雪の奥多摩を歩く。川苔山、大岳山、三頭山へ、ちょっとハードな近郊スノーハイキング

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東京から行きやすい奥多摩は、登山者でにぎわう山域だ。しかし多少の積雪を見る冬場には、登山者少なく、静かな雪道と冬ならではの好展望を楽しめる。そんな奥多摩の三つの山を紹介しよう。

文・写真=打田鍈一

目次

個性的な奥多摩のランドマーク 大岳山(おおだけさん)

1266m

埼玉県飯能市の龍崖山から望む大岳山(左)と奥の院(右)。右端に御嶽山駅

大岳山は独特の山容で、奥多摩で一番目立つ山だ。ケーブルカーで登山口の御岳山(みたけさん)駅へ登れるので、日の短い冬場でも山中での行動に余裕がもてる。とは言え御嶽神社から奥の院を経て大岳山に登り、御岳岩石園(みたけがんせきえん)を経由し出発点に戻る本コースは、けっこう長い。ケーブルカーの安易さに気を緩めず、7時30分滝本(たきもと)駅発の始発でスタートしたい。

御岳山駅前ではさっそくスカイツリーや筑波山(つくばさん)の展望が広がる。御嶽神社への参道からは奥の院の鋭鋒が間近だ。宿や土産物屋の並ぶ山上集落を行き、御嶽神社で山行の安全を祈願。石段をわずか戻った大岳山分岐から山腹の登山道に入るが、取材時はここでチェーンスパイクを付けた。長尾平(ながおだいら)分岐を過ぎ天狗の腰掛杉で山腹道を分け、奥の院への尾根道へ。鎖の岩場を通り、赤い社を右に登れば御嶽神社奥の院・男具那ノ峰(おぐなのみね)だ。石祠が祭られ、木立越しに大岳山が高い。鍋割山(なべわりやま)を越え岩石園への帰路を分けると、輝く雑木林の斜面とゆったり高まる大岳山が美しい。道が尾根を左に外れると鎖の岩道となるが、大岳山荘はすぐ先だ。山荘は休業中だが、再開はあるのだろうか。大岳山へは山荘前から岩道をひと登りだ。

ケーブルカーは標高差423.6mを6分で結ぶ、山上集落には必須の交通機関
参道からは奥の院峰が凛々しく聳える
御嶽神社で山行の無事を祈願していこう
鎖の岩場も現われる
奥の院・男具那ノ峰。石祠の背後に大岳山
冬枯れの木立と大岳山。冬ならではの風景だ

南西に開けた大岳山頂上に出れば、正面の富士山が目に飛び込む。その左に丹沢山塊、右に三ツ峠(みつとうげ)、南大菩薩連嶺(みなみだいぼさつれんれい)、近くに三頭山(みとうさん)、御前山(ごぜんやま)、遠く飛龍山(ひりゅうさん)なども見渡せる。雪のおかげで輪郭がクッキリしているのは山岳展望にありがたい。

帰りは来た道を岩石園分岐に戻るが、分岐のすぐ先では直進する上高岩山への道に入らぬよう注意したい。「ロックガーデン(岩石園)」の道標で左に下れば沢沿いの「御岳岩石園」に入っていく。渓流沿いに整備された遊歩道だが、雪に隠れた道に注意したい。東屋が立つがトイレまであるのは驚きだ。どうやって管理をしているのだろう。沢沿い道は先が不安になるほどどんどん下り、天狗岩の基部を越えると長い鉄階段で七代(ななよ)の滝に下り着く。わずかに凍った滝は寂寞感を引き立てる。しかしここから長尾平分岐への登り返しは疲れた身体にけっこうキツイ。ようやく登り着いた分岐から長尾平展望台へ往復しよう。日の出山を間近に見上げ、東京のビル群を見渡す今日最後の展望スポットだ。足をいたわりながら山上集落を御岳山駅へと帰り、変化に富んだ一日は完了する。

富士山を中心に丹沢から奥秩父への展望広がる大岳山。右端は三つ峠
沢に沿った御嶽岩石園は、不安になるほどどんどん下る
鎖で登る天狗岩には岩頭に天狗像が祭られる
寒々と部分結氷した七代の滝

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム:7時間23分
※積雪期のため、コースタイムは著者の実踏タイムを記載(ヤマタイム記載の標準タイムのおよそ1.1倍相当)
行程:御嶽山駅・・・裏参道分岐・・・神代ケヤキ・・・随身門・・・御岳山・・・長尾平・・・鍋割山・・・鍋割山分岐・・・大岳山・・・鍋割山分岐・・・綾広ノ滝・・・ロックガーデン・・・七代の滝・・・長尾平・・・長尾平展望台・・・長尾平・・・随身門・・・神代ケヤキ・・・裏参道分岐・・・御嶽山駅
総歩行距離:約10,700m
累積標高差:上り 約1,321m 下り 約1,321m
コース定数:29
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この記事に登場する山

東京都 / 関東山地

川苔山 標高 1,363m

 国土地理院の図中には川乗山と表示されているが、川苔山が正しい。  日原行きのバスを川乗橋で下車し、川苔川に沿って歩き、細倉橋から登山道に入る。川苔川を左右に渡り返して百尋ノ滝への分岐に出たら右に火打石谷に沿った登山道をたどる。百尋ノ滝は約40mほどの滝である。  川苔山へは登山道が火打石谷を渡る地点で二分する。左は火打石谷の源流に沿って曲ガ谷北峰との鞍部に達した後、また、右はウスバ尾根を登ってから頂上に登っていける。  山頂からは雲取山、天祖山、蕎麦粒山がよく見える。山頂から下った東の肩から舟井戸を経て大ダワ、大根ノ山ノ神を経て鳩ノ巣駅に下る。または曲ガ谷北峰へ登り、赤杭(あかぐな)尾根を下るコースもある。  奥多摩駅から川乗橋、百尋ノ滝から川苔山に達し、赤杭尾根から古里(こり)駅まで約6時間。

東京都 / 関東山地

大岳山 標高 1,266m

 片肩上がりの山体はどこからでも識別できる。『武蔵通志(山岳篇)』は「両総地方にて武蔵の鍋冠(なべかぶり)山と称し海路の標となす」と記され、江戸期には江戸湾に出入する船の目標でもあったようだ。いわゆる天文山の1つである。山名も古い文献を見ると大岳となっている。  大岳山へは御岳(みたけ)から登山道をたどるのが一番楽だ。山頂の下に大岳神社があり、広場からは馬頭刈(まずかり)尾根や浅間尾根のかなたに富士山も見える。  大岳神社の里宮は、南秋川の白倉にある。山頂への表参道は白倉からのもので、御岳からの道は単なる登山道だ。この表参道は立派に整備され、馬頭刈尾根に達し大岳山へ登っていく。途中鋸山の分岐に道祖神が1基祭られ、右へ進むと、奥社の横手から岩っぽい登山道となり山頂に立つ。下山路は御岳へ出るのが一番楽だが、馬頭刈尾根を軍道(ぐんどう)へ下るのが面白い。鋸山へは体力が物を言う下りである。  コースタイムは武蔵五日市で下車し、白倉から大岳山に至り、高明山を経て軍道に下りる。武蔵五日市駅まで約6時間。

東京都 / 関東山地

三頭山 標高 1,531m

 三頭山は自然豊かな美しい山。山頂付近は3つのピークからなる。主要登山口は「都民の森」として、登山者のみならず観光客も多く訪れる。  日帰りも可能であるが、できたら山麓の数馬に1泊してみたい。都民の森から登るコースのほか、笹尾根の西原峠から尾根通しに三頭山に登り、西にある鶴峠に下るコースもお勧め。そこには美しいブナ林が残っている。

プロフィール

打田鍈一(うちだ・えいいち)

1946年鎌倉市生まれ東京・中野育ち。埼玉県飯能市在住。低山専門山歩きライター。群馬県西上州で道なき薮岩山に開眼。越後の山へも足を延ばし、マイナーな低山の魅力を雑誌や書籍などで紹介している。『山と高原地図 西上州』(昭文社)を平成の30年間執筆。著書に『薮岩魂―ハイグレード・ハイキングの世界―』『続・薮岩魂 いつまでもハイグレード・ハイキング』『分県登山ガイド10 埼玉県の山』(いずれも山と溪谷社)、『晴れたら山へ』(実業之日本社)、『関越道の山88』(白山書房)のほか、『関東百名山』(山と溪谷社)など共著多数。
(プロフィール写真=曽根田 卓)

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