秋色に染まる鹿島槍ヶ岳へ【紅葉レポート】

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読者レポーターより登山レポをお届けします。ともさんは2泊3日で北アルプス・鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ、2889m)へ。

文・写真=とも


今年の北アルプスの締めくくりとして、爺ヶ岳(じいがたけ)、鹿島槍ヶ岳に2泊3日で紅葉を見に行きました。五竜岳(ごりゅうだけ)からの縦走にするか1週間前まで迷いましたが、扇沢(おうぎさわ)からのピストンにしてよかった……。もし縦走にしていたら、八峰キレットを越える日が雨と風になっていました。予定をずらして3日目の朝に登った鹿島槍ヶ岳の山頂は雲の中、後立山(うしろたてやま)連峰の北側の山々は見えなかったものの、当たり年といわれた紅葉とさまざまな北アルプスの山々の眺望を満喫しました。

1日目:扇沢~柏原新道~種池山荘~爺ヶ岳(南峰)~種池山荘

長野駅から直通バスで扇沢に向かい、柏原新道登山口から10時前に登山開始です。天気は晴れ、歩き始めてすぐに紅葉が目に入り、テンションが上がります。

柏原新道登山口から30分ほどの地点
柏原新道登山口から30分ほどの地点
柏原新道 登山道
標高が上がると登山道が紅葉に包まれているところも。

登山道は歩きやすく、また、進行方向の左下には扇沢駅、視線を上に転じると針ノ木岳(はりのきだけ)から続く稜線や山肌の紅葉、さらに進むと爺ヶ岳(じいがたけ)南峰の山頂もちらり。種池(たねいけ)山荘までずっと、わくわくしながら登ることができました。

稜線上に立つ種池山荘
稜線上に種池山荘が見える
種池山荘まで30分ほどの地点
種池山荘まで30分ほどの地点

翌日は終日雨になりそうだったので、種池山荘で一休みをしてから爺ヶ岳(南峰)までピストンすることに。登り始めると山荘のテラスからも見えていた立山連峰が姿を大きくし、剱岳まで視界に! 薬師岳(やくしだけ)、水晶岳(すいしょうだけ)、槍ヶ岳(やりがたけ)も見えました。そして鹿島槍ヶ岳の存在感がすごい! しかしなんといっても、まるで赤や黄色の絨毯のような紅葉の美しさに息をのみました。スタッフの方は「今年の紅葉は当たりです!」とおっしゃっていました。

ヤマハハコとチングルマ
ヤマハハコとチングルマ。花と紅葉が同時に見られて驚いた。
剱岳と立山連峰、手前には種池山荘
剱岳と立山連峰、手前には種池山荘
爺ヶ岳から槍ヶ岳、穂高連峰を望む
爺ヶ岳の山頂が近づくと槍ヶ岳、穂高連峰が見える
紅葉と鹿島槍ヶ岳
紅葉の奥に鹿島槍ヶ岳

2日目:種池山荘~爺ヶ岳(南峰)~爺ヶ岳(中峰)~冷池山荘

天気予報通りの雨、低い位置に雲があります。予定ではこの日に鹿島槍ヶ岳を登頂して冷池(つめたいけ)山荘に宿泊でしたが、翌日は天気の回復が見込めたので、鹿島槍ヶ岳は3日目の早朝にトライすることに変更しました。日の出前のスタートは少し不安があり、雨の中、布引山の手前まで登山道を下見しました。その後はストーブの焚かれた談話室でのんびり。種池山荘と冷池山荘は同じグループで、どちらも感染症対策にとても気を配られていました。また、スタッフの方は気さくで親切、山荘内は隅々まできれいで、とても快適に過ごさせていただきました。

クロマメノキだろうか。雨にぬれてやわらかな色合い。

3日目:冷池山荘~布引山~鹿島槍ヶ岳(南峰)~爺ヶ岳(中峰)~種池山荘~柏原新道~扇沢

4時45分に出発、すでに雨は上がっており、生暖かいような風が吹いています。前日にスタッフの方から、最近は稜線上ではクマの目撃情報はなく、下のほうに降りているようだ、とお聞きしていましたが、それでも真っ暗な中を歩くのは緊張します。布引山(ぬのびきやま)への登りの途中で東の空が明るくなってきて一安心。しかし鹿島槍ヶ岳は雲の中、その姿は見えません。いつの間にか風は強く冷たくなっていて、南峰に登頂したときには顔がこわばっていました。残念ながら五竜岳はおろか、お隣にあるはずの北峰もどちらに?という状態だったので、早々に下山です。種池山荘まで戻る道々では上空には青空が広がっていましたが、稜線上は雲の中に入ったり、雲が切れたりを繰り返しており、この日は鹿島槍ヶ岳を拝むことはできませんでした。

ウラシマツツジ
鹿島槍ヶ岳の山頂手前でウラシマツツジ。山頂付近の紅葉は終わりかけとのことだったが、まだ充分に楽しめた。
布引山への稜線
鹿島槍ヶ岳からの下山中に、布引山への稜線
布引山の山頂から牛首山を望む
布引山の山頂から牛首山
白い幹と黄色のコントラストが美しいダケカンバ
少し落葉しているためか、白い幹と黄色のコントラストが美しいダケカンバ
紅葉で彩られた池
小さな池が紅葉で彩られていた
紅葉越しに見る布引山
紅葉越しに見る布引山

種池山荘で名物のピザを食べて元気をもらい、一気に扇沢まで下ります。写真は初日に充分撮ったよね……と思っていたのに、前日の雨で落葉が進んだのか、差し込む日差しが増して紅葉が一層映えていて、何度も足を止めました。

種池山荘、冷池山荘とも今年の営業は10月14日の宿泊で終了ですが、爺ヶ岳ならば日帰りが可能ですので、まだ紅葉を楽しめるのではないかと思います。

柏原新道
初日よりも明るさを増した柏原新道
紅葉の稜線
岩小屋沢岳だろうか。いつか針ノ木岳から歩いてみたい

(山行日程=2025年10月10~12日)

MAP&DATA

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高低図
最適日数:2泊3日
コースタイム: 【1日目】4時間10分
【2日目】2時間15分
【3日目】9時間30分
行程:【1日目】
扇沢・・・柏原新道登山口・・・種池山荘
【2日目】
種池山荘・・・爺ヶ岳南峰・・・赤岩尾根分岐(冷乗越)・・・冷池山荘
【3日目】
冷池山荘・・・布引岳・・・鹿島槍ヶ岳南峰・・・布引岳・・・冷池山荘・・・赤岩尾根分岐(冷乗越)・・・爺ヶ岳南峰・・・種池山荘・・・柏原新道登山口・・・扇沢
総歩行距離:約20,600m
累積標高差:上り 約2,499m 下り 約2,499m
コース定数:63 
とも(読者レポーター)

とも(読者レポーター)

山とお酒が大好物! 登山後の一杯は至福の時間です。日帰りでは奥多摩や中央本線からアクセスしやすい山に、夏山シーズンには北アルプスあたりまで出かけます。

この記事に登場する山

富山県 長野県 / 飛騨山脈北部

鹿島槍ヶ岳 標高 2,889m

 この山は、後立山連峰の中央部に位置し、名実ともに後立山の盟主という存在である。  端麗と表現される南北2つの峰と、それを結ぶ吊尾根がつくるこの山の姿は、どこから眺めても美しい。この山に魅せられた岳人たちは、同時にこの山が内懐に秘める荒々しさのとりこにもなったのである。それは山麓からではうかがい知れない、北壁や荒沢奥壁などのバリエーション・ルートである。これらのルートの開拓は大正末期から昭和の初期に、学校山岳部を中心に華々しく行われ、それは日本におけるアルピニズムの歴史に、貴重な一頁を記しているのである。  鹿島槍ヶ岳への登路は、縦走路のほかには、東面・信州側から短くて急峻な赤岩尾根1本のみである(鹿島から所要9時間)。この尾根の途中の高千穂平は、鹿島槍ヶ岳のよき展望台ともなっているが、そこから眺める大冷(おおつべた)沢の源頭には、残雪期に獅子やツルの雪形が現れる。そこから昔は、山名をシシ岳とかツル岳、あるいは双耳峰からの連想で背比べ岳などとも呼ばれていた。現在の鹿島槍ヶ岳の山名は鹿島集落の背後にある槍ヶ岳といった意味である。山体は信州側は急崖、西面・越中側はなだらかな非対称山稜の典型である。  西面には、支稜の牛首尾根を挟んで東谷と棒小屋(ぼうごや)沢が、西面の水を集めて黒部川に注いでいる。この棒小屋沢と、剱岳東面を流下する剱沢とが、黒部峡谷に対して対向から合流する、有名な黒部の十字峡を形成している。  東面を落ちる白岳、大冷の各沢は、源頭部にバリエーション・ルートを提供している。その1つ、カクネ里はU字谷をなし、平家の落武者が隠れ住んだという(隠(かく)れ里(さと))伝説をもつ、ロマンを秘めた圏谷である。もちろんここに人が隠れ住むというのは不可能だが……。  南峰から主稜を南へ下ると、肩といった存在の布引岳(残雪が布を敷いたように見えるのでこの名がある)で、付近には船窪地形が散見される。その南の小平地には冷(つべた)池があり、冷池山荘が建っている。また吊尾根の雪田付近から北峰を巻いて北へ下ると、両側の谷からの浸食によって、主稜線に深いⅤ字形の切れ込みの入った八峰(はちみね)のキレットに出る。その北側にキレット小屋がある。  登山口の鹿島集落は昔から戸数11戸しかなく、集落の人々は平家の落武者の子孫といわれている。ここで民宿を営んでいる狩野氏宅には、近代登山以降の鹿島槍ヶ岳の登高記念帳が保存され、それがそのまま鹿島槍ヶ岳の登山史ともなっている。

富山県 長野県 / 飛騨山脈北部

爺ヶ岳 標高 2,670m

後立山連峰の南部にあり、3つのピークからなる。北から一直線に南下してきた後立山の主稜線は、この爺ヶ岳で西方へ大きく湾曲し、越中側にすり鉢を半分に切ったような、ハイマツの見事な大斜面をつくっている。 一方、東面には大きな白沢天狗尾根を張り出している。この天狗尾根や扇沢にはかつて登山道があったが、現在は廃道となり、種池山荘の柏原正泰氏が拓いた柏原新道がある。新道は扇沢出合から爺ヶ岳南稜をたどって種池に登るもの(扇沢出合から所要3時間30分)で、2つの廃道の欠点を取り除いた、後立山連峰の主稜線へ登るものとしては、最も容易なコースである。 爺ヶ岳の山名は、南峰と中央峰との間、白沢の上部に、残雪期に種子蒔き爺さんの雪形が現れることから付けられたもので、爺さんが蒔く種を漬ける種池だ、というおまけまでついている。種池は主稜上の池塘で、そばには種池山荘があり、幕営地にもなっている。この西方にも棒小屋沢乗越の池がある。種池から南峰にかけて、またその南斜面も広大なお花畑である。 積雪期の爺ヶ岳東面は、ヒマラヤひだが発達して壮観で、いくつかのバリエーション・ルートが拓かれている。

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