するいい場所です」(umicoさん/40代)

花いっぱいの観光新道(やまころさんの登山記録より)

白馬岳

「まさに百花繚乱で言葉にならないくらいの美しさでした。  何度も登っていますが、夏の白馬三山ツアー登山に参加した際、高山植物に詳しい方がいて、  夜の懇親会の時、皆で見た花の名前を書き留めていったら、190種くらいになりました。  白馬岳は300種近くあるのでしょうか。ツアーもとても楽しかったのですが、  花の多さに感激して、これからも何度でも登りたいって思いました。 (lobeliaさん/60代)

「何度も登っているが初夏から晩秋まで花がたくさん咲いている。同じ花でも残雪で違う時期に見られたりする。たくさん花の百名山を歩いたけれど、こんなに花に溢れた山はない。展望も素晴らしい。登りやすい。  白山や朝日岳も素晴らしいけれど展望で一つ抜きん出てる」(さかちゃんさん/40代)

「父母が続けて癌の自宅療養をしていて、心身ともに大変で、二人が亡くなった後、燃え尽き症候群のようになってしまいました。何かしなくてはと思い、初めての縦走に白馬岳を選びました。9月だったので高山植物には特に期待はしていなかったのですが、白馬岳から雪倉岳、朝日岳は山一面が花畑で、小さいころ大好きだった小人といもむしの絵本の世界そのままでした。登山が大好きだった父母を連れてきてあげたかったという思いが残りましたが、私はすっかり元気を取り戻し、今も楽しく山に登っています。この初めての縦走の花畑が私の山好きの原点だと思っています」(女将さん/50代)

白馬岳テント場のお花畑(いずみやまさんの登山記録より)

至仏山

「鳩待峠から登ったためアップダウンもそこまでなく、気分が良いまま登山を続けていたところで一気に視界全体にワタスゲの大群落が広がりました。まるで雲の中にいるようで居心地良かったのを覚えています」(ジューシーボールさん/30代)

早池峰山

「ハヤチネウスユキソウをはじめ、沢山の固有種が見られる素敵な山です。個人では行きにくくツアーに参加しました。予想より沢山の花々に感動の連続!今はまだ通行止めの河原の坊ルートから登ったのは今となっては良い思い出です」(やまかぜかおるさん/60代)

「ハヤチネウスユキソウの咲いている時期で小さいかわいい花を見ることが出来ました。登っているときは、花なんてありそうもないので、見ることができるかなあと不安な気持ちだったので、出会えたときは本当に感動でした。そして、あのふわふわ感がとっても好きになりました」(きらきらきらきらさん/50代)

ハヤチネウスユキソウ(shiroさんの登山記録より)

大雪山

「9月半ばで、紅葉が始まった景色を楽しむために銀泉台から赤岳に登ったときのことです。始めは期待通りの紅葉に染まった景色と、ちらほらと残るお花を楽しんでいたのですが、奥の平付近までくると雪が残っておりその周辺にチングルマやミヤマキンバイ、アオノツガザクラ、ミヤマリンドウなどがたくさん残っていて、雪・花・紅葉が全て入った珍しい景色を見ることができたことがとても印象に残っています」(みつまめさん/40代)

礼文岳

「佐渡へ行くまでは、私の花登山ダントツのNo.1。フツーのスニーカーでも歩き回れてしまう場所でこれほど豊かに花たちが咲き誇るところは本州にはないのではないか」(mtheichanさん/60代)

夕張岳

「雨の中でユウバリソウを見るためだけに夕張岳に登り、景色も全く見えずずぶ濡れになって帰ってきたがユウバリソウその他固有種を見られて満足だった」(あきらさん/30代)

鳥海山

「花図鑑でチョウカイフスマに出逢ってから毎年鳥海山に通いましたが、天気大荒れで断念すること2年余、5度目の正直でやっと天候に恵まれ、念願のチョウカイフスマに謁見したときの感動は、数年経過した今も忘れ得がたい幸甚として、心と瞳の奥に深く深く刻まれています」(たわしさん/40代)

チョウカイフスマ(スーさんさんの登山記録より)

金峰山

「 20歳の時からから10年間一緒に登山をしてきた親友が、結婚するため日本を離れる際、最後に2人で登った山です。金峰小屋に宿泊してご来光を拝み、岩場や高地の植物を楽しみつつ、一瞬一瞬を忘れないように噛み締めながら歩きました」(ふみふみさん/30代)

高尾山

「高尾山こそ年に何回も季節ごとに訪れたい場所。毎回、新しい発見があって飽きません。それでも花の数が多すぎて、未だ見てない花のたくさん。楽しみがつきない山です」(ルミコさん/60代)

鹿島槍ヶ岳

「後立山連峰、鹿島槍というと、死亡事故の多い魔の山というイメージだったが、夏山は危ない箇所もほとんどなく、思ったよりも緩やかで優美な山で、お花畑の素晴らしさに圧倒された。柏原新道、種池、爺ヶ岳、冷池、鹿島槍南峰、北峰。場所によって咲いている花も違い、いったい何種類の花を見たのか数え切れないほどで、まさに花の山という感じだった」(ケロケロさんさん/50代)

九重山

「先妻を乳がんで2006年に亡くした。山を愛した女性だった。特に花が好きでワレモコウやマツムシソウ、ミヤマキリシマを求めて久住にテント泊を繰り返した。カタクリやササユリ、リンドウを探して訪れた山は数知れない。夫婦で400回に及ぶ登山をしてきたがやはり九州人としては久住、そして屋久島は忘れられない花の名山だ」(ヒデチンさん/70代)

花にまつわるエピソード

キツネノカミソリ

「キツネノカミソリを初めて見に登った単独行、案内してくれた地元の山岳会の方々3名。  花の群生場所まで案内して下さった御礼を述べ、そこからは一人で撮影したかったのでお別れを言うと、奇妙な態度で下山されました。怖がっているという雰囲気。たっぷり撮影して暗くなる寸前で下山し、山の管理事務所で話を聞くと、「幽霊がでた!」とのこと…。人間と思われてなかったようです」(みやごんさん/60代)

イワカガミ

「奥多摩の御嶽山からの降りで『イワカガミ』と地図に書かれているのを見て、それが花の名前と知らず、谷を隔てた対岸の山に大きな一枚岩の様なものが見えた時に「あれがイワカガミという岩ではないか?」と大騒ぎしていました。周りの人はきっと笑っていた事でしょう、後年、花の名前と知って赤面でした」(みねぽんさん/60代)

ハクサンイチゲ

「北岳のどこまでも広がる一面のお花畑は圧巻、けれどキタダケソウをずっと探しながら歩いたがなかなか見つけられず、途中で行き合った女性が『イチゲさんばかりよねー』と、そのはんなりしたイントネーションと、さん付けで呼ぶところがとても新鮮に感じてよい思い出になっています」(hanamaruyamaさん/40代)

北岳のお花畑の「イチゲさん」ことハクサンイチゲ(道遥かさんの登山記録より)

 

写真投稿企画2023春「山の花」開催中!(2023年6月14日締切)

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この記事に登場する山

山梨県 / 赤石山脈北部

北岳 標高 3,193m

 日本で富士山に次いで高い山は白峰の北岳である。白峰は通称白峰三山と称し、3000mを抜く山5座が、南アルプスの北部に連なっている。すなわち北岳(3192m)、中白峰(3055m)、間ノ岳(3189m)、西農鳥岳(3050m)、農鳥岳(3026m)である。  この連山の最北にある故、北岳。当を得た山名である。古くは『平家物語』に「手越を過ぎて行きければ、北に遠ざかりて、雪白き山あり。問へば甲斐の白根と云ふ」と出ているが、果たして東海道筋から見えたであろうか。時代は下がり、『甲斐国志』(文化11年―1814年編)によれば「白峰、此山本州第一ノ高山ニシテ西方ノ鎮タリ。国風ニ詠スル所ノ、甲斐ヶ根コレニシテ(中略)南北ニ連ナリテ三峰アリ。其北方最モ高キモノヲ指シテ、今専ラ白峰ト稱ス」と記している。  同書によれば、「山上ニ日ノ神ヲ祀ル。其像黄金ヲ以テ鋳ル。長七寸許、容ルニ銅室ヲ以テス。高貳尺貳寸廣方八寸、其四隅ニ鈴ヲ掛ク、風吹ケハ声アリ」と大日如来を祭ってあることを載せている。明治41年7月、この頂に立った小島烏水は「奉納大日如来寛政七年乙卯六月(1794年)」と彫られた小鉄板のあったことを記録している。となれば『甲斐国志』の記事も本当かも知れない。  明治4年、地元、芦安村の行者、名取直江が里宮、中宮、奥宮を造営して開山したという。  登山者として最初にこの頂を踏んだのはウエストンで、明治35年8月23日のことであった。積雪期の初登頂は大正14年3月22日、京都三高山岳部のメンバーで、西堀栄三郎、桑原武夫、多田政忠、四手井綱彦の4人。野呂川両俣から右俣に入り、間ノ岳を経て頂上に立った。次いで3月28日、山梨の平賀文男が広河原から第2登を飾った。  最近は交通の便がよくなり、おそらく南アルプスの山の中で、一番人気のある山ではないだろうか。登山基地の広河原まで車で入れば、1泊2日でゆっくりと往復でき、雪渓あり、お花畑あり、しかも展望絶佳ときている。  展望は南、眼前にどっかと腰をすえた間ノ岳、これに重なり合うは、塩見岳や悪沢岳。南東の櫛形山の上に富士山、東側には鳳凰三山の上に奥秩父。その左には八ヶ岳、甲斐駒ヶ岳。遠く白馬三山から槍・穂高、その左にずんぐりと仙丈ヶ岳、御岳山、中央アルプスが堪能できる。  登山コースは広河原から大樺沢二俣、小太郎尾根経由で6時間、同じく二俣から八本歯のコル経由で5時間強の登りで登頂可能。

岩手県 / 北上高地

早池峰山 標高 1,917m

 北上山地の主峰、早池峰山は、『遠野物語』で柳田國男が「恰かも、かたかなのへの字に似たり」と表現したが、彼の足跡から推察しても、おそらく薬師岳の西稜と早池峰山の西稜とがオーバーラップしていることによるものと思われる。また詩人の宮沢賢治も好んで登り、作品に登場させている。それよりも、ロシア人、マキシモビッチ、須川長之助などの植物や高山蝶などの生物学方面で紹介され、古くから魅力的な山であった。  さらに古来から、拝峠という地名もあるように、女人禁制の山岳修験の山で、常民にとっては水分(みまくり)神の山で、旱(ひでり)のない豊饒の山でもあった。  南北250kmの北上山地を分断するクサビのように、古生代に貫入した蛇紋岩が浸食を受けたカンラン岩の残丘で、中岳南西緩斜面には、周氷河現象の線条痕も見られる。また、その高山植物帯は国定公園特別天然記念物に指定されるほど種類が多い。  この山の固有種の開花時期は6~8月で、梅雨期の7月下旬が好適。ナンブトウウチソウ、ナンブトウノオ、ヒメコザクラ、ミヤマヤマブキショウマ、ナンブイヌナズナ、この山の象徴のハヤチネウスユキソウ、早池峰山を分布上の南限とするナンブソモソモ、サマニヨモギ、チシマコザクラ、ナガバキタアザミなどがある。  なお久出内地区(つきせないちく)に大規模なダムが造られるので、その後の生態系の変化が心配される。  コースは大迫(おおはさま)側が一般的で、河原坊から3時間、小田越から2時間で山頂に立てる。さらに山頂から鶏頭山経由七折滝コースは5時間で下れる。また平津戸駅から高桧山へ4時間、さらに早池峰山山頂へ7時間のコースもある。  大迫側登山口には河原坊にキャンプ場があり、岳集落の民宿もよい。岳集落には早池峰神社がある。早池峰山山頂に奥宮を祭り、祭神は姫大神とされていたが、いつのころからか瀬織津姫神を主神とするようになった。早池峰神社の例祭には、重要無形文化財の早池峰神楽が奉納される。  一等三角点の山頂からは、岩手山を盟主として連なる奥羽山脈の山々、東方には三陸の海、そして北上山地の山並みなど360度の展望が楽しめる。  その昔、享保4年(1719)、幕府からの調査で、藩侯南部利幹(32代)の命を受け、一方井九郎右衛門、江刺家兵左衛門の両人が、早池峰山山頂から晴れた日に山座同定したところ、藩内のほか、遠く北は松前・絵山ヶ岳、津軽、羽州、伊達、南は常陸・筑波山の21座が見えた、と報告したという、眺望の一等地である。

北海道 / 礼文・利尻

礼文岳 標高 490m

北海道・稚内の西側に浮かぶ礼文島は、稚内市の西方60kmの日本海に位置する、最北の離島だ。その礼文島の最高峰の山が礼文岳だ。東南に浮かぶ利尻島と共に、登山者には人気の高い風光明媚な島として知られる。 高山植物の宝庫として知られ、固有種も数多い。とくに6月~7月は、約300種の高山植物が咲き乱れる。 島内にはさまざまなハイキングコースが整備されている。礼文岳に登る場合は、東海岸の内路から往復する。 アクセスは稚内からフェリーに乗り、1時間55分。

山を歩く、花を楽しむ

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