家族全員日本百名山完登! 百の山・百の頂・百以上の想い出に、家族みんなで挑戦記

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「子供と一緒に山へ」「家族で一緒に登山」は、登山愛好者の楽しみの1つだ。そんな山の楽しみ方が大いに膨らみ、家族全員で日本百名山登頂を目指し、約5年の歳月で達成した家族がいる。その奮闘の模様をインタビュー、5年間の足跡を振り返る。

 

2018年8月15日、「unchikutareoさん」の一家は「家族全員で百名山踏破」という壮大な計画を、南アルプス・北岳山頂でついに成し遂げたのだった。

★家族全員日本百名山完登!! 子連れ百名山~099間ノ岳&100北岳(2泊3日)

山頂で余韻に浸る余裕もないほどの雨&強風というあいにくの天候だったものの、2013年8月に四阿山から始まった約5年に渡る壮大な計画は、ついにフィナーレを迎えたのだった。

長女が6歳、長男が4歳のときの夏休み中に、ごく普通に始まった山登りは、気がつけば百名山踏破の旅へ――。そのドラマを、unchikutareoさん一家へのご主人へのインタビューを中心に振り返る。

 

「夏休みに山を1座は登ろうね!」から始まった百名山踏破への道

unchikutareoさん一家は、はじめから百名山制覇を目指していたわけではない。キッカケについてはこんな様子だった。

「食物アレルギーのあった息子が、同年代の子より体が小さいことが気になっていました(現在はかなり克服している)。登山は体力がつくと聞いていたので、夏休みに1座は登ろうね! ということで息子4歳、娘6歳の時に小浅間山(長野県)に登り、その翌年には高峰山(長野県)に登りました。子供の成長も感じられるし、親も久しぶりに登山して、景色の良さなどを再確認していました」

初の家族登山、小浅間山での家族団らん


普通のファミリーと同様に、純粋に手軽な登山を楽しんでいるに過ぎなかった。しかし、「せっかく登るのなら有名な山」ということで、百名山の四阿山に挑戦したのが始まりだった。

「この時は百名山については詳しく知りませんでした。『百名水や百名城なんかと一緒で登ったら良い山の代表なのだろう』と思い四阿山を選んだんですが・・・。四阿山だったのは、妻が百名山最年少達成の方の記事を読み、4歳児でも登れる山と誤解したからなんです」

四阿山は、大人にとっては難しい山ではないものの、unchikutareoさん一家が登った「あずまや高原ルート」は、標高差は1000m近くある。子供が最初にトライするには、それなりの覚悟と体力が必要な山であり、そのとおりかなり苦戦しながらも山頂にたどり着いたそうだ。2013年8月28日、夏休みも終わろうとしている頃のことだった。

「その際に、やはり準備&装備が貧弱と実感しました。それから、『せっかく登るんならよく知らない山より百名山を登ろうか、子供の教育が落ち着いたら夫婦でゆっくり登ろうかね~』、という感じでヤマケイ文庫の『日本百名山(上中下)』を購入。読んでるうちに、結構、子供でも行けそうな山があると気付き、やれる範囲で登ろうか、という雰囲気になりました」

初の百名山、四阿山での一枚。子供はだいぶお疲れモード!? ⇒登山記録はこちら


unchikutareoさん一家は、ご主人・奥様ともに運動部出身ではあったものの山岳部やワンゲル部だったわけはない(アメフト部とテニス部だったそうだ)。登山は学校登山と幼少期のわずかな家族登山の経験のみだったという。

「全くの登山素人でした。私は磯釣りが趣味で、その際に地磯歩きはしていましたが、山については『なんで辛い思いして山に登るの?』というクチでした。むしろ、登山云々言い出したのは妻でした」

登山の基本的なルールや知識も知らない状態から、雑誌やネット上の情報でコツコツと知識を得ていき、少しずつ登山に傾倒。登山靴やザックなどの登山装備は、この年の冬に買い揃えたという。

そして次の百名山となったのは『100名山で最も手軽な山』ということで筑波山へ。四阿山から4ヶ月以上も開いてようやく2座目。家族で日本100名山登頂達成という夢は、薄っすらと目標としていたものの、もともとの趣味であった磯釣りへの気持ちも高く、まだまだ熱量が高かったわけではなかった。

筑波山でパワースポットの巨石・怪石めぐり。この頃はまだ計画も行き当たりばったりだったそうだ ⇒登山記録はこちら

 

3座目から一挙に登山モードへ。週末を中心に近郊の百名山を次々と制覇

ところが、冬が明けて3座目となった大菩薩嶺からは計画は一挙に進み出した。ゴールデンウィークから始まったこの年の登山は、大菩薩嶺⇒丹沢山⇒天城山⇒両神山⇒赤城山⇒磐梯山⇒瑞牆山⇒焼岳⇒苗場山⇒月山⇒白馬岳⇒草津白根山⇒岩木山⇒男体山⇒甲武信ヶ岳⇒宮之浦岳⇒開聞岳⇒安達太良山⇒美ヶ原と、19座を制することとなった。

ところで、気になるのは、子供たちの登山に対する情熱だ。これだけのペースで山に行き、果たして子供たちは楽しんでいたのだろうか? そんな話題を向けてみると、やはり最初はかなり評判が悪かったようだ。

「いやいや連れて行かれていた、夏休みは山しか行っていない~(娘、息子)」
「遊園地とか行きたい(娘)」
「登山は長くてダルいし疲れる、山のトイレは汚いし、清潔感がなくて嫌だった(息子)」

12座目の月山では、子供も雪遊びで大いに楽しんだ様子だ ⇒登山記録はこちら


と、当初かなり評判悪かったそうで、親の趣味に付き合わせれている感でいっぱいだったようだ。ご主人はこう話す。

「20座目の安達太良山で『もう1/5登ったね~。半分くらいまでならできるかな?』と話した記憶があります。その時点では、劔や槍に登るとか、百名山完登するなんて無理かな・・・と思ってました」

親の情熱に反して、もうひとつ気乗りしない子供のやる気を高めるためには、さまざまな“奥の手”を使ったという。

「登山単体ではブーイング必至なので、下山後に釣りをする、ローラー滑り台のある公園で遊ぶ、城好きの息子のために城見学する、移動手段も車でなくスーパーあずさ、各種新幹線、飛行機、ジェットフォイルに乗る! 上高地だったら五千尺ホテルのケーキや徳沢園のソフトクリームを食べる、そのほか下山後に美味しい海産物や肉を食べる、など登山以外の部分でやる気を促していました。登山中もダレてくると、しりとりしたり、クイズしたり、歌歌ったり、安全な下山道(上高地の横尾~など)では、他の登山客を抜くと『1機撃墜!』とかゲーム感覚でやってました」

登山の前後は遊戯施設でやる気充電! やる気を引き出すためには、いろいろオプションは必須なようだ(28座目・伊吹山) ⇒登山記録はこちら


大人のように山の景色や自然を楽しむのは、小学校低学年ではなかなか難しいようで、「景色などに感動してくれるのは高学年からで、小さいときは絶景にも全く反応しませんでしたね。ただ、同年代の子供がいたり、ほかの登山者から声かけを頂いたりすると、格好つけてでしょうか? それまでブーブー言ってたのに『はい、私元気です!』みたいに振る舞うのが面白かったです」

と語る。また気分が乗っていないシグナルを確実に掴むのは重要な要素だったという。unchikutareoさん一家の場合、子供の機嫌が悪い理由には「空腹」が多かったそうだ。

「不機嫌だと思っていたら、シャリバテだったりするので、ポカリスウェットなどのドリンク、飴やお菓子、SOYJOYなどの糖質の補給は大事です。ドリンクや朝食も、子供はその日の体調によって飲食量がかなり違います。朝ごはんを無理やり食べさせようとすると嫌がるけれど、ゼリー飲料やクリームパンやお菓子なら、山行中でも食べてくれました。その辺のニーズに合わせるのが重要でした」

そんな状態で目標に近づいてったものの、本当に子供がやる気になってきたのは80座超えた頃、旅の終盤を迎えてからだそうだ。「息子は家で勉強するより山登ってた方が良い、と思っいたらしいですが・・・」という理由もあったそうだ。

 

奥様が最大の理解者だったのは成功の秘訣!?

そしてもうひとつ気になるのが、奥様の理解度だ。登山が趣味の女性も多いが、統計的には圧倒的に男性が多い。そして世の中の男性登山者の多くは、奥様の理解を得ることが大きな課題となっているという声はよく耳にする。そんな中でunchikutareoさん一家は、冒頭でも述べているように奥様が熱心だったことが大きなアドバンテージだったのではないだろうか。

unchikutareoさんの奥さんは、こう語る。

「社会人になってから夫婦ともにほとんど運動をしていませんでした。ふだんは車で移動することが多い生活です。今までメタボ対策にと、ジョギングや散歩、水泳と色々試したのですが、続きませんでした。主人の趣味である釣りに家族でも行きましたが、娘はつまらないらしく磯で読書を始めるし、息子は飽きて磯を走りまわってるだけだし・・・。」

そんな中で、夏休みに久し振りに汗を流した登山がとても気持ちがよかったこと、子どもと体験を共有したかったことが大きかったという。

家族みんなで元気いっぱい! 仙丈ヶ岳での一枚 ⇒登山記録はこちら


「子供たちは今まで自然に触れあう機会が少なく、土が手につくとすぐ洗いたいって言っていました。それで自然の中で色んなことを見たり聞いたりして欲しいなと思うようになりました」と、登山に対して前向きに捉えていた。

それでも、これほどのハイペースでやるつもりはなかったという。悪天候だったり体調が悪かったりすれば、また次に・・・という感じで、百山制覇にはこだわっていなかったが、ご主人に引っ張られながら百の頂を目指した。

登山計画については、ほとんどご主人に任せだったそうだが、そのサポートには様々な方面に力を注いだ。子供の身の回りのこと、買い物、家事など平日にできることはできるだけ済ませて、家族全員が週末をフリーにできるように心掛けたという。

「登山後は洗濯も大変ですが、慣れてくると下山後の温泉付近のコインランドリーで洗濯も済ませるなど工夫しました」と、長い旅の中で生活のペースも掴んでいったそうだ。

第2回:家族全員日本百名山完登! ~装備・時間・経済編へ

 

子どもと一緒に山、行こう! 親子登山のススメ

子どもや孫といっしょに山に登ることは、登山愛好者にとって1つの夢ではないだろうか? しかし、子どもの気持ちを山に向けることができるか、安全な登山を伝えられるかなど、疑問や悩みも多い。親子登山に役立つ情報を、さまざまな角度から伝えていく。

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