ストレッチで股関節の柔軟性を高めれば、登りも下りも楽になる。股関節周囲の筋肉のストレッチ方法

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股関節周囲の柔軟性は、登山では欠かせない要素となっているものの、どうして重要なのか/どのように柔軟性を高めれば良いのかについて、わからない人も多い。そこで今回は、取り組んでもらいたい股関節周囲の筋肉のストレッチ方法について解説する。

 

こんにちは。登山ガイドの野中です。先月の記事では骨盤周囲の柔軟性について解説しました。今月はこの続きとして、股関節周囲の柔軟性について解説していきたいと思います。

★前回記事:骨盤の柔軟性を高めるエクササイズで、効率の良い歩行技術を高めよう!

人間の体は股関節を中心として脚を前方に上げる(屈曲させる)と90度以上曲げることが出来ますが、反対に脚を後方に上げる(伸展)動きは15~20度程度が一般的です。

股関節屈曲(左)と、股関節伸展(右)


このように、人体の構造上、股関節は屈曲させるよりも伸展させる動きが苦手であると言えるでしょう。

しかし、人間の脚の動きは股関節が起点となって動いています。脚を後方へ動かす(伸展させる)可動域が狭いと、上手く前方へ体を推進させることが出来ません。その代償として、足先を使った「蹴り足」動作に依存する歩き方になってしまいがちです。これでは、ふくらはぎの筋肉への負担が大きくなるうえに不安定となり、落石を起こりやすい歩き方になってしまいます。

また、下山時の歩行では、後ろ足が体重を長く支持し続けることで、着地時の衝撃が大きくなる「ドスン着地」を防いでいます。しかし、脚を後方に動かす(伸展させる)可動域が狭いと、着地をする前足での衝撃を吸収するだけの歩き方になり、着地衝撃が大きくなります。そのため、スリップしたりバランスを崩したりしやすく、膝関節や大腿四頭筋への負担が大きくなってしまいます。

「股関節のストレッチ」と言うと、一般的には股関節を左右に開くストレッチを想像する方が多いかもしれません。しかし、歩行時に足を左右に動かす機会は少なく、前後に動かすことが大半です。大きな段差など一歩が大きくなるシチュエーションでは、大きく前後に股関節を動かす必要性があるのです。

効率の良い登り、安定して歩行速度を制御する下り、どちらの状況でも、股関節を伸展できる柔軟性を持っていると楽に歩くことが出来ると言えます。

そこで、今回は股関節周囲の筋肉のストレッチ方法を複数紹介しますので、日常的に柔軟性向上に取り組んでみて頂ければと思います。

 

腸腰筋のストレッチ

上半身が前かがみにならないように注意しながら伸ばす

 

大腿筋のストレッチ

両手で上半身を支えて、大腿部と上半身が一直線になるように倒す

 

腸腰筋・大腿筋の同時ストレッチ

 

バランスを崩しやすいので壁などに片手を置き、つま先か足首を持って伸ばす

 

タオルを活用したストレッチ

足首を掴むことが難しい方は細く折ったバスタオルを使って足首を保持し、ストレッチすることが可能

 


上記、4つのストレッチはいずれも、写真の姿勢よりもさらに胸を張って、首を後ろに倒すと、さらにストレッチ効果が高まりますので試してみてください。以下の動画で確認しながら試すと効果的です。


動画では、これら4つのストレッチ法と合わせて、最後にダイナミックストレッチもご紹介しています。登山前の準備運動の際には、通常のストレッチ(静的ストレッチ)よりもダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)の方がおススメです。特に冬場の登山の前のウォーミングアップに活用して頂ければと思います。

なお、私が主催している「山の歩き方講習会」「登山歩行技術講習2Days」は主に10~5月に定期的に開催しています。詳しくはホームページをご覧ください。

 

プロフィール

野中径隆(のなか みちたか)

Nature Guide LIS代表。大学3年の夏に「登山の授業」で山の魅力に取りつかれ、以来、登山ガイドの道へ進む。「初心者の方が安心して登山できる」環境づくりを目標に積極的にWeb上で情報を発信するほか、テレビ出演、雑誌、ラジオなど各種メディアでも活躍中。
日本山岳ガイド協会・認定登山ガイド、かながわ山岳ガイド協会所属。
⇒ Nature Guide LISホームページ

理論がわかれば山の歩き方が変わる!

日頃、あまり客観視することのない「歩き方」。しかし山での身体のトラブルや疲労の多くは、歩き方の密接に結びついている。 あるき方を頭で理解して見つめ直せば、疲れにくい・トラブルを防ぐ歩行技術に近づいていく。本連載では、写真・動画と一緒に、歩き方を論理的に解説。

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