雨予報でも安心して、山に行けるよう――知っておきたい山の雨のこと
質問:最近、雨予報が多くて山に行けていません。レインウェアなどの装備は一式持っていますが、実際に山で雨が降ってきた時に、ちゃんと対応できるか不安で、天気予報に雨マークがついていると登山に行くのをやめています。結局、雨が降らなくて「山に行っておけばよかった~」という日も多くあります。
雨の予報でも安心して、山に行けるようになりたいです。
「明日・・・雨、大丈夫ですか?」 実際、よく聞かれる質問です
一般的には山は晴れていた方が楽しいでしょう。雨具は鬱陶しいし、霧やガスで、せっかくの展望も期待できないと想像すると、「晴れた日に出直そう」と思うのはよくわかります。ただ、低気圧の通過や、前線の停滞など“間違いなく、この日は雨だ”とわかっている時だけに雨が降るわけではありません。地域の天気予報で降水確率が0%であっても、山では雨にあう可能性があるので、登山をするのであれば、雨とは付き合っていかなくてはいません。
では、雨とどう付き合うか? 静かにシトシトと降る雨なら、キチンとレインウェアを着て、滑りやすくなっている登山道に気をつけて、丁寧に歩けば大丈夫です。
2018.9.20 竹田ハイキングクラブさんの登山記録より
雨の装備で気をつけたいこと
最近のレインウェアは、防水透湿性のあるタイプが一般的なので、昔よりは身につけていても快適に行動できるようになっています。よほど激しい雨でなければ、防水性はほぼ大丈夫と考えてよいでしょう。ただし、透湿性については、蒸れにくくなったといっても、雨具を着れば、ほとんどの場合、内側は汗でシットリとします。雨具を着た時は、中を薄着にして、スピードを落として気持ちゆっくり歩くなどの配慮が必要です。
ザック自体が防水でない場合は、持ち物が濡れないようにザックカバーをします。ただ、ザックカバーだけでは、背中とザックの間などの隙間から雨がはいってくるので、強い雨や長時間の雨には対応できません。準備の段階で、持ち物は防水のインナーザックや大きいビニール袋に入れておいたり、貴重品や下着の替えなど絶対に濡らしたくないものは、小分けにしてジップロックなどの完全防水の袋に入れておいたりするなどの工夫が必要です。
付き合うのが難しいのが“雷雨や豪雨”です
雷雨や豪雨の気配がした場合、まず自分が歩く予定のコースが短時間に降水量があっても問題がないかどうかを確認してください。よく使われている登山道でも、ぬかるんで通行困難な危険ルートに変身することもあります。
特に沢沿いのルート、何回も沢を渡るコースなどを予定している時は要注意です。普段だと一跨ぎできるような小さな沢が、大きな流れになって渡れず、それ以上進めない・戻れないということは山では珍しくありません。沢沿いのコースを予定する場合は、雨が強くなる前にエスケープルートを考えておく必要があります。また、予定のコースにこだわらずに、状況によっては引き返す決断をしましょう。
山の雨との付き合い方。もうひとつの答え
「昔は、晴れていれば良い天気・・・と思っていたが、この奥秩父では、そうじゃないんだ。霧が流れて、静かな雨で苔がシットリとして、原生林がボウっと浮かび上がる・・・そんな時が一番、山がキレイなんだ。ここでは霧雨の日が、良い天気なんだ」。
昔、奥秩父で長年にわたり小屋番をされていた方に、言われた言葉です。 雨との上手な付き合い方・・・これも一つの回答かもしれません。
2018.9.30 Yamakaeruさんの登山記録より
2018.9.20 yamaocchanさんの登山記録より
プロフィール
山田 哲哉
1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。
著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
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