地図アプリの基礎知識。登山中や記録に便利なGPSを使ったナビゲーション機能、トラックについて学ぼう

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現在地が一目でわかって便利な地図アプリ。読図を学んで使いこなせば、さらに頼もしい山のパートナーになるはず。地図読み講習会の講師も務める佐々木亨さんの『地図アプリで始める山の地図読み』(山と溪谷社)から、地図アプリの基本機能を紹介します。

※本記事では、「ジオグラフィカ」「スーパー地形」を例に、地図アプリの基本機能を解説していきます。機能の詳細や操作方法は、それぞれの地図アプリのマニュアルを参照するようにしてください。

 

 

関連記事:登山者なら知っておきたい地図アプリの基本機能。地形図の種類とダウンロードについて

 

現在地を測位するGPS機能を使う

GPSは、人工衛星からの信号を利用して、位置を測位する機能です。まずは、地図アプリが位置情報を使用できるようにスマートフォンの設定を確認しておきましょう。iOS、androidともに、アプリが使用する位置情報について「使用中のみ許可」「正確な位置情報」をオンにします。詳しくは、機種やOSのサイトで検索するとよいでしょう。

 

また、向きの設定と同様、山へ出かける前に公園などでGPSの機能と精度を試してみましょう。GPS信号は、大気中の層や地上の大きな建造物などに影響を受けます。おおむね空が開けた場所では精度が高く、空を見渡せない場所では、誤差が大きくなります。

山中では、深い谷沿いやコンクリートの法面が設けられた林道などで、誤差が大きくなることがあります。誤差は数m程度から数十mまで、状況によりますが、地図アプリを使いながら、こんな場所では誤差が大きくなると、やはり経験的に覚えていくことが早道です。

 

任意の地点をウェイポイントに設定

地図上に設定した任意の地点を「ウェイポイント」、アプリによっては「マーカー」といいます。たとえば登山計画時にガイドブックなどを参照して、コースの主要地点をウェイポイントに設定、登山行動中にその地点情報を利用します。

 

ウェイポイントには、登山口やコースの分岐点、方向が大きく変わる地点、休憩適地、景勝地、山小屋などを設定しておくと役立ちます。

ウェイポイントを設定すると、地形図上にアイコンや地点情報を表示できるほか、ウェイポイントに接近したらチャイムや音声で知らせてくれるナビゲーション機能を活用できます。

 

ウェイポイント(マーカー)の情報を表示、長押ししてロックオンすると、マーカーを目的地にしたナビゲーション機能を利用できる

スーパー地形のナビゲーション画面。ウェイポイントまでの距離や方向、到着予想時間などを画面表示と音声アナウンスで知らせてくれる

 

ウェイポイントを結んでルートを作成

設定したウェイポイントを結んで線にしたものが「ルート」です。次に解説する「トラック」とは違いますので、留意しておきましょう。

ウェイポイントは、必ずしも登山コース上に設定する必要はありませんが、ルートは基本的に歩くコースの出発点、通過点、到着点をつないで経路とします。

 

頂上や休憩地などのほか、方向が大きく変わる地点をウェイポイント(マーカー)に設定

 

ルートを設定する目的のひとつは、コースを下調べしながら、登山計画を「見える化」すること。先述した標高と距離のグラフもそのひとつです。

またルートを作成することで、登山中、次のウェイポイントまでの距離表示や接近アナウンスなど、ナビゲーション機能をより活用することができます。

 

ジオグラフィカでルートを作成、先に設定したウェイポイント(マーカー)を歩く順につないでいく。後で変更もできる
 

スーパー地形で、ルートをもとにナビゲーションを開始。次のポイントへのおおまかな方向をつかみながら歩く

 

歩いた軌跡トラックを活用

事前に設定したウェイポイント(マーカー)を結んだルートに対して、登山開始から終了まで、自分で歩いた軌跡を記録した情報が「トラック」です。GPSトラック、トラックログといった表記もされます。

 

 

トラックは、きわめて詳細な登山記録で、活用の幅が広い情報です。標高・距離を軸としたグラフに表示して、歩いたコースのアップダウンをつかんだり、自分の歩行ペースチェックするといった活用法があります。

またトラックは、GPXと呼ばれる一定のファイル形式で保存されます。これを友人やグループで共有し、山の情報交換に利用することもできます。

 

トラックを自動再生、スタートからゴールまで地形図上に軌跡が描かれ、自分の山行を短時間で振り返ることができる

 

スーパー地形で、同様にトラックとグラフを表示し、コースのアップダウンとともに、歩いた距離や所要時間、歩行ペースなどを確認

 

トラックを利用したナビゲーション

ウェイポイントを目標地点として、現在地からの距離や推定到着時間を表示したり、近づいたら音声で知らせてくれるしくみがナビゲーション機能です。ルートの経由地となるウェイポイントを順々にナビゲーションすることも可能です。

 

ジオグラフィカでは、トラックを表示してロックオンする。トラックを外れると、同様に音声やチャイムで知らせてくれる。マーカー( ウェイポイント)やルートを利用したナビとも併用できる

 

トラックを利用したナビゲーションは、既存のトラックを利用して、その軌跡通りに進みたいときに使います。トラックから外れるとアラームで知らせてくれるので、違った方向へ進むことを防げます。

 

スーパー地形のトラックナビ、往路に記録した自分のトラックを利用して帰路のナビを開始。目的地までの予想時間や距離をはじめ、もしトラックから外れると音声で知らせてくれる

 

同じ道を往復するときに、往路のトラックを復路で利用するといったケースのほか、友人やグループで共有したトラックを利用することもできます。

 

トラックはGPX形式ファイルとして保存され、メールやストレージを使って共有できる

 

※本記事は『地図アプリで始める 山の地図読み』をWEB用に編集して掲載したものです。

 

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著: 佐々木 亨
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【著者略歴】
佐々木 亨
1961年東京生まれ。幼少のころから家族で山歩きに親しみ、 丹沢や八ヶ岳、北アルプスに登る。10代後半には社会人山岳会 に所属、オールラウンドな登山に取り組む。 1985年に編集プロダクション・フォーエバーを設立。山岳ライターとして各地の山と自然の取材を続けている。主な著書に 『ヤマケイ アルペンガイド 八ヶ岳』『山麓から登る世界文化遺産富士山』『詳しい地図で迷わず歩く! 奥武蔵・秩父354㎞ 特選ハイキング30コース』(いずれも山と溪谷社)などがある。 初級者から指導者向けまで、各地の登山教室では地図読みの講師を務める。FacebookなどのSNSでは、日常の話題とともに、読者との交流や著書のフォローアップを行なっている。埼玉県鶴ヶ島市在住。 

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