「防災グッズ」としての登山用品 2 -非常時の食料・水対策を考える-
今回は「非常用持ち出し袋に入れておく食料・水対策」について。登山者としての「災害への備え」を考える企画「防災グッズとしての登山用品 -山ヤ流の備えを考える-」。全4回に渡って災害時に役に立つ登山用品や、登山用品を防災時に役立てるための知恵を紹介する。前回に引き続き、さかいやスポーツ 斎藤さんに聞いた。
取材/文=吉澤 英晃
「防災グッズ」としての登山用品:
1.持ち歩ける防災グッズとしての登山用品
2.非常時の食料・水対策を考える
3.ウェア・シューズ・避難用品
4.長期の避難生活への備え
登山用品を使って「非常持ち出し袋」を作ってみよう
ライターY:前回は「持ち歩ける防災グッズとしての登山用品」についてお伺いしましたが、今回は非常用バッグに入れておく食料・飲料水対策について聞きたいと思います。

斎藤さん:はい。よろしくおねがいします。
ライターY:まず、災害時の備えとして自宅と職場に「非常用持ち出し袋」を用意しておきましょう! ということはよく聞きます。

ライターY:これは自宅から避難場所に向かったり、自宅に戻ったりする時のために使うものですが、袋は使っていないザックがあればそれでまかなえますし、中身も登山用品で代用できるものが多そうです。

アルファ米は水で戻る、袋は食器にもなる
ライターY:まず、食料について。これは、山でよく食べるアルファ米やフリーズドライ食品をバッグに入れおくとよさそうですが・・・。
斎藤さん:そうですね。尾西の「アルファ米」シリーズは、お湯を入れて調理するだけでなく、水だけでも戻すことができますので、火が使えない状況でも食べられます。
ライターY:水だけでも調理できるのですね。
製品紹介

尾西「白飯」「ドライカレー」「チキンライス」
- 本体価格
- 340円(税別)
- 内容量
- 100g
斎藤さん:更に便利なのが、アルファ米の袋。これが簡易的な食器として使えるのです。私は普段の山行で、アルファ米を食べ終えた後の袋にフリーズドライ食品とお湯を入れて調理する、といった具合で一度の食事でアルファ米の袋を使い回しています。クッカーを汚さずに済むので、後片付けも楽になります。
製品紹介

アマノフーズ「三ツ星キッチン 焼なすとトマトのクリームパスタ」
- 本体価格
- 200円(税別)
- 重量
- 28g
アマノフーズ「小さめどんぶり 中華丼」
- 本体価格
- 250円(税別)
- 重量
- 14.5g
クッカーはお湯を沸かす目的に絞る。バーナーは確保しやすい燃料を念頭に
ライターY:汚れたクッカーを拭かずに済むのは、ティッシュやトイレットペーパーなどの節約にもつながっていいですね!
斎藤さん:そうすると、クッカーはお湯を沸かすという目的に絞って選ぶことができます。3〜4人用の大きな鍋よりも、燃料効率が良いヒートエクスチェンジャーがついた「DUG HEAT-I」や、チタンよりも重いが熱変換効率のいいアルミ製のクッカーのほうが燃料の節約を考えるといいでしょう。
製品紹介

DUG「HEAT I」
- 本体価格
- 4,700円(税別)
- 重量
- 206g
ライターY:使わなくなったアルミ製クッカーを持っている方は、それをバッグに入れておけばいいですね。次は、バーナー(ストーブ)について聞きたいと思います。登山で使う場合は、重さや火力で商品を選んでいる方が多いと思います。防災グッズとして考えると、選ぶポイントは変わりますか?
斎藤さん:長期の避難生活も想定すると、燃料の確保がネックになりそうです。登山者なら必ずと言っていいほど持っているOD缶ですが、買える場所が限られています。なので、スーパーやホームセンターでも比較的入手しやすいCB缶が使える「SOTO レギュレーターストーブ」などがオススメです。
製品紹介

SOTO「レギュレーターストーブ」
- 本体価格
- 5,200円(税別)
- 重量
- 350g
斎藤さん:購入しやすい燃料で言えば、薬局で市販されているアルコールも考えられます。そういう点では、アルコールストーブも使いやすいですね。ちなみに、本体が五徳になり、繰り返し使える固形燃料を用意するのもアリです。
製品紹介

ホワイトベア「ケイネン160」
- 本体価格
- 600円(税別)
- 重量
- 160g
斎藤さん:車を持っている方や、ガソリンスタンドが近くにある方は、ガソリンを燃料に使うのも手です。そうなればガソリンも燃料として使えるSOTO「ストームブレイカー」などが選択肢として増えますね。
製品紹介

SOTO「ストームブレイカー」
- 本体価格
- 21,000円(税別)
- 重量
- 225g(本体のみ)
ライターY:使える燃料でバーナーを選ぶのは災害時ならではの視点ですね。アルコールバーナーや燃料五徳などを用意した場合にはライターも必要になりますが、オススメはあるでしょうか?
斎藤さん:ライターは氷点下の気温では火が付きにくい場合があります。そのような状況も考慮すると、プリムスの「イグニッションスチール」のような、ストライカーとファイヤースターターがセットになっている商品を用意するといいですね。
製品紹介

プリムス「イグニッションスチール」
- 本体価格
- 1,400円(税別)
- 重量
- 22g
斎藤さん:他には「SOTO スライドガストーチ」が、CB缶からガスを充填できるのでオススメです。ちなみにOD缶からスライドガストーチへ充填するためのアダプターも販売されています。
製品紹介

SOTO「スライドガストーチ」
- 本体価格
- 2,000円(税別)
- 重量
- 55g
飲料水の確保はペットボトル以外に浄水器を持っておくと安心
ライターY:最後に水についてお伺いします。非常用持ち出し袋には500ミリリットルの飲料水を2〜3本、それに加えて3日分の飲料水を備蓄しておくといいと思いますが、場合によってはライフラインが断たれた状況で、備えていた飲料水がなくなってしまうことも考えられます。そこで山道具を活用できないかと思うのですが・・・。
斎藤さん:災害時に限らず、登山でも飲料水の確保は重要ですよね。私は南アルプスなどで荷物を軽くしてスルーハイクをするときに浄水器を持って行きます。これがあれば背負う水の量を少なくすることができるし、水場が枯れていた場合でも、さいあく水たまりの泥水を飲み水として使うことができるからです。
ライターY:なるほど。汚れた水からも飲み水を確保できる浄水器は山でも使えるし、災害時にも役立ちそうです。さっそく選ぶ時のポイントを教えてください。
斎藤さん:ポイントは3つ、「一つのフィルターでろ過できる水の量」「ろ過するのにかかる時間」「ろ過できる成分」です。さかいやスポーツで販売しているものの中で私がオススメしたいのは「ソーヤー ミニ」。この商品は、一つのフィルターでろ過できる水の量が38万リットルで、バクテリアや微生物などもしっかり除去することができるのです。一度に大量の水を除去することはできませんが、軽量コンパクトなので、登山にも気軽に持っていくことができます。
製品紹介

ソーヤー「ミニ」
- 本体価格
- 3,600円(税別)
- 重量
- 約55g
ライターY:「ソーヤー ミニ」の重さは約55g、価格も他の浄水器と比べるとお手頃です。ただ、一度に大量の水が必要な場合には少し使いにくそう・・・。そういった時に良い製品はありますか?
斎藤さん:ろ過するスピードが速い製品では「カタダイン ミニセラミックフィルター」があります。これは本体についているホースを、川や水たまりに入れて、ポンプで汲み上げながら浄水するタイプの商品です。水をろ過するスピードは、一分間に500ミリリットル。さらに、バクテリアも99.9パーセント除去できるろ過性能を持っています。ただ、重さが210gになり、「ソーヤー ミニ」よりもサイズが大きくなってしまいます。
製品紹介

カタダイン「ミニセラミックフィルター」
- 本体価格
- 21,000円(税別)
- 重量
- 210g
ライターY:汲み上げ式のほうがろ過するスピードは速いですが、登山にも持って行くことを考えると軽量コンパクトな製品を選びたいところ。ろ過した水は、「プラティパス」のようなコンパクトになる水筒に入れておけばいいですね。
製品紹介

プラティパス「ソフトボトル1.0L」
- 本体価格
- 1,200円(税別)
- 重量
- 24g
プラティパス「プラティ2Lボトル」
- 本体価格
- 1,400円(税別)
- 重量
- 36g
ライターY:災害時に使うことを考えると、登山用品でも選ぶポイントが変わってきますね。教えていただいたことを参考にして、山でも災害時にも使えるアイテムを見つけようと思います! 次回は「非常用ザックに入れておく登山ウェア・シューズ・避難用品」についてご紹介します。
「防災グッズ」としての登山用品:
1.持ち歩ける防災グッズとしての登山用品
2.非常時の食料・水対策を考える
3.ウェア・シューズ・避難用品
4.長期の避難生活への備え
プロフィール
斎藤 勇一(さかいやスポーツシューズ館)
アウトドア、ヤマの業界で25年超の経験を持つ長老的存在(笑)。
シューズ系の売り場に長く在籍し、さまざまな登山者の足元を見続けたせいで、その人の姿勢や歩き方から身体のクセなどを見抜くイヤらしいヤツ。
アウトドアスポーツ全般をこなすが、最近はイマドキ流行りの軽量装備で一人テント泊登山を楽しむ。
さかいやスポーツ
創業以来、約60年にわたり神田神保町で全国の登山家やアウトドアマンに愛されている登山用品店。ウェア、シューズ、ギアなど品目別の専門館を6店舗展開。ウェアや道具に詳しいスタッフが丁寧に解説してくれるので、ビギナーでも安心。
住所/東京都千代田区神田神保町2-48
TEL/03-3262-0432
営業時間/11:00~20:00
アクセス/神保町駅A4出口より徒歩6分、JR中央・総武線水道橋駅東口より徒歩8分
登山道具の買い方・選び方、ショップのスタッフに聞きました!
数ある登山道具の中から、自分にピッタリの用具を選ぶには? 登山用具を知り尽くした、ICI石井スポーツ、好日山荘、さかいやスポーツ、かもしかスポーツなどのスタッフが、用具チョイスとツボを説明します。
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