夏山シーズン前に、体力チェック! マイペース登高能力テストと山のグレーディング表で適した山に行こう

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登山の基本は、やはり体力。しっかり長時間歩く力があってこそ、難易度の高い山にトライできるもの。夏山を前にして、今一度自分の「登高能力」を確認し、体力に適した山を「山のグレーディング」から探して欲しい。

 

5月連休が終わり、いよいよ夏山シーズンが始まろうとしています。憧れの山をイメージして夢はふくらむばかりかもしれませんが、山に行く前に体力チェックをしておくことをオススメします。登りたい山があるのは良いことですが、その山に通用する体力がなければ山を楽しむことができないばかりか、事故を起こしてしまったり、最悪の結果を招いてしまったりする可能性もあります。

夏の山は体力が勝負となります。そこで今回は自分の体力がどのくらいあるのか、その体力がどの程度の山に通用するのか。初心者の皆さんが気になることをお伝えします。

自分の体力を客観的に知る方法に「マイペース登高能力テスト」があります。これは鹿屋体育大学の山本正嘉先生が提唱されている方法で、「山と溪谷」の2016年3月号でも紹介されました。

自分にとって少し頑張って登る、でも苦しかったりきつかったりはしないペース、つまりマイペースで山に登った時に1時間でどの位の標高差を登ることができるかで、登山に必要な体力を診断するものです。このテストでは荷物と体に付ける靴や衣服の重量は体重の10%以内で評価するので、ほとんど空身に近い格好となります。

このテストでは1時間で標高差500mを登れたら、8メッツの体力があると診断します。「メッツ」とは運動の強度を表す単位で、安静時を1としています。つまり8メッツとは、安静時の8倍の強い運動に耐える体力があるという意味です。標高差400mなら7メッツ、300mなら6メッツとなります。

全国の山のグレーディング表ははこちらから確認しよう

 

8メッツの体力がある人は、「山のグレーディング表」で、技術的難易度C・D・Eの山に登っても体力的なリスクは少ないと考えられます。7メッツの人は技術的難易度A・Bの山が体力に見合っているため、より難易度の高いC・D・Eの山に登った時は、体力に起因するトラブルが起きるかもしれません。

★関連記事:山のグレーディングで難易度確認を! セルフレスキューの第一歩は、「自分の力量にあった山選び」

体力に起因するトラブルというのは、単純に疲れて動けなくなること以外に、疲れから集中力を欠いて転んだり、標識を見落として道に迷ったりすることも含まれます。長野県の山で近年増えているのは、心筋梗塞などの心臓や循環器系の病気でなくなってしまうケースです。これも体力不足が要因となっている可能性があります。つまり体力勝負の夏山で、自分の体力以上の山に行くと様々なリスクが高くなることを示しています。

 

「単調な登りの山」で登山体力をテストしよう

マイペース登高能力テストは、できるだけ単調な登りが500m以上続くルートならどこでもできます。例えば丹沢の塔ノ岳の大倉尾根などはオススメで、昔から「ヒマラヤに行くなら2時間で登れないといけない」と言われてきました。標高差は1,200mあるので、2.5時間で登れたら8メッツ、3時間なら7メッツの体力があります。

六甲山で、芦屋口から登るルートでは、毎年3月に“六甲タイムトライアル“が行われています。また長野県山岳総合センターでは、5月27日に、松本市郊外の美ヶ原で、「登山体力セルフチェック in 美ヶ原」を行いますので興味のある方は是非ご参加ください。

 

今年も夏山を思いっきり楽しもうと思っている人、シーズン前に是非このテストをやってみて下さい。でも、テストを頑張りすぎて体を壊すことだけはないようにしましょう!

なお、マイペース登高能力テストで診断できるのは、晴天の一般登山道を登る時の体力です。荒天時や積雪期、バリエーションルートでは、更に強い体力と、様々な技術や知識、経験・判断力などが必要となります。

 

プロフィール

長野県山岳総合センター

長野県大町市にある長野県立の施設。「安全で楽しい登山」の普及啓発を主目的に、「安全登山講座」と動植物・地形地質をはじめ山の自然を総合的に学べる「野外活動講座」を、年間約60講習開催。講習参加者のうち、長野県外の方が約6割を占める。

⇒長野県山岳総合センター
⇒Youtube

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