見知らぬ登山者から言われた強い言葉が、今も心の底からよみがえって聞こえてくる

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山岳遭難事故の発生件数は減る様子を見せない。「どうしたら事故に遭うリスクを軽減できるか」、さまざまな角度から安全登山を見てきた久保田賢次氏は、自身の反省、山で出会った危なげな人やエピソード、登山界の世相やトピックを題材に、遭難防止について呼びかける。

 

先日、ある人と話をしていて「最近、ザックの外にマットなど色々なものを着けて登る人が増えたけど、岩場なんかでは危ないですよね」という話題になりました。

「『中にしまったほうがいいですよ』と伝えたいけれども、ファッション的かっこよさなどもあるのだろうし・・・、いきなり知らない人から言われたら気分を害するかもしれない。どんなふうに伝えたらいいのでしょう」、そんな会話でした。

確かに私たち登山者には「こんにちは」とあいさつを交わし合う文化はありますが、アドバイスや忠告となると、なかなか難しいものですよね。


そんな時思い返すのが、私が初心者だったころのある体験です。沢登りを経験してから、岩登りも覚えたいと、見様見真似で近郊の岩場で練習をしていましたが、周りで見ていた見ず知らずの人から「そんなやりかただと死ぬよ」と怒られたのでした。

いきなり、かなり強い口調で言われたので驚きましたが、今思い返すと、その言葉のおかげで、長く登山を続けてこられたのだと感謝しています。

その言葉は、その後も私の心に残り、なにかある度に心の底からよみがえって聞こえてきます。疲れていいかげんな足取りになってしまったとき、無理をしがちになったとき、突然に山に出かけたくなったとき・・・。

山に向かう私たちの気持ちは、ときにたかぶり、ときに迷い、ときに疲労困憊しと、確実な判断を忘れがちになってしまうこともあります。そんな時、登山者お互いの言葉の掛け合いが、事故の防止にもつながればと思う昨今です。

このようなテーマで、不定期ですが私が感じたことを記していければと思います、よろしくお願いいたします。

プロフィール

久保田 賢次

元『山と溪谷』編集長、ヤマケイ登山総合研究所所長。山と渓谷社在職中は雑誌、書籍、登山教室、登山白書など、さまざまな業務に従事。
現在は筑波大学山岳科学学位プログラム終了。日本山岳救助機構研究主幹、AUTHENTIC JAPAN(ココヘリ)アドバイザー、全国山の日協議会理事なども務め、各方面で安全確実登山の啓発や、登山の魅力を伝える活動を行っている。

どうしたら山で事故に遭うリスクを軽減できるか――

山岳遭難事故の発生件数は減る様子を見せない。「どうしたら事故に遭うリスクを軽減できるか」、さまざまな角度から安全登山を見てきた久保田賢次氏は、自身の反省、山で出会った危なげな人やエピソード、登山界の世相やトピックを題材に、遭難防止について呼びかける。

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