何度も歩きたい日本百名山・大菩薩嶺。初心者の日帰り登山から健脚向きのロングコースまで紹介

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

初心者にも中級者にも大人気の大菩薩嶺(だいぼさつれい)。王道コースから、健脚向きロングコースまで5コースを紹介します。

文=鈴木志野、写真=サンシマ

目次

富士山や南アルプスの眺望や標高2000mの稜線歩き、温泉など楽しさいっぱい!

日本百名山にも数えられ、甲府盆地の北東に位置し、山梨・東京・埼玉とつながる秩父多摩甲斐国立公園の一部でもある大菩薩嶺。江戸時代には、武蔵国と甲斐国を結ぶ旧青梅街道の重要な峠として、多くの人々が往来していたという。そんな大菩薩嶺を特に有名にしたのが中里介山の長編時代小説『大菩薩峠』だが、全41巻の大長編とあって、その内容について知る登山愛好者は少ない。

登山者でなくても知っている大菩薩峠(写真=サンシマ

標高は2057mと、2000m級の山だが、車でアクセスできる最も標高の高い登山口は1600mのため、交通至便で登りやすく、首都圏の日帰りハイカーに人気が高い。

そして、大菩薩嶺を巡るコースは、初心者向けから中級者までバラエティ豊かで、新緑や紅葉の季節と時期を変えて何度登っても飽きることがない。ブナ林やカラマツ林、鬱蒼としたコケの森、険しい岩場、山野草の群生など、山道では歩みを進めるごとに景色の変化を楽しめる。

紅葉(写真=つばめ
新緑(写真=サンシマ

その最大の魅力は雷岩(かみなりいわ)から大菩薩峠の間の開放的な尾根歩きと、裾野まで見渡せる雄大な富士山の絶景。南アルプス、乗鞍岳(のりくらだけ)、八ヶ岳(やつがたけ)、雲取山(くもとりやま)、大菩薩湖の眺望も美しい。

富士山の展望がすばらしい!(写真=サンシマ

さらに大菩薩嶺の魅力を高めているのが、点在する山小屋や茶屋、周辺の温泉だ。登山口の目印にもなっているロッジ長兵衛や福ちゃん荘は前泊にも休憩にも便利。峠に立つ介山荘に一泊して甲府盆地の夜景鑑賞をしたり、天体観察をするのも思い出深い経験になるだろう。

福ちゃん荘(写真=ponchichi

そのほかにも昔ながらの趣きのあるたたずまいの丸川荘や千石茶屋も魅力にあふれ、麓にある裂石(さけいし)温泉雲峰荘や奥多摩温泉小菅の湯、やまと天目山温泉など良泉ぞろいだ。こうした山小屋などが多いのは、ハイカーにとって安心でもあり、また楽しみでもあるだろう。

ぜひこれから紹介するコースに挑戦して、魅力あふれる大菩薩を堪能しよう。地元観光協会などが主催するトレッキングツアーも人気なので、参加するのもおすすめだ。

冬季通行止めに注意

甲斐大和方面から上日川峠に向かう道路は冬季には通行止めになり、バスも例年12月中旬から4月中旬までは運休となる。

 

上日川峠を起点に大菩薩嶺へ。大菩薩峠を周回する初心者向け王道コース[初級]

カラマツが美しい唐松尾根や眺望がみごとな大菩薩峠手前のササ尾根の下りなど、3時間ほどで大菩薩嶺の魅力をコンパクトかつ存分に楽しめる周回コース。初心者やファミリーでも登りやすいので、百名山デビューにもぴったりだ。

気持ちのいい開けた稜線の道(写真=つばめ
多くの登山者でにぎわう雷岩(写真=ponchichi

駐車場や公衆トイレのある標高約1600mの上日川峠(かみにっかわとうげ)を出発し、大菩薩峠の稜線を回って上日川峠と帰ってくる、大菩薩を楽しむ最もポピュラーなコースだ。

山頂の大菩薩嶺は針葉樹林の中で眺望は望めないうえに狭いので、見晴らしのいい雷岩から大菩薩峠での休憩がおすすめだ。

MAP&DATA

高低図
コース詳細ページへ
最適日数:日帰り
コースタイム: 3時間15分
行程:上日川峠・・・福ちゃん荘・・・大菩薩嶺・・・賽ノ河原・・・大菩薩峠・・・富士見山荘・・・福ちゃん荘・・・上日川峠
総歩行距離:約7,090m
累積標高差:上り 約585m 下り 約585m
コース定数:14
1 2 3 4 5

目次

この記事に登場する山

山梨県 / 関東山地

大菩薩嶺 標高 2,057m

 大菩薩峠の北にあり、三等三角点が埋められている。伝説によると、甲斐源氏の祖、新羅三郎義光が奥州に遠征時、道を失ったが、木こりに化けた軍神の導きでここを越えた。彼は軍神の加護に感謝し、八幡大菩薩の名を高らかに称えた。これが山名の由来とのこと。  戦前、戦後ともにハイキングのメッカであり、中腹まで車が使える昨今はなおのことである。この山が有名になったのは、なんといっても、大正2年に始まった中里介山の小説『大菩薩峠』によってであろう。中腹の勝縁荘(休業中)には介山直筆の「大菩薩峠勝縁荘」の扁額も残る。  山頂こそ展望には恵まれないが、南面の尾根筋はカヤトの原で、日川の谷を前景にした富士山をはじめ、西側の甲府盆地を下にして連なる南アルプスは、上河内岳から甲斐駒ヶ岳まで、まさに一目千両といった感じである。  さて、昔、奈良の大仏を見た甲州人が、その大きさに驚いた。ところが彼は、「甲州に来れば小仏でも三里、大菩薩となれば八里もある」とほざいたという。甲州人はなんと負け惜しみの強い人種だろうか。  登山口の裂石(さけいし)から大菩薩峠経由山頂まで4時間、同じく丸川峠からも4時間で山頂に達する。

今がいい山、棚からひとつかみ

山はいつ訪れてもいいものですが、できるなら「旬」な時期に訪れたいもの。山の魅力を知り尽くした案内人が、今おすすめな山を本棚から探してお見せします。

編集部おすすめ記事