冬山入門者必見! 一から学ぶ冬山グローブの選び方 第3回「メンテナンス方法とサイズ選びの注意点」

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冬山の過酷な寒さから指先を護る大切な装備、グローブ。準備しないといけないことは知っているけど、インナーグローブや一体型グローブなど種類が多くて、はじめはどれを買えばいいのか分からない・・・。そんな悩みを抱える冬山入門者のために、グローブの選び方のコツやメンテナンス方法などを、専門店のスタッフに聞いてきました!ラストは、メンテナンス方法やサイズ選びの注意点についてお伝えします。

取材・文=吉澤英晃

⇒第1回「グローブの種類とオススメモデル」

⇒第2回「山行による使い分けのコツ」

 

グローブリーシュで強風に備える

ライター吉澤: 前回、前々回は、冬山で使うグローブの種類やそれぞれの使い方、メリット・デメリットについて詳しく教えていただきました。今回は前回の話の続きから、強風時にグローブの紛失を防ぐアイテムから教えてください。

篠塚さん: それがこのグローブリーシュです。輪になっているゴムバンドを腕に通して、末端のクリップをグローブに取り付けます。こうすることで手袋を外しても腕とグローブはグローブリーシュで繋がっているため、風で飛ばされる心配がありません。もともとグローブリーシュが付いている商品もありますが、付いていないモデルを買う時はセットで検討するといいでしょう。

グローブリーシュをつけた状態。風で飛ばされる心配がない

 

ライター吉澤: グローブは高価な装備なので、風で飛ばされて無くしてしまうのは避けたいものです。ただし、使用しているうちに汚れたりダメージを受けたりして、いつかは使えなくなってしまいますよね。一日でも長持ちさせるオススメのメンテナンスの方法も知りたいです。

 

メンテナンス方法は種類によって異なる

篠塚さん: 種類によってメンテナンス方法が異なるので、それぞれ分けて説明しますね。

まずは一体型グローブ。これは基本洗いません。使用後は陰干しをして内側まで乾かすだけで充分です。汚れがひどい場合は、その部分だけを中性洗剤で手洗いします。革が使われているモデルは、目で見て乾燥しているなと思ったら市販されている革製品専用の油や、防水ワックスの「スノーシール」などを薄く塗ってあげましょう。

厚手ウールグローブも、目に見えて汚れた場合以外は洗濯せずに乾かすだけでOKです。どうしても汚れが目立つようなら、一体型グローブと同様にその部分だけを中性洗剤で手洗いしてあげましょう。

オーバーグローブも、一体型グローブと厚手ウールグローブと基本は同じ。毎回洗濯する必要はなく、使用後に乾かすだけです。

最後にインナーグローブとサーマルグローブ。これは使用後に毎回洗っても大丈夫です。タグの洗濯表示にしたがって洗濯します。

素材によるメンテナンス方法も説明しましょう。

防水生地が使われている一体型グローブとオーバーグローブは、撥水性が落ちたなと感じたら撥水スプレーをかけてあげます。ウールで作られているグローブは、臭いがついたままにすると虫食いの恐れがあるので要注意。洗濯後は防虫剤を入れたプラスチックケースのなかで保管しましょう。

 

ぴったりサイズは試着してみないと見つからない

ライター吉澤: ウール繊維は洗濯すると縮むと聞いたことがあります。購入するときから大きめのサイズを選ぶべきでしょうか?

篠塚さん: インナーグローブはものによって縮み方が異なります。一概には説明できないので、店頭のスタッフに確認しながら選ぶのがいいでしょう。厚手ウールグローブについては、わざと繊維を縮ませて目を詰まらせたほうが保温性が上がるともいわれています。そういった使い方をする場合は1サイズくらい小さくなるので、それを考慮して大きいサイズを選びましょう。

ライター吉澤: 一体型グローブや化学繊維のインナーグローブ、サーマルグローブのサイズ選びで注意すべき点はありますか?

篠塚さん: 指が奥までしっかり入り、窮屈に感じないサイズを選びます。締めつけられるような感覚があると血行が悪くなり、それが冷えにつながるので注意してください。ただし海外メーカーの商品が大半なので、なかなか100%ぴったりというサイズはないかもしれません。

一体型グローブの下にインナーグローブを装着したいときは、インナーグローブの厚さを考慮して一体型グローブのサイズを選びましょう。場合によってはワンサイズ大きくしたほうがいいかもしれません。

S、M、Lのサイズ表記でもメーカーによってサイズ感は異なります。さらに同じメーカーのSサイズでも、男性用と女性用で分かれている場合は、まったく別の大きさと考えてください。これも1回目に話した対応温度域と同じで、カタログやインターネット上だけで判断することはとても難しいです。店頭で試着して確かめることが、サイズ選びで失敗しないベストな方法ですね。

 

クライミングやスキーに特化したグローブもある

ライター吉澤: 最後に、クライミング用やバックカントリー用など、より専門的なグローブもありますか?

篠塚さん: クライミングシーンには操作性が高い5本指タイプがオススメです。なかでもアイスクライミングで使いたい場合は、柔らかさにも焦点を当てて商品を選ぶといいでしょう。店頭では指先の感覚にも優れる薄手のモデルを勧めることが多いです。具体的にはブラックダイヤモンドの「アーク」や「パニシャー」などが候補に挙がります。バックカントリーの場合にも、保温性が高くて柔らかいグローブがオススメです。ブラックダイヤモンドの「レジェンド」などを選ぶといいでしょう。とても特殊ですが極地で活躍するダウンミトンというグローブもあります。手汗からの冷えを防ぐ目的で作られたファイントラックの「パワーメッシュインナーグローブ」という商品もあるので、ぜひ店頭でチェックしてみてください。

ブラックダイヤモンド/アーク
問い合わせ:ロストアロー https://www.lostarrow.co.jp/

 

ファイントラック/パワーメッシュインナーグローブ
問い合わせ:ファイントラック https://www.finetrack.com/

 

ライター吉澤: 冬山のグローブはとっても奥が深いですね。今回の取材でそれがよく分かりました。

篠塚さん: 冬山のグローブ選びは誰しもが必ず悩むポイントです。はじめて冬山に挑戦する場合は一人で悩まず、経験のある人に相談するといいでしょう。登山用品店のスタッフはその手助けをさせて頂きます。

 

プロフィール

篠塚 優

カモシカスポーツ 山の店・横浜店勤務。ウェア&グローブ担当。高校時代から山を登りはじめ、大学時代にはワンダーフォーゲル部に所属。当時は年間100日以上山に向かい、連続して10日以上の計画に参加した経験もあり。卒業後も登山を続け、クライミングや沢登りの技術を習得。縦走、沢登り、クライミング、雪山と、四季を通して山を楽しんでいる。

カモシカスポーツ 山の店・横浜店

神奈川県下随一の品揃えを誇る登山用品専門店。登山入門者向けのウェアやバックパックを豊富に取り揃える一方で、店内にはクライミングウォールがそそり立ち、クライミングシューズやクライミングギアなど専門的な道具も充実。書籍コーナーも広く、一般書店に負けないほどのラインナップで古今東西の山の本が並んでいる。
住所:神奈川県横浜市西区高島2−6−32 横浜東口・ウィスポートビル1F
TEL:045-440-0711
営業時間:11:00〜20:00、土日祝日11:00〜19:00
アクセス:JR東海道本線ほか横浜駅東口から徒歩5分
https://kamoshika.co.jp/stores/yokohama

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