雪の北八ヶ岳を歩く。縞枯山と茶臼山

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読者レポーターより登山レポをお届けします。下島朗さんは北八ヶ岳の縞枯山(しまがれやま、2403m)&茶臼山(ちゃうすやま)へ。

文・写真=下島 朗


2月中旬、北八ヶ岳の縞枯山と茶臼山に登ってきました。この9日前にも北八ヶ岳へ行って北横岳(きたよこだけ)と坪庭(つぼにわ)を周遊したのですが、時間が足りなくなって縞枯山には行くことができませんでした。そこで再び、北八ヶ岳へと向かいました。

前回は予報ほど天気がよくなかったので、今回は念入りに天気予報をチェックして晴れマーク一色の日をねらって出かけました。

ロープウェイ山頂駅から新雪を踏んで雨池峠へ

未明に自宅を出発して中央自動車道を西へ。甲府盆地に差しかかると正面にドーンと南アルプスが・・・、見えませんでした。手前の山並みは見えるものの主稜線は雲の中です。

その先で左側に八ヶ岳が見えてくるのですが、雲というよりガスに包まれたような異様な感じ。もちろん山頂部は見えません。なんと、前回より天気が悪いじゃないですか。

ビーナスラインを登っていくと路面が白くなってきました。雪が降ったようです。不慣れな雪道に緊張しながらも、北八ヶ岳ロープウェイの山麓駅に着いたのが8時過ぎでした。

北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅
再び、北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅に来た。あれ、空が青い
北横岳の上空も青空が広がっている
北横岳の上空も青空が広がっている。着雪した木々がまぶしい

ならばと登山の準備をして、今回は9時の始発ロープウェイに乗ることができました。乗車率は7割くらい、スキー、スノーボードの人より登山者の方が多めでした。

北八ヶ岳ロープウェイは、キャビンの山頂側に乗るか山麓側に乗るかで見える景色が大きく異なります。山麓側に乗ると、南アルプス、中央アルプス、北アルプスが見えるそうですが、私はまだ見ていません。アルプスの稜線は今回も雲の中でした。

北八ヶ岳ロープウェイ山麓駅
画面中央に山麓駅。奥に中央アルプスが見えるような見えないような・・・
北八ヶ岳 坪庭
ロープウェイの山頂駅を出ると坪庭の標識。前回より景色が白い

山頂駅の前でコースが2つに分かれています。北横岳へ行くなら左の道を進んで坪庭に上がります。今回は、真っすぐ雨池峠に向かうので右のルートを行きます。

北八ヶ岳 坪庭
雨池峠へ直行するならこちら。木の枝に新たな雪が積もって重そう
北八ヶ岳 坪庭
新雪を踏んで歩く。ギュッギュッと音がする

山頂駅から雨池峠までは、ほとんどアップダウンがありません。積もりたてのサラふわの雪が靴にまとわりついて少し歩きにくさを感じましたが、新雪の下には踏み固められた雪面があるので歩行に支障はありませんでした。

ほかの登山者を見ると、アイゼンを付けている人もいればスノーシューの人もいました。なかには、山スキーを履いている人も。この辺りは、さまざまな道具を試すのにちょうどいいのかもしれません。

北八ヶ岳 八丁平と縞枯山荘
八丁平と縞枯山荘。雪原には日が射しているものの、空には雲が増えてきた

20分ほどで八丁平へ、縞枯山荘があります。前回もここで写真を撮りましたが、空の色と太陽の位置が異なるため雰囲気が違って見えました。

北八ヶ岳 雨池峠
前回の折り返し地点、雨池峠

八丁平から10分弱で雨池峠に到着。坪庭周辺より踏み跡が減っていました。右に折れて縞枯山へと向かいます。

縞枯れエリアを通過して縞枯山の展望台へ

縞枯山は、離れて見るとなだらかな山です。しかし、このコースは峠から山頂まで直登で、なかなかの急斜面でした。登っていると意識しにくいのですが、振り返ると下りの斜度に驚きます。

また、積雪のため夏道より高い位置を歩いているためか、あるいは雪の重みで木の枝が垂れているせいか、木々の枝をかき分けて進むようなところもありました。

北八ヶ岳 縞枯山への登り
縞枯山への登り。うっそうとした樹林帯を行く

急登を登り切ると、縞枯山の山頂に到着です。

北八ヶ岳 縞枯山の山頂
縞枯山の山頂。特に展望はなく、あるのは標識だけ

山頂で一休みして縞枯山の展望台に向かいます。途中に開けた場所があったのですが、だいぶ雲が広がっていて展望はイマイチでした。

北八ヶ岳 縞枯山展望台への稜線
展望台への稜線にて。うっすらと南八ヶ岳を確認できる
北八ヶ岳 縞枯山
その先で、有名な縞枯現象のエリアに突入
北八ヶ岳 縞枯山
もう少し進むと、枯れ木が倒れて明るく開けた場所も

再び樹林帯に入って少し行くと、茶臼山と展望台への分岐があります。左に進むと、やがて大きな岩が積み重なった場所が見えてきます。その上が展望台です。

北八ヶ岳 縞枯山展望台
縞枯山展望台に到着。いつの間にか北の空が濃いグレーに
北八ヶ岳 縞枯山展望台から茶臼山を見る
縞枯山展望台から茶臼山を見る。その左奥に、うっすら南八ヶ岳
北八ヶ岳 縞枯山展望台から見た縞枯山の山頂部
北西には縞枯山の山頂部、その右奥に北横岳がチラ見え

展望台は見晴らしがいいぶん、樹林帯と違って風があります。風速は体感で10m以上。いつどこで計測したのかわかりませんが、ロープウェイの駅には気温-16℃の表示がありました。この日の縞枯山展望台は真冬らしい寒さでした。

茶臼山から五辻へ下り、ロープウェイ山頂駅へ

展望台から分岐に戻り、茶臼山へと向かいます。しばらく下ると五辻(ごつじ)への分岐があるので、ここを直進します。再び、登りになります。しかし、縞枯山の登りよりは傾斜がゆるやかでした。

北八ヶ岳 茶臼山への登り
茶臼山への登り。北八ヶ岳一帯は、同じような樹林帯が続く

15分ほどで、茶臼山の標識がある分岐に到着しました。しかし、山頂とは書いてありません。等高線を見ると、ここより展望台の方が標高が高そうです。

北八ヶ岳 茶臼山
ここが茶臼山の山頂なのか、展望台が山頂なのか・・・

茶臼山の分岐を右に進んで展望台へ行きます。

北八ヶ岳 茶臼山展望台
5分ほどで茶臼山展望台に到着。ここから見る景色もすばらしい

縞枯山の展望台は稜線の東側でしたが、茶臼山の展望台は西側です。そのため見える景色が違います。共通するのは、風が強くて寒かったこと。茶臼山展望台の方が縞枯山展望台より風が強くて長居はできませんでした。

北八ヶ岳 茶臼山展望台からの眺め
中央に北横岳と蓼科山。その右手前に縞枯山、縞枯れ現象が分かる。蓼科山の左には霧ヶ峰が見える
北八ヶ岳 茶臼山展望台からの眺め
茶臼山展望台からは南八ヶ岳を遠望できた。主峰の赤岳も見えている

展望台から茶臼山の標識まで戻り、縞枯山方向に下ります。すると、すぐに五辻への分岐に到着します。先ほど茶臼山へ行くときは、五辻へ下る道は新雪に埋もれていたのですが、踏み跡ができていました。そこで、ありがたく使わせていただくことに。

北八ヶ岳 茶臼山 五辻への下り
五辻への下り、木々の間にトレースが続く
北八ヶ岳 茶臼山 五辻
五辻まで下りてきた。西には、まだ貴重な青空が見えている
北八ヶ岳 茶臼山 五辻
突然、強い風が吹いて木の枝から粉雪が舞った。美しいけど冷たい

ここから、ロープウェイの山頂駅まで約40分。ゆるやかな登りが続きます。意外に雪が深いところが多くて歩くペースが上がりません。この辺りは、アイゼンよりスノーシューの方がよさそうでした。

北八ヶ岳
ところどころ開けた場所も。予想より景色がよくてうれしい
北八ヶ岳
やがて、正面に北横岳が見えると山頂駅は近い

この後、太ももまで埋まる踏み抜き地獄にハマって難儀する区間があったのですが、無事にロープウェイの山頂駅に到着。すこし高い場所へ行って縞枯山を振り返りました。

北八ヶ岳 縞枯山
たおやかな縞枯山。明るい雪原と押し寄せる雲が対照的

空を見ると、左には濃いガスのような雲が広がり、右には長くて巨大なロール状の雲が延びています。その間に青空が見えますが、スカッとした八ヶ岳ブルーではなく鈍い青でした。

少し後ろ髪をひかれる思いでロープウェイの山頂駅へ。15時発のロープウェイで下山しました。

最後に、歩いた稜線を見上げて再訪を期す

帰路、八ヶ岳を一望できる場所があったのでカメラを持って車の外へ。南八ヶ岳はガスに覆われて不明瞭でしたが、北八ヶ岳は夕日を受けて山頂部が白く輝いていました。

茅野市内から夕照の北八ツ核心部を望む
茅野市内から夕照の北八ツ核心部を望む

左側の大きな山が北横岳です。中央の低くなっているあたりが雨池峠。その右の、なだらかな山が縞枯山。右端のミニ富士のような山が茶臼山です。昼間の雲と風がウソのように穏やかな景色ですね。

前回も今回も、八ヶ岳の天気予報は晴れでした。しかし、2回とも青空より雲の方が多くて期待したほどの好天ではありませんでした。

気象庁の定義では、青空が2割、雲が8割でも“晴れ”です。少なくとも雪が降ったりガスに巻かれることはなかったし、ときどき日差しもあったので、やはり2日とも晴れだったのでしょう。

雪山は、雪がたくさん降るから雪山なわけで、そんな季節に安全な山歩きを楽しむことができてよかったと思います。とはいえ正直にいえば、次回こそ空一面の八ヶ岳ブルーを見たいとも思います。

(山行日程=2025年2月19日)

MAP&DATA

ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 5時間 ※積雪状況による
行程:山頂駅・・・縞枯山荘・・・雨池峠・・・縞枯山・・・・茶臼山・・・五辻・・・山頂駅
総歩行距離:約5,300m
累積標高差:上り 約357m 下り 約357m
コース定数:11
下島 朗(読者レポーター)

下島 朗(読者レポーター)

“絶景ハンター”と称して、写真を撮りながら山を歩く中高年登山者。好きが高じて自己サイト『絶景360』を開設し、撮り溜めた絶景写真を公開している。

この記事に登場する山

長野県 / 八ヶ岳

縞枯山 標高 2,403m

 茶臼山と雨池峠の間にある縞枯山は、ほぼ東西500mにわたる頂上部をもち、シラビソやコメツガの森に覆われている。これらの樹林が立ち枯れたものが、数段の白い横縞をつくっているところから山名が生まれた。縞枯現象は風、降雨、日射などの自然現象によるもので、100年から300年の周期で世代の交代を繰り返すものといわれている。この現象は蓼科山や北横岳の西面、茶臼山などにも分布していて、縞枯帯の中へ入ってみると、枯れた樹幹の根元に緑の幼木が育っていることが分かる。茶臼山の山頂から西へ入った露岩の展望台は、縞枯山の縞枯現象の大要を観察するのにもってこいの場所である。  長野県茅野市と同南佐久郡八千穂村(現・佐久穂町)の境に位置し、山頂の東端にある展望台に立つと、天狗岳や麦草峠付近のパノラマが展開する。  近くには岩石累々とした坪庭、神秘なムードに包まれた雨池、茶臼山の南には麦草峠の草原がある。縞枯山と茶臼山の諏訪側には、国有林監視用の歩道があって、坪庭下から五辻を経て冷山歩道へつながっており、南八ヶ岳の山々を遠望することができる。  麦草峠から2時間弱、坪庭(ピラタスロープウェイ山頂駅)から1時間の行程だ。

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