歩き方のクセは、足の裏から改善できる。足の裏をリセットしてケガや転倒を防ごう!
登山で使う身体と聞くと、脚ばかり注目されがちだが、「足」「足裏」も重要な役割を担っている。そこで今回は視点を変えて、「足底のリセット」について説明する。
登山中に、山と人の唯一の接点が「足底(足の裏)」です。足底は、体を押し上げて山に登る力を地面に伝えたり、受け取とったりする力学的な「作用・反作用の境界面」としての役割だけでなく、地面からの情報(柔らかいのか、もろいのか、滑るのか、デコボコしているのか、斜めなのかなど)を受け取る「感覚受容器」の役割も持っています。
実際の登山では素足でなく、登山靴(および靴下)を履くため、登る力や地面の情報は、登山靴が「橋渡し」することになります。この際には、グリップ力や衝撃・ブレの軽減など登山靴の機能が発揮されます。求められる機能は山によって異なるため、登山靴選びはとても重要です。
登山愛好家の中には登山靴の選び方やメンテナンスの知識を学んで、しっかり実践されている方も多いのですが、それを受け取る自分の体・足底のメンテナンスまで気を配る方は少ないと思います。
足底を見れば、その人の歩き方が分るといっても過言ではありません。そこで今回は足底の機能とメンテナンスについてご説明いたします。
足底も「三点支持」が大切!
岩登りの基本である三点支持(三点確保)と同じように、足底にも姿勢を安定させるための三点があります。その三点とは。拇指球(親指の根もと)、小指球(小指の根もと)、踵(かかと)です。
この三点を結んだラインは横アーチ、内側縦アーチ、外側縦アーチといった「アーチ構造」をつくり、衝撃の吸収やバランスの維持をしています。
間違ったフォームなどで、この三点とアーチに偏った負荷がかかってしまうと、体の軸・姿勢にも影響が出てしまい、ヒザなどの関節痛を起こすこともあります。正しく足底の三点支持ができているかどうかは、足指の変形や、角質硬化、タコ、魚の目などから推測することができます。
次に上の写真のリセット前の小指にご注目ください、親指から薬指までは上を向いているのに、小指だけが横を向いているのが分かります。これは寝指(ねゆび)といわれる状態です。
寝指には様々な原因がありますが、この人の場合は大きめの登山靴を履き、ガニ股で斜面を登ることで、外側縦アーチに大きな負荷をかけ続けたことが原因で変形したと思われます。
外側に重心がかかることで足首が捻挫しやすくなっていました。また、寝指になることで横アーチがくずれ、中指の付け根にタコができていました。
この程度の変形であれば、
- 靴を自分に合ったサイズにすること
- 歩き方のフォームを改善し、内側縦アーチに少しだけ重心をかけるように意識すること
- 毎日の入浴時に指の根もとをマッサージすること
この3つのリセットを行なっただけで、わずか2~3ヶ月で改善することができました。
入浴後の保湿&マッサージで足底の感覚を研ぎ澄ます
足底にはバランスをとったり、地面の情報を得たりするセンサーであるメカノレセプター(感覚受容器)が多く存在しています。足底の角質化やタコ、魚の目などがあると、このセンサーの働きが鈍り、情報を正しく得ることができなくなるため、転倒のリスクが高まります。
角質化を予防するには、サイズの合った靴や足底に負担をかけないフォームが重要ですが、毎日の保湿ケアも大切です。入浴後に保湿オイルやクリームを塗りながら、指をかるく引っ張ったり、指の付け根をもみほぐしたりしましょう。
マッサージをするときには「手足の指組み」をしてみましょう。付け根まで深く組みながら、気持ちの良いところまで、足の指をそらしたり屈めたりします。なお、子供の靴はサイズアウトしやすく、サイズがフィットしていないことが多くあります。親子登山をした後には、子供にも手足の指組みを教えて、足底をリセットさせてあげましょう。
男性にとっては保湿&マッサージは抵抗があるかもしれませんが、マッサージをしながら、変形や角質化、タコ、魚の目などがないかをこまめにチェックすることはとても大切です。少しでも違和感がある場合は、靴や靴下選び、歩くフォームを考え直すチャンスです(変形が大きかったり、痛みがあったりする場合や、魚の目・水虫などの症状は放置せずに、お医者さんに相談してください)。
足底をリセットして10年後、20年後も安全登山ができるボディを目指しましょう。
プロフィール
登山ボディをリセット&メンテナンス!
管理栄養士・健康運動指導士・登山ガイドの資格を持ちながら、楽しく安全な登山を案内する「いきいき登山ガイド・ヤッホー!!さん」こと芳須勲ガイドが、身体のリセット・メンテナンスの面から登山のトレーニングを指南。登山のための身体づくりを目指そう!