三百名山の人力旅は、九州から中国地方、そして四国へ。田中陽希さん「グレートトラバース3」旅先インタビュー第3弾

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完全人力での「日本3百名山ひと筆書き」に挑戦中の、プロアドベンチャーレーサー田中陽希さん。九州の三百名山22座を登りきって、関門海峡を渡り、中国地方の山を経て、四国へ渡りました。四国山地の連続登山を前に、電話でお話を伺いました。

POINT
  • 「ロードが一番長い区間」を「一日一山」に!?
  • 島根県で大地震に遭遇するも、旅を続けることを決意
  • 尾道で第2回目の交流会開催。そして四国へ。

―― (編集部)九州の旅の後半からでしょうか、「三百名山」にこだわらず、地域の名山、地元の人が毎日登るような山にもたくさん登っていますね

きっかけは、福岡県の宝満山でした。宝満山は、地元の方に愛され、よく登られている山です。そこで、「小さな山だけど、ここのところ毎日登ってるな」と気が付いて。
計画では、英彦山から三瓶山までは、三百名山がなく「ロードが一番長い区間」という想定だったのですが、小さな山をつないで歩けば長い旅のアクセントにもなるし、これはいい、島根県の三瓶山まで続けてみよう、と考えました。
関門海峡を渡って、山口県に入ってからも、竜王山、大浦岳と、「一日一山」を続けてみました。
当初の計画にはなかったけど、三百名山だけが山ではないし、高さで山の価値が決まるわけではないと思っているので。ただ、山によって、日によっては、まったく登山者がいない、誰にも会わなかったということもありました。

一日一山!? 地域の方に愛される山にも登り、出会いを大切にしながら旅を続けている

―― 角島、元乃隅稲成神社、ホルンフェルス…様々な名所巡りも続きます

「日本一探し」と同じで、行きたい場所、見たい景色にはできるだけ立ち寄ってます。角島は、山口県で行きたかった場所のひとつで、約2kmの角島大橋を歩いて渡りました。本当は角島でテント泊したかったのですが…、まだキャンプ場が営業してなくて。そのまま往復することになりました。

角島大橋は5年ほど前にできたばかり。もちろんこの橋の往復も徒歩で

―― 関門海峡での「ほふく前進」、今回も健在でした! これは先々、県境ごとに期待できます

「ほふく前進」(動画)は、セルフタイマーで、何度か撮り直してます(笑)。これもやったりやらなかったりなんで、毎回ではないんです。長い旅なので、マンネリにならないよう、自分で楽しむ工夫をしています。

田中陽希さん(@y.tanaka1983)がシェアした投稿 -

―― そして、今回で3回目の「あさりこども園」訪問、でした

4年前の百名山の時にご縁をいただいて、二百名山のときも再訪しました。今回も旅を始めるにあたって、あらかじめ園長先生には連絡していたのです。ところが、旅の予定がズレて、年度末・年度初めの時期に当たってしまい、いつ訪問できるかをギリギリまで調整させてもらいました。
園では「田中陽希コーナー」を作ってくれて、どこまで来たとか、近づいてきたのが分かるようにしてくれていたようで、子どもたちも親しみを持ってくれていたように思います。

4年前に園児だった子は、もう小学3年生。僕が行くことを知って、学校終わってから、会いに来てくれました。
今回は一日たっぷり時間をとっていたので、「こども園」体験をさせてもらいました。子どもたちは元気に満ちあふれていて、エネルギーを吸い取られそうになりながらも、全力で子どもたちと向き合い、とてもよい体験になりました。

3回目の訪問となった「あさりこども園」。名札をもらって、一日「こども園」を体験

―― 島根県では大地震に遭いました

4月9日の未明でした。本州最初の三百名山、三瓶山から下山して泊まっていた宿で、地震が起こりました。三瓶山を挟んだ反対側が震源地で、震源からとても近く、震度5強の大地震でした。
宿の方も、宿泊していた方も、ケガをした人はいなかったのですが、宿は土砂崩れに遭い、地盤も崩れ、内壁も壊れたりして、半壊状態。営業できないような状態になってしまいました。

この宿には、二百名山のときも泊まっていて、ご家族で僕のことを応援してくださっていました。今回、また泊まれることになったのを女将さんは喜んでくださっていて。嬉しい再会となったその日に大地震になってしまったのです。女将さんは何も悪くないのに、女将さんから謝られてしまって…。
自分としては、目の前で被災された人がいて、後片付けを手伝うとか、なにか助けになれないかとか。どう行動するのが正しいのか、とても悩みました。

朝になって少し落ち着いたとき、女将さんやご家族の方に「旅を続けてくれることが自分たちの励みになるから」と声をかけていただきました。そして「旅を止めてしまって、みなさんの負い目になってはいけない」「進むことが自分の役割」と決めて、ほとんど寝ないままでしたが、前に進むことを決めました。
無事ゴールしたら必ずまた会いに行こうと思っています。

被災されたみなさんのためにも、前進することを決意した

―― 第2回目の旅先交流会が、尾道自由大学で開催されました

尾道自由大学は、社会人のために開かれた「学びの場」で、僕も所属する「人力チャレンジ応援部」の事務局メンバーでもある中村真さんが「校長」を務めています。二百名山の時もここで交流会をさせてもらっていたので、今回もスケジュールを調整しながら、交流会を呼びかけていただきました。
平日の日中にも関わらず、60人もの方が集まっていただいて、充実した交流会になりました。

―― 瀬戸内海を渡って、四国へ入りました。四国で楽しみにしていることは?

四国は約1ヶ月の予定で、楽しみにしていることがたくさんあります。
カツ丼はもちろんなんですが…(笑)。百名山、二百名山の旅では、四国山地より南側には行けませんでした。四国の南側を旅するのは初めてなので、新しい景色、出会いを楽しみにしています。
そして、今回の旅ではパックラフトでの四万十川の川下りにもチャレンジしたいと思っています。

スタートから約4ヶ月。瀬戸内海を渡り、いよいよ四国に入った

関連リンク

人力10,000kmの山旅。日本3百名山ひと筆書きに挑戦中の田中陽希さんを応援しよう!
もっと知りたいという方は、ウェブサイトで。
グレートトラバース事務局ウェブサイト
http://www.greattraverse.com/


関連情報

田中陽希さんを密着取材したNHKのドキュメンタリー番組「グレートトラバース3 第2集」が、5月5日に放送

「グレートトラバース3 日本三百名山 全山人力踏破 ~第2集 九州北部 大火山帯をゆく~」
放送日:5月5日(土) 19:30~20:59<NHK BSプレミアム>
http://www4.nhk.or.jp/greattraverse/

 

まとめ (山名は「ヤマケイオンライン」の山の紹介ページへのリンクします)

雲仙・普賢岳 [2018年3月7日(水)]

多良岳 [2018年3月10日(土)]

脊振山(山地を縦走) [2018年3月17日(土)~18日(日)]

英彦山 [2018年3月24日(土)]

三瓶山(男三瓶、女三瓶、子三瓶、孫三瓶) [2018年4月8日(日)]

吾妻山 [2018年4月12日(木)]

道後山 [2018年4月13日(金)]

 

記事一覧

田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き」旅先インタビュー

 

プロフィール

田中 陽希

1983年、埼玉県生まれ、北海道育ち。学生時代はクロスカントリースキー競技に取り組み、「全日本学生スキー選手権」などで入賞。2007年よりチームイーストウインドに所属する。陸上と海上を人力のみで進む「日本百名山ひと筆書き」「日本2百名山ひと筆書き」を達成。
2018年1月1日から「日本3百名山ひと筆書き グレートトラバース3」に挑戦し、2021年8月に成し遂げた。

https://www.greattraverse.com/

田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き」旅先インタビュー

2018年1月1日から、日本三百名山を歩き通す人力旅「日本3百名山ひと筆書き グレートトラバース3」に挑戦中、田中陽希さんを応援するコーナー。 旅先の田中陽希さんのインタビューと各地の名山を紹介!!

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