百害あって一利なし!「肥満」に潜む登山のリスクとは?

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体と心を元気にしてくれる登山。一日でも長く、元気に山に登りたい——そう考えている中高年登山者は多いことだろう。末永く登山を続けるためには、日ごろの体力づくりが不可欠だが、60代後半以降も登山を続けられる人は実は少ない。ヤマケイ新書『院長が教える 一生登れる体をつくる食事術』から、著者の齋藤繁さん(群馬大学医学部附属病院病院長)のアドバイスを紹介しよう。

文=齋藤 繁、写真=PIXTA

肥満を予防・解消するために

肥満を予防・解消する方法はただひとつ、摂取カロリーをコントロールすることしかありません。もしBMIが肥満に該当したら、摂取カロリーが消費カロリーを上回らないように少しずつ減らしていく必要があります。もちろん、運動をして消費カロリーを増やすことも重要ですが、その場合も摂取カロリーが上回ってしまったら、せっかくの運動がまったく無意味なことになってしまうでしょう。肥満を予防する場合も、またしかりです。

少しずつというのは、いきなり極端に減らしてしまうと体が動かなくなってしまうから。肥満の人は、重たい体を動かさなくてはならないため、正常な体形の人より多くのエネルギーを要します。太っている人がたくさん食べるのは、いわば当たり前の話。それゆえ、運動量を増やすためのエネルギーを維持しつつ、少しずつ減らしていく必要があるのです。

それに、体重は一夜にして減らせるものではなく、減ったとしても意味がありません。ボクサーや柔道選手が試合前の計量に向けて体重を急激に減らすことがありますが、あれは体に蓄えている水分を極限まで絞るため。よく雑誌のダイエット特集などで「3日間でこんなに痩せる!」といった謳い文句を目にしますが、こちらも同様の手法です。体内の水分は出入りが激しいため、その原理を利用すれば誰でも一時的に体重を落とすことはできるのですが、元の生活に戻れば体重もたちまち元どおりになります(これがいわゆるリバウンドです)。

ヤマケイ新書『院長が教える 一生登れる体をつくる食事術』

ヤマケイ新書『院長が教える 一生登れる体をつくる食事術』

あなたの食事が、あなたの登山を変える!
本書の著者は群馬大学医学部付属病院の院長にしてヒマラヤ登山の経験もある登山家。「何歳になっても元気に登りたい」という思いを抱いている人へ、医学的に正しい食事術を紹介します。

齋藤 繁
発行 山と溪谷社
価格 1,100円(税込)
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プロフィール

齋藤 繁(さいとう・しげる)

1961年、群馬県高崎市生まれ。群馬大学医学部附属病院病院長、群馬大学大学院医学系研究科麻酔神経科学分野教授、医学博士。大学生時代にワンダーフォーゲル部に所属し、国内各地で登山に励む。1992年、日本ヒマラヤ協会クラウン峰登山隊に参加し、高所登山に関する医学研究に取り組む。その後、山岳イベントの医療支援活動や一般登山者の健康管理に関する啓蒙活動などを行なっている。所属山岳団体は、群馬県山岳連盟、日本山岳会、日本ヒマラヤ協会、日本登山医学会など。

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特別インタビューやルポタージュなど、山と溪谷社からの特別コンテンツです。

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