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一枚あれば登山の幅が広がる! マウンテンハードウェアのアクティブインサレーションを瑞牆山で試す

高橋庄太郎の山MONO語り
道具・装備 2020年03月31日

 

今月のPICK UP マウンテンハードウェア/コアシラスハイブリッドフーディ

価格:26,000円(税別)
サイズ:S、M、L
カラー:3色

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ここ数年、“アクティブインサレーション”と呼ばれる新機軸のウェアが続々と登場している。その特徴は「行動中も着られる」こと。これまでのインサレーションといえば防寒に特化したウェアというイメージが強く、それを着たまま行動すると蒸し暑くて不快なだけではなく、ウェア自体も湿って機能性が落ちるのが当たり前だった。だが、アクティブインサレーションは、通気性が高かったり、透湿性に優れていたりと、着たままで行動しても快適性が失われない。「行動していて暑くなく、止まっていて寒くない」という矛盾するような機能性をもつウェアなのである。純粋な保温性だけを見れば、従来のインサレーションには敵わないとはいえ、登山時の「行動着」の選択肢の幅を広げている。

 

シンプルな姿だが中綿に秘密あり! まずはディテールチェック

今回紹介するのは、マウンテンハードウェアの新作アクティブインサレーションである「コアシラスハイブリッドフーディ」だ。同社は昨年から引き裂き強度に優れるパーテックスクァンタムを使った“プレシェル”という新しい生地を使い始め、風を遮断しながらも、ほのかな通気性を持つ高撥水性素材のウェアを展開していたが、コアシラスハイブリッドフーディはそのプレシェルを表地に使っている。

見た目は非常にシンプルだ。ファスナーやドローコードの使用も最低限で、重量は男性用Mサイズで310gに抑えられている。

背面もすっきりしている。

バックパックを背負ったときに擦れやすい部分には縫い目がなく、縫い糸が切れる心配も少ない。

ディテールの工夫は必要最低限だが、首元のファスナーは肌に直接触れないように生地で覆われている。

ちょっとしたことだが、不快感を軽減するのに役立つ仕様だ。

ポケットは腰元の両サイド以外に、胸元にひとつ。右手が利き手の人には使いやすい位置である。

このポケットは内部の中綿で挟み込まれており、防寒性が高い。低温下ではバッテリーの消費が激しくなるスマートフォンなどを入れて保温するのに適している。

大胆にウェアをひっくり返し、裏側を見てみよう。

ボディからフードまで広がるグレーの生地は裏地で、イエローの表地との間に中綿が挟み込まれている。両サイドと裾の部分はイエローの表地のみとなり、この部分は保温力以上に通気性を重視したデザインだ。

非常に重要な中綿の素材は、通気性とともにストレッチ性が高い“プリマロフトゴールドアクティブ”。行動中は無用な体熱を排出し、行動を止めたときには体温を程よくキープする、まさに「行動着用」に開発された中綿だ。

同じくグレーに見える生地ながら、肩から腕にかけてはメッシュ素材の裏地が用いられている。この生地は汗をすみやかに吸収し、すばやく乾燥させる力が強い。

つまり、一枚のウェアのなかに「表地のみ」「表地とメッシュの裏地という2重構造」「表地と裏地に挟まれた中綿という3重構造」という3つの区画があり、通気性、吸汗速乾性、保温性、防寒性を分担している。このあたりが、ウェアのモデル名に「ハイブリッド」という言葉が入っている所以であろう。

こんなウェアの裏面は、裏地の使い分け以外はシンプルで、ポケットなどは付けられていない。

ウェアを脱いだときに、フックなどに引っかけるための細いループが取り付けられている程度である。

 

日差しが強く暖かかった瑞牆山で「着たまま行動」にトライ

さて、僕がこのインサレーションを試したのは、この連載の前回と同じ瑞牆山だ。

登山口を出発したときからコアシラスハイブリッドフーディを着用し、標高を上げていく。強い日差しに加え、標高が低い場所はほぼ無風。正直なところ、インサレーションを着なくても済むくらいの体感温度だが、むしろ汗をかくくらいのほうが実際の機能性がよくわかるだろうと、着用したまま行動を続ける。

30分もしないうちに僕は大量の汗をかき始めた。だが少し立ち止まっていると、すぐに涼しさを感じる。「プリマロフトゴールドアクティブ」の中綿が、無用な熱気を排出しているからに違いない。

メッシュの裏地はベースレイヤーから汗を吸い取り、すばやく発散させている……気がする。水蒸気の粒子は自分の目で見られるほど大きくはないので、あくまでも体感だけが基準だが、実際に汗の乾きは早いように思われた。もっと気温が低い時期であれば、湯気のように水蒸気が立ち上がっている様子が確認できたかもしれない。

メッシュの裏地は光を通すほど薄く、通気性は申し分ない。

一方、表地であるプレシェルは耐風性を持つ生地だが、直接口をつけて息を吹き込むと、少しだけ空気を通すのがわかる。つまり、強風が吹きつけても大部分の空気は受け流しつつ、わずかな空気を通すのみ。そしてプリマロフトゴールドアクティブの中綿と連動し、無用な湿気と熱を排出する。まさにアクティブインサレーションらしい機能性で、バランスがいい生地といえるだろう。

テント泊を行なう予定だった僕は、はじめに富士見平へ向かった。

水場の周囲は完全に凍結し、ツルツルと滑って歩きにくい。本格的な春が近づいていても、まだまだ山の気温は低いのだ。

小屋の近くにテントを張り、そのままの格好で瑞牆山山頂を目指していく。

途中の沢も凍結していたが、その表面は日光で緩み、水滴で光り輝いている。もう少しすれば、このあたりも新緑で覆われていくのだろう。

歩いているうちに少し気になったのが、袖の長さだ。マウンテンハードウェアはアメリカの会社だけに欧米人向けのデザインになっており、典型的な日本人である僕には少し腕が長いのである。とはいえ、行動に支障があるほど長いわけではないのだが。

袖がもう少しだけ緩ければ腕まくりできたかもしれないが、インサレーションであるコアシラスフーディにそれを求めるのは筋違いだろう。

登山道の脇には、いつものように大ヤスリ岩がそびえている。

ここまで来れば、山頂はもうすぐだ。

山頂に到着し、三脚を立てて記念撮影。暖冬で雪が少なかったのは前回で書いた通りである。

ここで僕は時間をかけ、前回ピックアップしたエクスペドのビビィブーティをテストしていった。詳しくは前回の記事をお読みいただきたい。

 

山中で何度も「停滞/行動」を繰り返し、使い勝手を確認

山頂付近で長い間うろうろしていると、いくらインサレーションを着ていても、次第に体温が奪われていくのがわかる。インサレーションといっても、これは“アクティブインサレーション”。得意とするのは「行動時」であり、停滞時の保温性は一般的なインサレーションほどではないのは仕方ない。

僕ははじめにフードをかぶって冷気をしのいでいた。コアシラスハイブリッドフーディのフードはとても簡素な作りで、ドローコードすら省かれている。しかし頭部へのフィット感は悪くない。

フードのフィット感がよいのは、プリマロフトゴールドアクティブの中綿に伸縮性があるだけではなく、表地のプレシェルもストレッチ性を持っているからだ。

しかし、現代のアウトドアウェアとしては、それほど伸縮性が高いわけではない。プレシェルは伸縮性よりも防風性を重視した素材だからだろうが、それでももともと柔らかな素材なので着心地は充分によく感じられる。

伸縮性はそこそこながら、プレシェルの撥水性は非常に高い。

雪解けでできた水を振りかけると、玉のように水を弾くのがわかる。小雨程度であれば、少しの時間はしのげそうである。

フードからは省略されていたドローコードだが、ウェアの裾には取り付けられている。

しかしコードストッパーは一カ所のみで、やはり徹底的にシンプルにデザインされているという印象だ。

 

山頂に長時間滞在しているうちに僕の体はさすがに冷え、コアシラスハイブリッドフーディの上に持参していたハードシェルジャケットを重ねた。

このレイヤードにより、プレシェルとプリマロフトゴールドアクティブがもつ通気は、完全に遮断。体温が戻っていくことがよくわかる。行動着としてのアクティブインサレーションのポテンシャルは高いが、吹雪に襲われる可能性もある寒冷期は、やはり完全な防風性と防水性をもつハードシェルと併用するのがよさそうだ。

下山のためにハードシェルジャケットを脱ぎ、再びコアシラスハイブリッドフーディのみになる。そのときの写真が以下のもので、このカットには僕のちょっとした不満が写しだされている。

それは、バックパックのウエストハーネスがウェアのサイドポケットの位置と重なり、ポケットが使いにくくなっている点だ。行動中に着ることを想定したウェアなのだから、ポケットはバックパックのハーネスと干渉する位置から外れていたほうがいい。多くのハードシャルジャケットのように、ポケットは胸元の左右にあったほうが便利なのではないかと思うが、このウェアのポケットは収納性よりも、ハンドウォーマーとしての保温性を重視した結果なのかもしれない。

富士見平小屋に戻り、僕はテント内で寛ぎ始めた。

日が暮れていくと気温は下がり、行動を止めた体は体温をキープし切れなくなってくる。だが僕は他の防寒着をさらに重ねる前に、コアシラスハイブリッドフーディのみで瑞牆山がよく見える場所まで散歩に出た。

夕日を浴びる瑞牆山は、さすがに美しい。こういう風景を楽しめるのは、山中に宿泊してこそだ。その後、再びテントに戻った僕はコアシラスハイブリッドフーディの上に別のインサレーションを重ね、たった一人の寒い夜を過ごしたのだった……。

 

まとめ:「コアシラスハイブリッドフーディ」を使うなら、こんな場面で

このコアシラスハイブリッドフーディが発売されたのは、今年の2月である。つまり、秋冬用の製品ではなく、これからの温暖な時期にも着ることを想定した機能性をもつということだ。

今回は標高が低い場所では温かすぎるくらいだったが、小屋と山頂の間は非常に調子がよく、アクティブインサレーションらしい「暑くもなく、寒くもなく」という着心地を実感できた。山頂に長時間滞在していると寒くなってしまったが、“アクティブではない”状態なのだから、当然といえば当然である。

そんな状態だったことを踏まえてこれからの季節の使い方を考えれば、まずは残雪の高山での行動着。より気温が上がった夏場のテント泊や小屋泊の際は、一般的な防寒着としても利用できる。その場合、行動着として着用するわけではないが、蒸れがすみやかに発散され、程よい保温力をもつことは、夏場の“アクティブではない”ときにはちょうどよいのではないだろうか。

秋から春にかけては山中の行動着として、夏はテント場などでの保温着として、コアシラスハイブリッドフーディは一年中活躍しそうである。比較的リーズナブルな価格でもあり、一着持っていると登山の幅が広がるはずだ。

 

今回登った山
瑞牆山
山梨県
標高2,230m

関連する登山記録はこちら
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防寒具
教えてくれた人

高橋 庄太郎

宮城県仙台市出身。山岳・アウトドアライター。 山、海、川を旅し、山岳・アウトドア専門誌で執筆。特に好きなのは、ソロで行う長距離&長期間の山の縦走、海や川のカヤック・ツーリングなど。こだわりは「できるだけ日帰りではなく、一泊だけでもテントで眠る」。『山登りABC テント泊登山の基本』(山と溪谷社)、『トレッキング実践学 改訂版』(枻出版)ほか著書多数。

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