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梅雨の大停滞からの縦走再開! 山の奥深さを知る南アルプス南部の三百名山、3000m級の百名山が連なる稜線へ

田中陽希さん「日本3百名山ひと筆書き」旅先インタビュー
ガイド・記録 2019年10月10日

7月の半分以上を過ごした静岡県川根本町から、梅雨明けとともに縦走を再開した田中陽希さん。高塚山、黒法師岳、山伏など、初めて登る三百名山のピークに立ち、百名山が連なる、荒川三山、赤石岳、聖岳の稜線へ。さらに白峰三山、鳳凰三山へと進み、南アルプスの山々を踏破した。8月上旬までの山行を追った。

POINT
  • 高塚山、黒法師岳、山伏、初めて登った三百名山の山々
  • 大無間山、笊ヶ岳など、遠く難しい二百名山の山々
  • 荒川三山から、赤石、聖、光岳、そして池口岳までを3泊4日で駆け抜ける
  • 塩見岳、白峰三山、鳳凰三山と、南アルプス北部を一気に縦走した

 

久しぶりの登山に疲労を感じながらも、南アルプスらしい景色に満足

川根本町での長く続いた停滞を経て、7月24日に登山が再開できました。最初は高塚山と黒法師岳という2つの三百名山を1泊2日でつなぐ山行でした。

コースは、大札山、蕎麦粒山、三ツ合山と進んで、178座目の高塚山に立ち、稜線を戻って、山犬段(*)避難小屋で1泊。翌日、再び稜線を進み返して、黒法師岳へと縦走しました。

荷物は50リットルのザックで15kgくらい、久しぶりの登山、久しぶりのバックパックで、蒸し暑く、初日は疲れがありました。(* やまいぬだん。段は窪地・平らなところの意味)

途中にある大札山には7月上旬、一度登って引き返している。待って待ってようやく登れた高塚山


2日目は避難小屋を午前3時起きで出発し、黒法師岳へ向かいました。山に登るという身体のリズムが戻ってきたように感じて、途中、笹原では朝露に濡れましたが、それも気にならないほど、山に登る喜びを感じながら歩きました。

ありのまま、人が入っていない感じがいいという、南アルプス深南部の風景


このルートについては、ここに移り住んだガイドの方から、「小屋も人も少なく、南アルプス南部らしい、ありのままの感じがいい」と聞いていたのですが、本当にそのとおりで、人の手が入っていない、静かな山でした。その分、登山道が不明瞭なところもありましたが、開けた笹原もあって、自分好みでした。2日晴れる日を何十日も待った甲斐がありました。

三角錐の黒法師岳には、10時に山頂に立ちました。さらにそこからの下山道は長く、7時間かけて寸又峡へ下山しました。前黒法師からは激下りでした。

翌日は寸又峡から井川へ移動し、その後、台風のため1日停滞となりました。

日本唯一のアプト式鉄道・大井川鐵道井川線の奥大井湖上駅に立ち寄った


次の山伏(やんぶし)へは、山の上にある県民の森のロッジの予約が取れたので、山上で一泊することになりました。ロッジで翌日の山行に備えましたが、夜は雷雨になりました。

翌7月30日、180座目の山伏に登頂しました。三百名山の山で、初めて登る山でしたが、気持ちの良い原生林の中を歩けました。

山伏に向けて。原生林の中を登っていった


この山は、ヤナギランがきれいな山、と聞いていましたが、まだ咲きかけで、少し早かったようです。南アルプス南部の地質は、砂岩・泥岩のミックスで、山伏の東側が大きく崩れていました。また、ところどころ富士山の眺望もありました。

翌日の大無間山は、4年ぶりに登る二百名山の山です。『山と溪谷』7月号にも載っていたルートで登りました。

大無間山は「遠くて、難しい山」だった


登り口から尾根にたどり着くまでが、約400mの急登で落石の危険性も高く、小無間山まではルートファインディングも必要なアドベンチャーなルートで、「バリエーションルート」と言っていいほどでした。

往復ルートでしたが、水場もなく、長く、タフな山。南アルプスの中でも、もっとも遠く感じる、難しい山と言えるのではないでしょうか。

井川から椹島へ移動。川に浸ってクールダウン


次は、8月2日、椹島を起点に、笊ヶ岳を往復しました。前回、二百名山のときは山梨県側から登ったのですが、今回は静岡側からになりました。

未明から出発して日帰りのコース取りをしました。直登と、激しいアップダウン、トラバースも気が抜けないルートで、沢を越えるところもあり、落石も多く見られました。毎日午後には雷雨がある中で、午前中は天気がよく、展望が見られました。8月なのにまだシャクナゲが咲いているのも見ました。笊ヶ岳も、大無間山と同じく、遠く、難しい山と言えるでしょう。

続く笊ヶ岳も、遠く、難しい山と感じた


この日、笊ヶ岳で出会った登山者は、僕を含めて3組だけでした。3組だけなのに全員が三百名山を目指していて、笊ヶ岳が297座目というおばあさんと、僕のチャレンジを見て早期退職し、札幌から自転車で日本一周しながら三百名山に挑戦しているという男性でした。三者三様の三百名山、を感じる笊ヶ岳の登山になりました。

笊ヶ岳稜線からの展望。午前中は展望が得られた

 

荒川三山、赤石岳、聖岳など百名山の多いルートを3泊4日の縦走で

8月3日からは、3泊4日で南アルプス南部の百名山が続く稜線を縦走しました。 初日は、椹島から、千枚岳、荒川三山を経て、荒川小屋へと進みました。

8月に入って雷雨の予報が続いていて、この日も雷を避けて早朝から行動しました。荒川三山の東岳(悪沢岳)では晴れ、中岳・前岳ではガスの中で真っ白でしたが、夏の南アルプスらしいお花畑を見ることができました。花の種類が多く、今年は当たりの年だと聞きました。この日は荒川小屋まで進みました。

千枚岳、丸山、荒川三山の東岳(悪沢岳)、中前、前岳。後半はガスの中

最盛期を迎えた南アルプスのお花畑に笑顔


翌日も未明から、赤石岳へ向けて出発。小赤石岳でご来光となり、雲海に浮かぶ富士山を見ることができました。

赤石岳避難小屋では、有名な管理人さんとしばし談笑。おかみさんからハーモニカの演奏もいただいて、1時間ほどゆっくり過ごし、百間洞山の家へ下りました。


山の家に着いたときは、まだ朝の8時過ぎでした。「要相談」と書いてあったカツ丼について、相談してみたところ、今日は余裕があるのでと、作ってもらえることになり、ここで「昼食」にしました。山中なのに、注文を受けてからカツを揚げ、ふわふわの玉子でとじる本格的なカツ丼をいただくことができました。

その後は、日本百高山に入るピーク、大沢岳(55番目)、中盛丸山(61番目)、兎岳(56番目)の激しいアップダウンを経て、「トランスジャパンアルプスレース」でもここを越えるのが厳しいという、百名山の聖岳に登頂することができました。

百高山の大沢岳と兎岳のピークで


朝立ち寄った赤石岳避難小屋には望遠鏡があって、聖岳の様子が見えます。僕が到着する時間を言っておいたので、手ぬぐいを旗にして振りました。たぶん見てくれたと思います。

8月5日、聖平小屋を早朝に出発しました。実は聖平小屋では、大いびきで一睡もできませんでした。普段、眠れないということはあまりないのですが・・・。

次の二百名山、上河内岳へは4年ぶりの登頂でした。見る角度によって印象が変わる山で、聖側から見るとハイマツの穏やかな山容、南側から振り返ってみると、荒々しく尖っていて、かっこいいという山です。

上河内岳から聖岳を振り返る


寝不足で進んでいきましたが、次の茶臼小屋では4年前にお世話になった方に再会して話ができ、活力を取り戻しました。白いマツムシソウなども見ることができて、後半は元気に歩きました。

187座目の茶臼岳は三百名山の山ですが、百名山のときも二百名山のときも通過しているピークで、二百名山の時に、「3度来たら笑い話になる」と言っていたら、本当に来ることになりました。

山のスケール感、高度感が変わってきて、茶臼から先は人も少なくなりました。この日は光岳小屋に泊まりました。

この夜、光岳小屋のご主人と話す時間がありました。

山小屋はあくまでも退避場所で「食事も水もビバーク装備も、自分で持って登るのが南アルプス」という考えのもと、「光岳は険しい山とわかってもらうために、条件出しをしてきた小屋」というご主人。山への向き合い方、山と登山者、山小屋の関係について話を聞きました。

縦走最終日は見事な朝焼け。富士山も赤く染まった

時代に合わせて小屋が変わっていくべきなのか、変わらない山の険しさをきちんと知ってもらうためにも、小屋の姿勢を貫くべきなのか、ということを考えて運営してきたけれど、そろそろ後継者に引き継ぐのだそうです。

40年以上、ここで登山者を見守ってきたご主人から貴重な話を聞くことができて、この縦走の締めくくりの光岳、池口岳と縦走しました。

荒川三山から池口岳までの、南アルプス南部の3泊4日は、充実、上出来、の山行になりました。こんなにもゆっくり、南アルプスを噛み締めて歩いたのは初めてでしたので、南アルプス南部を離れる寂しさを感じながら、遠山郷へと下山しました。

 

南アルプス最終章。三百名山の奥茶臼山、そして、塩見岳・白峰三山、鳳凰三山へ

遠山郷からしらびそ高原への移動途中、以前お世話になった元木沢小学校跡にも立ち寄った


8月9日に登った三百名山の奥茶臼山は、地形的には赤石山脈の支尾根にある山です。当初の予定では、中央アルプスの後、熊伏山の前に予定していた山でした。通行止めのため、進むことができず、宿も休業していて、後回しになってしまったのでした。

そして、しらびそ高原からの下山ルートも、大鹿村側の林道が通行止めになっていたため、古い道を探して、山伝いにたどっていきました。

意外性のある山で、森の密度が高く、原生林が濃く、森が深く、苔も多く、南アルプスの山らしい植生で、歩いていて楽しい山でした。

奥茶臼山を前後して、いくつかのピークを越えていったので、「奥茶臼セブンサミッツ」と表現してみました。山頂の少し先に開けた場所があって、これまで見たことのない角度から南アルプスの山々が見えました。

下山はルートが不明瞭で、アドベンチャーレースみたいに、ルートファインディングをしながら下りました。これもまた奥茶臼山を印象づける展開になりました。

8月10日からの3日間は、南アルプス北部・白峰三山へ南アルプス最後の縦走でした。

入山した8月10日は、山の日に絡んだ連休初日だったので、大勢の登山者がいました。荒川三山に入った1週間前よりも登山者が多かったです。

南アルプスの南北の境となる三伏峠へ。稜線に出ると塩見岳が大きく見えた


南アルプス南北の境である三伏峠付近から、とんがってそそり立っている塩見岳が見えました。初日は塩見小屋まで進み、翌日、百名山の塩見岳に登頂しました。塩見岳は、南アルプスの南北を分けるシンボリックな山です。その後は北へ進み、三国平から農鳥小屋へトラバースしました。

いろいろ噂に聞いていた農鳥小屋のご主人ですが、会って話してみると「やさしい山の主」でした。

南アルプスの厳しい自然環境、夏山の落雷のリスクなどもある中で、何十年も定点で山と登山者を見ているからこそ、登山者の安否を気遣っているからこその発言、なのでした。16時を過ぎて到着する登山者には、戒めるような発言がありました。小屋を利用させてもらっている我々は、ここに小屋があることで安心して縦走ができるんだ、助けられているんだ、ということを改めて感じました。

翌日は3時出発で、まず農鳥岳を往復し、農鳥岳でご来光を見て、小屋に戻り、間ノ岳、北岳へと縦走しました。白峰三山を一日で歩いたのは初めてでした。

落雷の影響なのか、中白根山の標識は大きく割れていた/日本第2の高峰、北岳が迫る


数日前に北岳付近で落雷事故があったと聞き、この日も雷予報が出ていたのでとにかく行動は早めにしました。間ノ岳から先は登山者が増えましたが、南アルプスの稜線歩きには軽装すぎると感じる登山者も見られました。

北岳山頂には雲が沸く前に登ることができました。鳳凰三山が見えてきたときは、「これで南アルプスの最後だ」という思いが強かったです。

広河原に下山し、広河原山荘に宿泊。翌8月13日、南アルプス最後となる鳳凰三山へ登りました。台風が接近していて、朝から雲が多く、地蔵岳では真っ白でした。

百名山のときも雨・風がひどくて展望がなく、「またか」と少しトーンダウンしましたが、観音岳では天気が回復しました。

百名山のときは山がよく見えていなかったけど、今回は自分なりに納得して鳳凰三山を登ることができました。

鳳凰三山を登り終え、これで南アルプスをすべて踏破した

 

*****

 

南アルプスを縦走し終えて、これで、昨年秋の北アルプスから、今年、中央・南アルプスの山々を登り終えました。三百名山の旅の全体を見渡して見ても、山が集中し、大きなポイントとなっていた日本アルプスですが、8割くらいはよい天候の中で登れましたし、これまで以上にじっくり味わうことができました。

寂しいという気持ちもありますが、これで登り終わったのは195座。まだあと100座以上残っています。寂しさを感じている余裕はありません。200座を過ぎたあたりで、ゴールが現実的な数字になっていくのではないかと感じています。

台風明け、次の山へと歩き出した


日本アルプスをすべて登り終えた田中陽希さんは、このあと山梨を南に進み、日本一の富士山へ、そして、奥秩父の山々へと進んでいった。

 

取材日:2019年8月30日
協力=グレートトラバース事務局

 

関連リンク

人力10,000kmの山旅。日本3百名山ひと筆書きに挑戦中の田中陽希さんを応援しよう!
もっと知りたいという方は、ウェブサイトで。
グレートトラバース事務局ウェブサイト
http://www.greattraverse.com/

 

今回のレポートで登った山のまとめ

 

高塚山 [7月24日]

黒法師岳 [7月25日]

山伏 [7月30日]

大無間山 [7月31日]

笊ヶ岳 [8月2日]

悪沢岳(荒川岳) [8月3日]

赤石岳 [8月4日]

聖岳 [8月4日]

上河内岳 [8月5日]

茶臼岳 [8月5日]

光岳 [8月6日]

池口岳 [8月6日]

奥茶臼山 [8月9日]

塩見岳 [8月11日]

農鳥岳 [8月12日]

間ノ岳 [8月12日]

北岳 [8月12日]

鳳凰山(地蔵岳、観音岳、薬師岳) [8月13日]

記録・ルポ
教えてくれた人

田中 陽希

1983年、埼玉県生まれ、北海道育ち。学生時代はクロスカントリースキー競技に取り組み、「全日本学生スキー選手権」などで入賞。2007年よりチームイーストウインドに所属する。陸上と海上を人力のみで進む「日本百名山ひと筆書き」「日本2百名山ひと筆書き」を達成。イーストウインドの次期キャプテンとして期待される。
2018年1月1日から「日本3百名山ひと筆書き グレートトラバース3」に挑戦中!

http://www.greattraverse.com/

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