膝が痛いけど山には行きたい! 「下らない山」関東編5選・続

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登山は大好きだけど、膝が痛くて下山が不安……。そんなシニア・高齢者に向けて、下山時に膝にやさしいコースを紹介します。乗り物を利用できたり、そもそも下りが少ないコースを関東近郊で5つセレクト。コースガイド最後にある標高グラフも参考にしてください!

文・写真=石丸哲也

目次

石仏群を巡り、ゴールのバス停がコース最高点 湯坂路(ゆさかじ)

神奈川県/約865m(六道地蔵バス停付近)
下りの累積標高差:約85m
山行適期:秋~初夏

金時山
浅間山の下りで金時山を望める

箱根は古来、日本の東西を結ぶ街道の要衝だった。足柄峠を越える古道が平安時代の富士山噴火で通れなくなり、開かれたのが湯坂路。江戸時代に旧東海道が整備されるまで利用された。今は浅間山(せんげんやま)、鷹巣山(たかのすやま)付近の尾根は防火帯の草原が続き、展望地もあって、楽しく歩ける。しかし、中世の箱根越えは難関であり、噴煙が上がる荒涼とした風景は地獄として恐れられたという。旅人を救う地蔵菩薩の信仰が盛んとなり、湯坂路 入口~精進池にかけて祭られた石仏や石塔が遺されている。

駒ヶ岳
精進池から箱根火山中央火口丘の駒ヶ岳を仰ぐ

スタートは箱根湯本駅。現代の東海道である国道1号を西へ進み、早川を旭橋で渡ってすぐ、湯坂路の入口に着く。山道に入り、30~40分も登ると、平坦な湯坂城跡に着く。この先は全体になだらかな樹林の尾根を登る。前半は樹林が茂っているが、後半は防火帯の切り開きで明るくなる。

湯坂路前半の樹林
湯坂路の前半は樹林の尾根道を登る
火帯を切り開いた草原
後半は防火帯を切り開いた草原が続く
二十五菩薩
大岩に彫られた磨崖仏の「二十五菩薩」

大平台(おおひらだい)駅からのコースを合わせ、ゆるやかに15分ほど登れば、東西に細長い浅間山山頂だ。ここも防火帯で秋はススキの穂波が揺れ、神山(かみやま)や駒ヶ岳を眺められる。ベンチが置かれて休憩にもよい。

神山
浅間山山頂の東端から神山を眺める

浅間山山頂の西端で南へ下り、急斜面を登り返すと鷹巣山山頂だ。かつて小田原の北条氏を守る鷹巣山城が築かれたとされている。湯坂路入口バス停へ、なだらかに下った後は国道1号沿いの歩道を西へ。

鷹巣山
小広場でベンチがある鷹巣山も休憩適地だ

途中「二十五菩薩」、「曽我兄弟と虎御前の墓」と呼ばれる五輪塔、関東最古の五輪塔で国重文の「多田満仲の墓」などが次々に現われる。国道1号をトンネルで往復する六道地蔵は高さ3.2mの巨大なもので、やはり国の重要文化財に指定されている。ゴールの六道地蔵バス停付近はこのコースの最高地点で「下らない山」の面目躍如たるところだ。

六道地蔵
かつては露座だったが、今は堂屋に収まる六道地蔵

MAP&DATA

高低図
ヤマタイムで周辺の地図を見る
最適日数:日帰り
コースタイム:3時間40分
行程:箱根湯本駅・・・湯坂城跡・・・湯坂山・・・大平台分岐・・・浅間山・・・小涌谷分岐・・・鷹巣山・・・湯坂路入口・・・六道地蔵
総歩行距離:約8,900m
累積標高差:上り 約835m 下り 約85m
コース定数:19
アドバイス:登山道、指導標は整備されて特に心配はない。四季を通じて登れるが、夏はやや蒸し暑い。冬の積雪は少ないが、凍結の備えをして出かけたい。箱根湯本駅からの登りが長く感じる場合は小涌谷(こわきだに)駅から登るとよい。途中、箱根の名瀑に数えられる千条(ちすじ)の滝を観賞できる。春は桜、初夏はツツジが美しい小涌園蓬莱園に寄るのも楽しい。 新緑は4月中旬~5月中旬、紅葉は11月上~下旬ごろ。
千条ノ滝
小涌谷駅コースの千条ノ滝。高さ約3mだが幅約25mあり、優美な姿だ
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プロフィール

石丸哲也

東京に生まれ育つ。オールラウンドな登山を経て、山岳ライター、登山・ツアーの講師などとして活動している。
山頂に立つことだけを目的とするのでなく、山を旅する感覚で、登るプロセスや自然にふれることを大切にして山を楽しむことを心がけている。
国内では北海道の利尻山から屋久島の宮之浦岳まで全国の山を登り、海外ではペルーアンデス、ヨーロッパアルプス、北米のヨセミテ、メキシコ、カムチャツカなどの山に足あとを残す。

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