緊急提言! この酷暑の山から身を守るために、知っとくべきこと、ふだんの生活からできること

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最近の夏の暑さは厳しい。2018年は40℃を超える場所が続出し、観測史上初の暑さが続いている異常事態だ。標高の高い山に行けば少しは涼めると思いきや、やっぱり暑いのは変わらない。この暑さの中で山を登り切るために、知っておくべき知識と生活習慣について緊急提言!

 

暑い! これは異常だ。都会だけかと思ったら山の上でも暑い。7月中旬に新潟県の浅草岳と守門岳に行ったが、「東京より北の方角だし、山だから涼しいだろう」とタカをくくっていたら、とんでもない。標高1500m少しの山とはいえ、まだ暑さに慣れていない身体からはシャワーを浴びたように汗が出た。

完全にヨタヨタになる人も出てきた。もちろん、水分は十分に休憩の度に得ていたが、とてもじゃないが間に合わない。これからが夏本番だ。さぁ・・・どうしよう、と考えてしまう。

 

暑さに弱くなったのは、食生活? 生活習慣?

夏は暑いのが当たり前です。暑ければ汗もかくし、喉も乾くものです。ただ、少し気になることがあります。それは気温が上がっていることではなく、「以前より暑さに参る人が増えている」ように思うことです。

なぜなのか考察してみると――、一つは食生活の変化があるのではないかと思っています。かつては夏は味の濃い物を食べるのが当たり前だったのが、最近では塩分=「体に悪い」が定着して、薄味を心がける事が増えています。これで身体の塩分が不足しているのでは? と考えてしまいます。

また、50年ほど前には炎天下で農作業する人の比率が就労人口の中で一番多かったのが、現在では一日中、冷房の効いた建物の中でパソコンの前で働く人が主流になったことも影響しているのではないかと思います。

確かに、炎天下で働く人と室内の労働が主流の人が同じような食事では、不健康になるのは当たり前です。けれども、我々の行っている登山ではどうでしょう? 重い荷物を背中に、急な登山道を登ったり下ったりするのが登山です。それはまさに、炎天下で働く人と変わらない環境です。水分補給、食事内容は「室内で椅子に座って働く」人とは当然、変わってくるべきだと考えるのは、私だけでしょうか?

 

山に登る前に「登山ボディ」のための食事を!

かつて、ヤマヤの間では「山で水を飲むとバテる」「水を飲まないでガマンしてると汗が自然に出なくなるんだよ」と真面目に言われていたものです。

今では、失われた水分は必ず補給するのが当たり前になり、それと併せてミネラルも摂るように変わってきました。登山中、スポーツドリンクを飲んだり、ミネラル分の多い飴を舐めたりして、登山者自らが工夫している姿を見かけます。ただし、山の中だけでなく、登山をする前になったら、少し食事内容を変えてみる事も大切です。山の中だけでは追いつかないことを知っておきましょう。

熱中症対策には水分と塩分の補給が大切だと言われますが、ここで一つ注意したいことがあります。塩分と言うと塩――、つまり塩化ナトリウム「NaCl」のことだと思いがちだですが、実は少し違っています。もちろん、大量に汗をかいた時に塩はシャープに身体に効きますが、血圧、その他に悪影響があることも忘れてないようにしてください。

血液中のミネラルの中では「ナトリウムとカリウム」の補完関係があるそうです。ナトリウムを摂るとカリウムが減り、カリウムを摂るとナトリウムが減る、補完関係があるといわれます。

科学的な詳しい説明については専門書などに譲りますが、簡潔に言ってしまえば、ズバリ、カリウムの摂取を心がけて欲しいのです。例えば、足が「攣る(つる)」のは夏の登山のよく起きるトラブルですが、この時に必要なのは充分な水分の補給と共にカリウムの摂取となります。

では、カリウムの摂取はどうしたら良いのでしょうか? 多く含まれるのは、海藻、ナッツ、ドライフルーツなどが有名ですが、果物全般にも多く含まれています。登山を日常的に行う人は、食事内容の中に、ぜひ、これらを意識的に取り入れることをお勧めしたいと思います。

最近では、スポーツドリンクやサプリの中にはカリウムを強調する商品が増えているのはこのためです。特に「炎熱系」の飴やサプリの中には「カリウム補充」を明記してある商品が増えてきています。行動食として補充する際には、少し関心を持って手に入れるようにしてみましょう。

夏の大量の発汗の最中、脱水でヨレヨレになる、足が攣る、とにかくバテる、は誰もが経験することです。特に、この夏の酷暑の中では、当然です。まとめるならば、

  • 水は十分に飲もう!

  • 普段の食事からカリウム摂取を心がけよう!

  • 登山中はサプリやスボーツドリンクでカリウム摂取も心がけること!

この酷暑の中での登山を乗り切るために、この3つはしっかり覚えておきたいことです。

 

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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