“ゼブラ”とお花を楽しむ北海道・白雲岳

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読者レポーターより登山レポをお届けします。みやびさんは北海道の大雪山系赤岳(あかだけ、2079m)と白雲岳(はくうんだけ、2230m)へ。

文・写真=みやび


今回は標高1490mの銀泉台(ぎんせんだい)登山口から出発し、赤岳を経て白雲岳を往復するルートで、13km、6~7時間の山行です。

大雪山系の赤岳は、初夏は花が咲き乱れ、秋はその名の通り紅葉に赤く染まる山で、特に銀泉台が有名です。小泉岳(こいずみだけ)周辺は表大雪でも花の種類が多く、白雲岳は6~7月に山頂から旭岳裏の美しいゼブラ模様が望めます。

赤岳から先は平坦で大雪山の雄大さを感じながら歩けます。7月上旬まで第一花園の雪渓は軽アイゼン持参が安心です。縦走時は赤岳山頂で天候の判断をするといいと思います。

快晴、登山日和の始まり

森林パトロール銀泉台事務所で登山届を記入し出発。幅の広い道がしばらく続きます。これは1968年に中止となった、銀泉台から赤岳山頂を抜け勇駒別(旭岳)温泉に至る、特別保護区域を横断する「大雪山横断道路」計画の名残です。

森林パトロール銀泉台事務所
森林パトロール銀泉台事務所で登山届を書き出発

登山道らしい登りになると見晴台に到着。秋には銀泉台が赤く染まる展望が見える紅葉の名所です。

涼しい雪渓歩き

少し登ると第一花園の雪渓が現われます。当日は右下がりの急斜面にトラバースの道が30mありました。7月上旬までは軽アイゼンがあれば安心な場所ですが、ザクザクの雪質のためツボ足で渡りました。

少しの登りの後、平坦な道の先には第二花園の雪渓の登りがあります。緩い登りですが距離が長く、下りは滑るので注意が必要です。

大雪山系・赤岳 第一花園のトラバース雪渓
第一花園のトラバース雪渓、7月上旬は軽アイゼンがあれば安心です

次々に現われるお花が楽しい

雪渓を抜けると駒草平に到着。台地状の平坦地にコマクサをはじめ、キバナシオガマ、コケモモ、イワブクロなどいろいろなお花がたくさん咲いています。昔、盗掘被害のあったコマクサも保護され徐々に数を増やしています。

駒草平には携帯トイレブースがあり、回収ボックスは登山口にあります。

大雪山系・赤岳 コマクサ平のコマクサ
駒草平のコマクサは見頃です
大雪山系・赤岳 コマクサ平の携帯トイレブース
駒草平の携帯トイレブースがありがたい、回収ボックスは登山口です
大雪山系・赤岳 イソツツジの回廊
イソツツジの回廊を進みます

左に「神の田圃」を見ながらエゾイソツツジの回廊を抜けると正面に大きな雪渓の斜面が見えます。

こちらは第三雪渓で、一番のがんばりどころです。夏道が8割出ている斜面をエゾコザクラのお花畑に癒され登り切りました。

大雪山系・赤岳 第三雪渓
一番のがんばりどころ第三雪渓、左の道を登ります
大雪山系・赤岳 エゾコザクラ
エゾコザクラに励まされ登ります

少し平坦地を歩くと第四雪渓の登りです。夏道6割の斜面を登りきると山頂はもうすぐ。チングルマ、メアカンキンバイ、エゾノハクサンイチゲのお花畑に迎えられ赤岳の山頂に到着しました。

大雪山系・赤岳 第四雪渓
第四雪渓の登りを抜けるともうすぐ山頂です
大雪山系・赤岳山頂
赤岳の山頂に到着しました
エゾタカネスミレ
エゾタカネスミレのこんもりブーケ

お花畑を楽しみ白雲岳に向かう

山頂で小休止後、白雲岳に向け歩を進めます。平坦な稜線台地が広がり表大雪の雄大さに触れられます。

足元にはホソバウルップソウ、エゾタカネスミレ、エゾオヤマノエンドウ、キバナシオガマなど大雪山の固有種も多く、チョウノスケソウ、イワウメ、エゾノツガザクラなど小泉岳周辺は大雪山でも有数のお花が見られる場所です。

特別天然記念物のアサヒヒョウモンとダイセツタカネヒカゲ、天然記念物のウスバキチョウの3種の高山蝶がたくさん飛び回っていました。

大雪山固有種のホソバウルップソウ
大雪山固有種のホソバウルップソウ、開花後半でしたがきれいなお花もありました
大雪山固有種のキバナシオガマ
大雪山固有種のキバナシオガマ、たくさん咲いていました
>チョウノスケソウ
チョウノスケソウは開花終盤で元気な花はごく一部でした
特別天然記念物のアサヒヒョウモン
天然記念物のアサヒヒョウモン、日本では大雪山でのみ生息

白雲分岐から緩い登り景色が開けると、山頂直下にチングルマのお花畑が広がります。山頂へは短い大岩登りで、残雪期は右から雪渓を登れます。今回は夏道が出ていたので最後の大岩を登り、白雲岳の山頂に到着しました。

白雲岳直下のチングルマのお花畑
白雲岳直下のチングルマのお花畑
白雲岳山頂
北海道で3番目に高い2230m(2229.9m)の白雲岳に到着しました

ゼブラと爽やかな景色を眺めのんびり

山頂からは旭岳裏側のゼブラ模様が広がり、息をのむほど雄大で美しい景色が眺望できます。左に目を向けると、トムラウシを中心に左手前に高根ヶ原、右奥に十勝連峰が見られ、残雪模様に癒されます。このすばらしい景色を見ながらのんびり食事をして、ぜいたくな時間を過ごしました。

白雲岳山頂からの眺め
広がるゼブラ模様が息をのむほど美しい
白雲岳山頂からの眺め
中央にトムラウシ、左手前に高根ヶ原、右奥に十勝連峰、残雪模様が爽やかな景色です

いつまでも見ていたい景色ですが、下山を開始します。稜線のお花たちを楽しむたくさんの方とすれ違うと、最高の山日和にみなさん笑顔です。

赤岳を過ぎると本格的な下りです。お花を眺め、景色を見下ろし雪渓で涼みながら無事下山しました。

北海道固有種のエゾミヤマツメクサ
北海道固有種のエゾミヤマツメクサはあちこちで咲いていました
エゾオヤマノエンドウ
帰りもお花を楽しみました、エゾオヤマノエンドウもあちこちで咲く
コマクサ平の「神の田圃」
駒草平の「神の田圃」は青空を映し穏やかでした

快晴の山日和にたくさんのお花と出会え、大満足の山行でした。

(山行日程=2025年7月8日)

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム: 7時間5分
行程:赤岳登山口(銀泉台)・・・駒草平・・・赤岳・・・小泉岳・・・白雲岳/往復
総歩行距離:約13,400m
累積標高差:上り 約934m 下り 約934m
コース定数:27
アドバイス:

銀泉台登山口は約70台駐車可能です。週末や、花と紅葉のピーク時は早い時間に満車になるため早めの到着がいいでしょう。層雲峡への縦走時は赤岳登山バスが便利です。秋には紅葉時期交通規制があり大雪レイクサイトや層雲峡からシャトルバスの運行があります。

赤岳~白雲岳に加え緑岳への縦走は高根ヶ原、トムラウシ方面の景色がよく、8~9時間で「赤白緑」の三色の山行ができます。また、層雲峡から銀泉台より入山し、黒岳ロープウエーで層雲峡に下山をする、赤岳~白雲岳~北海岳~黒岳の縦走も花が多く、8時間ほどの山行で雄大な御鉢平も楽しめます。表大雪には有人の黒岳石室、白雲岳避難小屋があり、小屋、テント泊で大雪山の奥深さをより感じられるでしょう。

みやび(読者レポーター)

みやび(読者レポーター)

北海道在住。大雪・十勝連峰を中心に北海道の山を日帰りで歩いています。花と景色と下山後の温泉が楽しみ。

この記事に登場する山

北海道 / 石狩山地

大雪山・白雲岳 標高 2,230m

 表大雪の南端にどっしり座った大きな山。  これから南へなお登山道は続き、白雲岳避難小屋を過ぎると広大な高根ガ原の台地となり、忠別岳(1963m)へ、さらに五色岳(1868m)、化雲岳(かうんだけ 1954m)へと足を延ばすことができる。  頂上は、この縦走路から少し西方に外れた位置にあり、忠別川源頭部の広大な谷と樹海が見下ろせ、対岸に旭岳の大きな姿を望める迫力満点の展望台である。  大きな岩塊がるいるいと積み重なった白雲岳付近は、しばしば、ナキウサギの声が鋭く飛び交う所でもある。  登頂コースとしては、黒岳石室から来るもの(約4時間)、高原温泉から緑岳(みどりだけ 2019m)を経て来るもの(約5時間)、花の名所が続く赤岳銀泉台(ぎんせんだい)からのもの(約5時間)などが考えられるが、普通、この山を単独で登ることはあまりなく、縦走途中に立ち寄るケースがほとんどだろう。  白雲岳避難小屋は展望絶好の位置にある建物だが、黒岳石室とは違い、まったく無設備の避難小屋。6~9月は管理人がいるが、夏山シーズン中は一杯になって泊まれないこともあるという。キャンプ指定地もここにあり、縦走には大変便利な位置にある。

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