登山初心者でも分かる! 服装選びの基本 2 -シーン別おすすめレイヤリング-

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春から秋は、初心者でも登山にチャレンジしやすいシーズン。ただし、たとえ気軽に登れる山だといっても自然に向き合うかぎり、さまざまなリスクに備えた服装や装備の心がけが必要だ。そこで、登山における服装選び方の基本として第1回目の「レイヤリングの重要性」に続き、挑む山の標高や滞在日数に応じたおすすめのレイヤリングを、さかいやスポーツ 高橋さんに聞いた。

 

 

日帰りトレッキングでのレイヤリング

ライターT:前回「服装選びの基本1」では、レイヤリングの基本と、こまめな脱ぎ着の重要性について教えてもらいました。今回は、さらに具体的なアドバイスをお願いします!

高橋さん:登山は通常の生活より運動量が増えて汗をかきやすく、また突然の雨といった天候の変化に大きく影響を受けます。そのため、衣服を重ねて着て、状況に合わせて脱ぎ着することが大切だと第1回目の「レイヤリングの重要性」でお伝えしましたね。基本的なレイヤード(重ね着)の考え方は、標高の高い低いに関係なく同じです。ただ、泊まりがけの登山になるとプラスしておきたいアイテムも。また、たとえ夏でも標高が高いと寒くなる場合があるので、選ぶアイテムの厚みを変える必要もあります。

ライターT:ではまずは、春・夏・秋という比較的、気候が安定したシーズンに、日帰りで低山トレッキングに行くときのおすすめを教えてください。

日帰り登山でのおすすめコーディネート


高橋さん:ベースレイヤーには、吸汗速乾性のあるアンダーウェアもしくは、同じような機能を持ったTシャツやカットソーを着ましょう。標高1000m以下の低山で日帰りの場合は、吸汗速乾性のあるTシャツやカットソーだけでもOKです。パンツは、乾きやすくアクティブな動きを妨げない素材やデザインのものを選んでください。行動中に寒いようなら、薄手のフリースなど通気性や速乾性を備えたミッドレイヤーを重ねます。保温着としてダウンジャケットを携行していても、ダウンは雨や汗で濡れると機能を発揮できないので、歩いているときには着ないでくださいね!

ミレーの「K ライト グリッド ジャケット」は、オーソドックスなフリース

ザ・ノース・フェイスの「スーパーベントドライジャケット」は、
保温性力がありながら、行動中にも快適に着やすいミッドレイヤー


ライターT:雨が降ってきたり、ミッドレイヤーを着ても寒かったりしたときは、どうすればよいですか?

高橋さん:雨や風から身を守るためのジャケットを重ねます。雨が降ってきた場合に備えて、登山には必ずレインウェアといった雨具を持っていきましょう。風でひんやりと感じるときは、薄手でも風のあたりをやわらげてくれるウインドブレーカーがおすすめです。

レイヤリングのイメージ。詳しくは「レイヤリングの重要性」で

 

1泊以上の登山や長期縦走には、これをプラス

ライターT:日帰りではなく、山小屋やテントに泊まる登山をするときにプラスしたほうがいいアイテムは何ですか?

高橋さん:基本のレイヤリングは同じですが、ベースレイヤーには、生地が薄すぎないものや長袖を選ぶと寒暖差に対応しやすいでしょう。長袖のトップスは、袖のまくり上げで体感温度を調整しやすのがメリット。また、肌が露出しすぎないためケガや日焼け対策にもなります。

ハーフジップタイプで衣服内の温度調節がしやすいベースレイヤー、
マムートの「パフォーマンス ドライ ジップ ロングスリーブ」


高橋さん:それに加えて、1泊以上の登山の場合は、保温着を忘れないことが大切。しかも、なるべく保温性能の高いものがよく、「夏場にダウンジャケットを持っていくこと」も大げさではありません。標高が高い山は麓よりも気温が低く、特に朝晩は冷え込みます。また、天候の変化などでもぐっと冷えることがあるので、ザックのなかに忍ばせておくと安心です。

ウエスタンマウンテニアリングの「フラッシュジャケット」は、
軽量コンパクトなダウンジャケット


ライターT:ほかは、日帰りと同じで大丈夫でしょうか?

高橋さん:パンツは、生地が厚めのものを選ぶと、強風時や岩稜帯などでも安心感があります。

膝とヒップに耐摩耗パッチを配して強度を高めた
マウンテンハードウェアの「ダブルドラゴンパンツ」


高橋さん:アンダーウェアや靴下の替えは、最低でも1セット以上必要です。臭いが気になる・・・だけでなく、着ているものが濡れたのに乾かせないといった事態が起きたときのエマージェンシーアイテムとして重要なのです。なぜなら濡れて体が冷えてしまった場合、アンダーウェアが濡れたまま防寒着を着ても体は暖かくなりにくいから。全部の衣服を着替えられなくても、せめて肌に直接触れているアンダーウェアだけでも乾いたものにすると、体が発熱しやすくなります。

高橋さん:あと忘れがちなのは、帽子やグローブです。山で長時間にわたって日焼けすると体の疲れにつながるので、日除けの帽子はマスト。キャップでもいいですが、ぐるりとツバのあるハットタイプのほうが耳まわりもカバーしやすいです。また、登山中は転倒して手の平をケガする人がとても多く、そのリスクを軽減するためにグローブが役立ち、さらにつけることで防寒の役割も。また、鎖場や岩場ではグローブをつけていると安定しやすいです。

紫外線カット機能に優れたアークテリクスの「シンソロ ハット」


ライターT:長期縦走であるといいアイテムは?

高橋さん:基本的には、標高が高い山と同じですが・・・あえていうなら、ベースレイヤーにメリノウール素材を選ぶと、荷物を減らせます。

ライターT:「登山用アンダーウェアの選び方 2 -メリノウール-」で、メリノウールには天然の抗菌作用があって、防臭もできるとおっしゃっていましたね。長期縦走で何日か着続けても、臭いにくいとも!

メリノウールのアンダーウェアでおすすめは、
スマートウールの「メリノ150ベースレイヤーショートスリーブ」


高橋さん:そうです。臭わないから「着続けられる」とはいえ、濡れたときのために予備がもう1枚必要ですが、2枚あればOKという考え方もできますね。化学繊維(化繊)のアンダーウェアはどうしても臭いやすく、それを何枚も持ち歩くならメリノウールで枚数を減らしたほうが荷物も減る・・・ということです。

標高の高い山や縦走登山でのおすすめレイヤリング(商品名は下記)

 

残雪期のレイヤリングで気をつけること


ライターT:では、次のステップに進んだとして。たとえばゴールデンウィークに日本アルプスなど標高の高い山に行くと、まだ雪が残っていることが多いですよね。春・夏・秋のレイヤリングと雪山でのレイヤリングはかなり違うと思いますが、残雪期はどちらの服装をすればよいでしょうか?

高橋さん:ベースレイヤーやミッドレイヤーの基本はどの季節でもあまり変わりませんが、より保温性が高いものを選んでください。アウターは、できれば雪山を想定して作られたものを選びましょう!

ザ・ノース・フェイスの「ジップインバーサミッドジャケット」など、
中厚手で保温性の高いフリースがあると重宝する


ライターT:残雪期なら、手持ちのレインウェアで代用・・・という考え方もありますよね。

高橋さん:レインウェアでもダメではないけれど、雪があるのなら、ハードシェルといった雪山用ウェアの着用をおすすめしています。なぜなら、基本的にレインウェアはザックに入れて携行することがメインですが、雪山用ハードシェルは着て行動することがメイン。だから、厚めのミッドレイヤーと重ねたりグローブを装着したりしても動きやすいデザインだし、ヘルメットをつけたままフードが被れる形状になっている・・・など、雪山に必要な機能を備えています。さらに、同じゴアテックスなどの防水透湿素材でも、一般的なレインウェアに比べて厚めの生地を使用していることが大半で、厚みがあるぶん防寒性能も高まります。また、生地表面がザラザラした風合いのものが多く、万が一、雪上で滑落した際に摩擦を起こしやすくし、落下スピードを多少軽減させる役割があります。

ライターT:素材だけでなく、ディテールも雪山用になっていると。

高橋さん:アイゼンやピッケルで破損しにくいよう、部分的に補強生地が使われるなど、レインウェアにはない仕様になっていることが多いですね。

ライターT:残雪期といえども雪山は雪山。気を抜かず、雪山用のレイヤリングを考えることが大切だと肝に銘じます!

 

今回のおすすめ商品

ミッドレイヤー:ザ・ノース・フェイス「スーパーベントドライジャケット」

 

価格
18,000円(税別)
重量
330g

 

ジャケット:ブラックダイヤモンド「アルパインスタートフーディー」

 

価格
18,000円(税別)
重量
194g

 

パンツ:マウンテンハードウェア「ダブルドラゴンパンツ」

 

価格
16,500円(税別)
重量
470g

 


次回は「登山初心者でも分かる! 服装選びの基本 3」として、雨具の重要性や、登山におけるレイヤリングで、あると便利なアイテムなどをご紹介します。

 

プロフィール

高橋 典孝(さかいやスポーツ ウェア館)

山の世界で働いて20年のベテラン。ウェアに関する知識はオタク級だが山道具も大好き!!
ゆったりオートキャンプからガッツリ登山まで何でもこなすが特に最近は、トレイルランニング、テンカラ釣りに没頭中。

さかいやスポーツ

創業以来、約60年にわたり神田神保町で全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店。ウェア、シューズ、ギアなど品目別の専門館を6店舗展開。ウェアや道具に詳しいスタッフが丁寧に解説してくれるので、ビギナーでも安心。

住所/東京都千代田区神田神保町2-48
TEL/03-3262-0432
営業時間/11:00~20:00
アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分

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