奥多摩・石尾根縦走路登山バッジを巡る。明るく展望に優れた稜線の山歩き

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奥多摩の春の魅力をお伝えしてきた本連載。今回は、番外編として、七ツ石小屋で販売開始された登山バッジを巡る山歩きを紹介する。ヤマツツジで彩られる6月も、ぜひ、奥多摩の自然を満喫してほしい。

 

石尾根のマイナーな山!?「千本ツツジ」「高丸山」「日蔭名栗山」

東京唯一の2000m峰、日本百名山の雲取山から東方に奥多摩駅まで伸びる石尾根。雲取山(2017m)、七ツ石山(1757m)、鷹ノ巣山(1736m)、六ツ石山(1478m)は有名だが、山容も立派で、それぞれに個性をもつ千本ツツジ(1704m)、高丸山(1733m)、日蔭名栗山(1725m)は、訪れる者の少ない、いわゆるマイナーな山だと言える。標高を見ると1700m代で、東京都に属する奥多摩の中では、いずれも10位に入り、堂々としている。もっと登ってほしい山だ。

この3つの山が、あまり知られていないのは山頂を繋ぐ登山道と平行に通る縦走路の存在が原因の一つだ。もともと東京都水道局の水源林巡視路として作られたので、一つ一つの山頂を踏むことなく、稜線の直下を巻いて、平坦な道が設定されている。登山者の多くは、この縦走路を歩く。

では、一つ一つの山を紹介しよう。赤指尾根の分岐から僅かの登りで行ける「千本ツツジ」は、その名の通りツツジが見事だ。南東側の斜面を、ヤマツツジを中心に、トウゴクミツバツツジや、ドウダンツツジが埋め尽くす。5月末から6月上旬にかけてはヤマツツジの朱色のトンネルが美しい。「高丸山」は遠くから見ても、直ぐにわかる三角錐の山容を持ち、山頂から富士山、大菩薩嶺、南アルプスの広大な展望が得られる。「日蔭名栗山」は、大きな山容で遠方から見た時、鷹ノ巣山よりも堂々として立派に思う。山頂北側のブナの森も素晴らしい。

千本ツツジを彩るヤマツツジ てんてんさん2019年6月16日の登山記録より

6座のピークを著した素敵な登山バッジ

七ツ石山の直下、雲取山鴨沢ルートの標高1597mに建つ七ツ石小屋が、「雲取山」「七ツ石山」「千本ツツジ」「高丸山」「日蔭名栗山」「鷹ノ巣山」、それぞれの登山バッジを、2022年4月から販売開始した。


雲取山にはルリビタキ、七ツ石山はコマドリ、千本ツツジはツツジと鹿、高丸山はビンズイ、日蔭名栗山ではヤマザクラと熊、鷹ノ巣山はタカ。それぞれの山に関連する花や鳥、動物と共に山のシルエットが描かれている。七宝焼の様なバッジ自体の美しさと、カラフルな色合いと、楽しいデザインで、1つ600円だ。

そして何よりも、先に紹介したマイナーな山「千本ツツジ」「高丸山」「日蔭名栗山」の登山バッジがあるのが嬉しい。

6種類まとめて購入すると台紙がもらえる。
この通りに並べると稜線がつながるデザイン 写真=七ツ石小屋


山頂を繋ぐ山歩き

バッジを手に入れるためには、七ツ石小屋へ行く必要がある。そこで、七ツ石小屋を拠点に山頂を繋ぐ山歩きを提案したい。

「千本ツツジ」「高丸山」「日蔭名栗山」のピークは、それぞれ石尾根縦走路から簡単に往復することができるが、できれば七ツ石山から石尾根縦走路を外れて、山頂を結ぶ稜線を歩いてほしい。一つ一つのピークを越えるのは、それなりに大変だが、石尾根の頂稜は山火事延焼防止のために、幅広く伐採されていて、広々とした草原が続いている。踏み跡もシッカリと付いていて、鷹ノ巣山まで歩くことができる。明るく展望に優れた稜線上を辿るのは気持ちが良い。

日陰名栗山~七ツ石山の稜線 モリゾーさんの登山記録より

6月中旬頃までは、千本ツツジがヤマツツジの朱色で彩られる季節。奥多摩小屋跡のヘリポート北側には、桜の季節の最後を飾るミヤマザクラが、上を向いた白いポヤポヤとした可愛らしい花を付け、楽しいシーズンを迎える。


鴨沢出発で奥多摩駅へ下山。七ツ石小屋に1泊して山頂を巡るコース

奥多摩 石尾根の登山コース

行程:
【1日目】 鴨沢・・・小袖乗越・・・堂所・・・七ツ石小屋・・・七ツ石山・・・七ツ石小屋
【2日目】 七ツ石小屋・・・千本ツツジ・・・巳ノ戸の大クビレ・・・鷹ノ巣山・・・縦走路分岐・・・水根山・・・六ツ石山分岐・・・三ノ木戸山分岐・・・奥多摩駅

※天候と時間に問題なく、体力がれば、1日目に七ツ石小屋を拠点として雲取山を往復してもよい。

⇒コースタイム付き地図はこちら


七ツ石小屋 https://nanatsuishigoya.com/

奥多摩湖畔の鴨沢バス停から歩行3時間弱。素泊まり・自炊のみ。コロナ禍以降テント場20名、小屋泊6名の定員制で営業中(2022年6月現在)で、週末の宿泊には早めの予約が必要だが、小規模なだけに暖かい小屋の雰囲気は独特だ。
TEL 090-8815-1597

プロフィール

山田 哲哉

1954年東京都生まれ。小学5年より、奥多摩、大菩薩、奥秩父を中心に、登山を続け、専業の山岳ガイドとして活動。現在は山岳ガイド「風の谷」主宰。海外登山の経験も豊富。 著書に『奥多摩、山、谷、峠そして人』『縦走登山』(山と溪谷社)、『山は真剣勝負』(東京新聞出版局)など多数。
 ⇒山岳ガイド「風の谷」
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