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ダウンジャケットのお手入れ術! プロが教える登山用品メンテナンス

登山道具の買い方・選び方、ショップのスタッフに聞きました!
道具・装備 2019年02月06日

登山に欠かせない保温着であるダウンジャケット。それに使われている天然素材である羽毛は、日頃の保管方法ひとつで保温性が変わってくることも・・・。そこで、ダウン製品本来のパフォーマンスを下げないためにどうお手入れすればいいのか、さかいやスポーツ 高橋さんに「ダウンジャケットのお手入れ」について聞いた。

取材/文=辻 歌

 

ダウンジャケットのベストな収納方法

ダウンジャケットが豊富にそろう、さかいやスポーツ ウェア館


ライターT:今日は、ダウンジャケットのお手入れ方法について教えてください! まず、登山で着用した後は、どのようにすればよいのでしょうか?

高橋さん:登山から帰ってきた後のダウンジャケットは確実に湿気を含んでいるので、たとえ「乾いている」と思ってもすぐにクローゼットに入れないことが重要です。家の中で、少し風の通るところに1晩くらい置いてからクローゼットに収納してください。

ライターT:以前、「登山用ダウンジャケットの賢い選び方(リンク)」でうかがったように、ダウンジャケットに入っている羽毛は水濡れや湿気に弱く、湿気を帯びてしまうだけで保温性がかなり低下してしまうとのことでしたね。休憩時に着用するだけで汗をかかなくても、自然環境下でのさまざまな湿気を吸っている可能性も・・・。だから、ダウンジャケットの表面は乾いていても、しっかり中の羽毛まで乾かしたほうがよさそうですね。

高橋さん:クローゼットの中では、次に着用する機会がすぐあるようなタイミングなら、太めのハンガーにかけておくだけでOKです。しばらく着用しないようなら、メッシュや不織布など通気性のある大きめの袋に入れて、湿気がたまらないようにして保管を。クローゼットや押し入れなどの収納スペースの湿度にも気を付けて、保湿剤などを利用して多湿にならないようにするといいでしょう。このときに大切なのは、きちんと畳まず、中の羽毛をしっかり膨らませてあげた状態で収納すること。羽毛の保温性は、復元力が命なので、なるべく膨らんでいる状態でしまっておきたいからです。

長期間収納するときは、ふわっと膨らませた状態で保管して


ライターT:ダウンジャケットに付属しているスタッフバッグに収納して保管しておくのは、ダメなのでしょうか?

高橋さん:スタッフバッグにジャケット本体を小さくして収納しておくと、生地表面にシワができて、それが取れなくなることも。また、羽毛の膨らみを抑えて袋に詰め込んでいる状態だから、広げたときに復元する力が弱まることも考えられます。それらの理由から推奨はできないけれど・・・収納スペースの都合もありますから、僕はそのデメリットを理解した上で、スタッフサックに収納しているアイテムはあります。

 

ダウン製品は洗う?or 洗わない?

ライターT:では次に、収納前のお手入れについて。ダウンジャケットは「洗うほうがいい」「洗わないものだ」という相反する説がありますが、結局、洗うのはどうなのでしょうか?

高橋さん:基本的には、「ダウン製品は洗うほうがいい」という考え方です。ただし例外があるので、どのアイテムでも、まずはケアラベルを確認して。ケアラベルを見て、「洗濯機で弱い洗濯処理」「手洗い」などどんな表記でも「洗濯処理ができる」とされるマークが付いていれば洗濯してOKです。

ライターT:よく見ると、多くのダウンジャケットは、洗濯ができる表示が多いですね! どのようなものが、洗濯不可なのでしょうか?

高橋さん:羽毛自体が洗濯できないのではなく、生地やパーツの特性によって洗濯できないものがあります。そもそも原料となる羽毛も、大抵は洗浄されてから使われていますから、洗って大丈夫なものが多い!

ライターT:ダウンジャケットを洗うとして、クリーニング店へ出すのか自分で洗濯するのか、迷うところです・・・。

高橋さん:ほとんどの羽毛製品がドライクリーニングNGなので、クリーニング店でも水洗いをします。そうすると、基本的には自分で洗うときと同じことをするわけです。ただし、仕上がりの美しさの点ではクリーニング店が勝ることも。ダウンジャケットの表生地は洗濯をすることで細かいシワが入ることがあり、自宅洗いよりクリーニング店のほうが表面の仕上がりはキレイかと思います。だから、ファッション性を重視するならば専門店に出すのもいいでしょう。多少のシワを問題視しないなら、自分で洗っても汚れは十分落とせます。

ライターT:表面のシワのほかに、洗濯をするデメリットはありますか?

高橋さん:ダウンジャケットの縫い目は布に針を刺して縫っているから、洗うたびに針穴の部分がほんの少しずつ広がっていき、それに伴い、羽毛抜けのリスクもだんだん増えていきます。でも、そのデメリットよりも、きちんと洗濯して保温性を保てるメリットのほうが大きいので、ぜひ洗ってください!

ライターT:洗った方が保温性を保てるとは、どういうことでしょう?

高橋さん:先ほども話したように、ダウンジャケットを着ていると、汗や外気に含まれる湿気を羽毛が必ず吸います。その中に、カビや臭いのもとになる成分が入っているのです。汚れが付着したり、湿気を帯びたりした羽毛はあまり膨らまなくなってしまい、保温性が低下します。だから、不純物や汚れをなるべく取り除いたほうがいい。

ライターT:臭いも気になりますもんね・・・。

高橋さん:もともと羽毛の臭いがあるところに汗の臭いもプラスされると、どんどん臭くなって・・・。登山用のダウンジャケットと言っても洋服なので、清潔感があるほうが心地いい。精神衛生上も、洗った方がいいですよ(笑)

ライターT:どのくらいの頻度で洗うといいですか?

高橋さん:テントでも山小屋でも泊まりの山行をするくらいの使用を目安に、洗うといいでしょう。頻繁に山へ行く方なら、シーズン中に何度か洗濯することになりますね。最低でもワンシーズンに1回は洗うことで、羽毛の機能性を保ちやすくなります。街でのファッションとして着るなら頻繁に洗う必要はないかもしれないけれど、山だと保温性の確保はかなり重要度が高いですから、できるだけこまめに洗うようにしてほしいです。

 

ダウンジャケットの正しい洗い方

ライターT:では実際に、自分で洗うテクニックを教えてください!

高橋さん:大前提として、「ダウン専用の洗剤を使うこと」と「柔軟剤を使用しないこと」が大切です。登山用品店ではダウン専用洗剤を販売しているので、それを使うといいでしょう。

ダウン専用洗剤であるニクワックス「ダウンウォッシュダイレクト」


高橋さん:まずは、洗うアイテムのケアラベルを確認して。ほとんどは、弱めの洗濯処理を推奨する「ジェントルかくはん」や「手洗い」などの表示があるはずです。そのケアラベルの表示に沿ってすればよいですが、今回は手洗いの方法をお教えします。
まず、大きめのバケツなどを用意して、そこに水を張って、ダウン専用洗剤を適量入れて押し洗いします。羽毛を引きちぎってしまうと良くないので、ゴシゴシこすらずに、しっかり押し洗いを。洗いで気をつけることは、実はそれだけでOKなんです。

ライターT:生地の汚れなどが気になるときは、どうすればよいですか?

高橋さん:日焼け止めやファンデーション、ラーメンの汁など、なかなか落ちにくいですよね(笑)。そのような汚れがある場合は、汚れている部分に同じ洗剤を原液のまま直接つけて、やわらかいブラシや指で広げてから通常通り洗うといいでしょう。

ライターT:洗いは、意外と簡単ですね!

高橋さん:大切なのは、洗った後のすすぎです。きれいな水に取り替えながら3~4回、水がまったく泡立たず、濁らない状態まですすいでください。

ライターT:すすぎが足りず、羽毛の中に洗剤が残っていると、それも良くなさそうですもんね・・・。

高橋さん:きちんとすすいだ後のダウンジャケットを水から取り出すと、ほぼぺったんこになっています。そのまま庭やベランダなどに持って行って、直射日光が当たるのを避けつつ、スノコやネットなど平らに干せるものの上でしばらく水を切ってください。ぎゅっと絞らずに、濡れたままです。

洗った後、初めのうちは平干しするのがポイント


ライターT:ハンガーにつるして干したらダメなんですね。

高橋さん:びしょ濡れのままハンガーにつるすと中の羽毛が片寄ってしまうので、しばらくは平干ししてください。だんだん水が切れてきて、「表の生地は乾燥していて、内側は湿っている」くらいの乾き具合になったら太めのハンガーにつるして干して大丈夫です。

 

羽毛は“ほぐしながら乾かす”のが重要!

高橋さん:干しているうちに適度に風をはらんで、生地が全体的に乾いてきて「羽毛が8~9割ほど乾いたと思う程度(羽毛はぺったんこの状態)」にまでなったら、最後の仕上げに。家の中に取り込んで、ダウンジャケットをひたすら叩いてください!

ライターT:なぜ叩くのですか?

高橋さん:洗濯した後の羽毛は、くしゅっと固まった状態になっています。たとえるなら、ティッシュペーパーを水に濡らして丸めたような・・・。その形のまま温風で乾燥してしまうと、羽毛同士が固まったまま乾いてしまう。それでは、ふわっと広がってこそ保温性を発揮できるダウンジャケットが台無し。だから、羽毛をほぐしながら乾かすために叩くことが重要なのです。ちなみに、ケアラベルで「タンブル乾燥ができる」とあるものは、乾燥機の低温乾燥で乾かすと、叩くのと同じような効果があります。

ポンポンポンと空気をはらませながら叩いて乾かす


ライターT:叩きながら乾かすのは、どれくらいの時間ですか?

高橋さん:1~2時間は、叩きます。僕はテレビでも観つつ、エアコンの下とか布団乾燥機から温風を出しながらひたすら叩く。羽毛がちょっと片寄ったなと思ったら、ジャケット全体をバサバサと振って均一にして、叩きながら最後に乾くようなイメージです。この仕上げをするかしないかで、保温性がすごく変わります!

ライターT:乾ききった目安は?

高橋さん:購入したころの状態までしっかり膨らんだらOK。着たら「暖かいだろう」と、目で見てはっきり分かるほど膨らみます。

ライターT:ちなみに、ダウンではなく化繊インサレーションのジャケットでも、同じような手順になるのでしょうか?

高橋さん:化繊インサレーションの場合、洗ってよくすすぐところまでは同じ。だけど、その後は普通に干しておいて、すべて乾けば元の保温性がある程度戻ります。そういう意味で、お手入れがとてもラクなのが化繊インサレーションのメリットです。

ライターT:ダウンジャケットのお手入れは手間がかかりますが、そのぶん愛着が湧きそうです。

高橋さん:私たちの店では「時間はかかるけど、この手順通りにきちんとすれば洗濯できる!」と伝えています。忠実に再現してくれた方は、想像していた以上に復元できるから、とても喜ばれますね。

ライターT:躊躇していたダウンウエア、ちゃんと洗濯します!

高橋さん:洗濯するのは、天気がよく乾燥した日にするのがおすすめ。僕は、登山用品の洗濯に適した日は朝早くに起きて、ダウンジャケットやレインウエア、シューズなどをいっきに洗う日にしています。手入れをきちんとすると、そのアイテム本来の機能性が発揮できるし、何より使うときの気分がいい! ぜひ、ダウンジャケットの洗濯に挑戦してみてください。

 

教えてくれた人

高橋 典孝(さかいやスポーツ ウェア館)

山の世界で働いて20年のベテラン。ウェアに関する知識はオタク級だが山道具も大好き!!
ゆったりオートキャンプからガッツリ登山まで何でもこなすが特に最近は、トレイルランニング、テンカラ釣りに没頭中。

さかいやスポーツ

創業以来、約60年にわたり神田神保町で全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店。ウェア、シューズ、ギアなど品目別の専門館を6店舗展開。ウェアや道具に詳しいスタッフが丁寧に解説してくれるので、ビギナーでも安心。

住所/東京都千代田区神田神保町2-48
TEL/03-3262-0432
営業時間/11:00~20:00
アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分

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